| 2014年02月16日(日) |
夢は牛のお医者さん、LEGOムービー+VES賞 |
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※ ※僕が気に入った作品のみを紹介しています。なお、文中※ ※物語に関る部分は伏せ字にしておきますので、読まれる※ ※方は左クリックドラッグで反転してください。 ※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 『夢は牛のお医者さん』 新潟県の山間で、今は廃校となった分校に学んだ女性の26年 間を追ったヒューマンドキュメンタリー。 昭和62年、その分校には新入生がいなかった。そこで先生た ちは3頭の仔牛を新入生として迎え入れ、9人の在校生たち に育てさせようと考える。そして3人ずつ3班に分かれた内 の一つに本編の主人公の少女はいた。 ところがその少女が担当した仔牛はお腹を壊しやすく、少女 は「大きくなったら牛のお医者さんになる」と将来の夢を決 める。そして育った牛は子供たちの発案による卒業式を経て 牧場に引き取られて行くが… その卒業式のシーンで流された少女の涙の美しさは、単なる ローカルニュースの取材だけだったはずのテレビ局スタッフ に、そこから26年間にも及ぶ長期取材のスタートを切らせる ことになる。 大抵の卒業式に涙は付きものだが、ここで在校生が歌う3頭 への送別の歌や送辞、答辞などは別れの辛さを見事に演出し ていた。これはほんのプロローグのシーンだが、ここだけで 観客の心はがっしり掴まれてしまう感じだ。 そしてこの少女が、女性では体力的に難しいとされる畜産獣 医を目指して難関校を受験し、国家試験に挑んで行く姿が描 かれるのだが。何しろこの女性が一途で全くブレずに夢を実 現して行く。その姿は正に清々しいものだった。 作品の中には中越地震の際に山古志村に入り牛の救出に奮闘 する姿なども挿入される。それは3・11と福島原発の被災と も重なるが、重くなりがちな作品が多い中で本作はあくまで 前向きに勇気を与えられる作品に構成されている。 しかしそれは決して能天気なものではなく、正に今の日本に 必要とされる前向きさであり、未来に向けての希望を感じさ せる作品だった。この作品を東北の被災地で観せたいという 製作者の心も伝わる作品だ。 監督は、TeNYテレビ新潟の時田美昭。ナレーションをAKB48 の横山由依が担当している。 題名だけ見たときには、数年前に人気漫画の影響で急増した というペット獣医のイメージが漠然とあった。しかし映画の 後半で描かれる畜産獣医の実態にはかなり認識を改めさせら れる思いがした。 因に主人公の女性の家は、元々父親が出稼ぎを嫌って畜産を 行っていたとのことで、獣医に関するイメージは持っていた と思われる。それにもかかわらずその道を選んだ彼女の決意 も相当のものだったことが後から判ってくる。 そんないろいろな認識も新たにしてくれる作品。そして獣医 になって最初の検診では白衣まで糞まみれだったのが、後半 ではしっかりそれを防ぐ手立てを講じている辺に、プロとし ての成長ぶりも微笑ましく見える作品だった。 公開は3月29日から、東京はポレポレ東中野と、新潟県では シネウインド新潟、十日町シネマパラダイス、高田世界館に て同時上映される。この上映を成功させて全国で希望を与え るロードショウをすることが製作者の夢だそうだ。
『LEGOムービー』“The Lego Movie” 欧米なら、どの家庭にあると言える玩具のLEGOを題材にした ファンタシー作品。 かなり以前からYouTubeなどの動画サイトには多数のLEGOを 使ったアニメーション作品がアップされている。その多くは 名作映画のパロディだが出来栄えも良く、僕も何本かをお気 に入りに入れているくらいのものだ。そんなLEGOを使った長 編作品がついに登場した。 物語の舞台はLEGOで作られた大都市。主人公はミニフィギア のエメット。彼のキャラクターは建設現場の組立作業員だ。 ところがある日、彼は廃材置き場で怪しい人影を目にし、追 い掛けた彼は廃材の中にあった赤い物体を発見する。それは 伝説のヒーローの証だった。 その伝説は、最近世界の支配者になった「おしごと大王」が 世界の自由を奪う兵器の投入を計画し、伝説のヒーローはそ の赤い物体でそれを阻止するというのだ。そしてバットマン やワイルドガールらがそのヒーローを目指していたのだが、 その役に選ばれたのはエメットだった。 しかしエメットは元々が平凡なキャラクター。でもそんな彼 が自らの使命に目覚め、強大な「おしごと大王」に立ち向っ て行く姿が描かれる。それは映画の前半では多少たるい感じ もあったたが、後半にはなるほどと思わせる捻りもあって、 大人でも結構楽しめる作品になっていた。 原案・脚本・監督は、昨年12月紹介『くもりときどきミート ボール2』の2009年のオリジナルを手掛け、『2』の脚本も 担当したフィル・ロードとクリストファー・ミラー。さらに 原案には2012年9月紹介『モンスター・ホテル』のダン&ケ ヴィン・ヘイグマンの兄弟も参加している。 また共同監督と編集には、人気テレビアニメーションシリー ズ“Robot Chicken”などのクリス・マッケイも名を連ねて おり、ディズニーやドリームワークス・アニメーションとは 一線を画する、新たなアニメーションの血脈が流れているよ うだ。 なお試写はベテラン声優たちによる日本語吹替版で行われて いるが、オリジナルの声優には、2011年9月紹介『マネーボ ール』や2013年1月紹介『ゼロ・ダーク・サーティ』に出演 のクリス・プラット、2007年1月紹介『主人公は僕だった』 などのウィル・フェレル。 さらに『ハンガーゲーム』シリーズなどのエリザベス・バン クス、2007年10月紹介『俺たちフィギュアスケーター』など のウィル・アーネット、2005年7月紹介『シン・シティ』な どのニック・オーフマン。そしてリーアム・ニースン、モー ガン・フリーマンらが登場しているようだ。 作品にはバットマンやスーパーマン、『スター・ウォーズ』 などのパロディも満載で、それらが巧みなLEGOの造形と共に 描かれる。それはYouTubeなども髣髴とさせて、そのファン も満足させるものになっていた。 公開は3月、東京は新宿ピカデリー他で、全国ロードショウ となる。 * * 2月12日に発表されたVES賞の結果を報告しておく。 VFX主導映画のVFX賞は、 『ゼロ・グラビティ』(10月13日紹介) 長編映画における助演VFX賞は、 『ローン・レンジャー』(7月20日紹介) 長編アニメーション映画のVFX賞は、 『アナと雪の女王』(1月19日紹介) 実写映画におけるアニメーションキャラクター賞は、 『ホビット・竜に奪われた王国』−Smaug 長編アニメーション映画におけるアニメーションキャラク ター賞は、 『アナと雪の女王』−Bringing the Snow Queen to Life 実写映画における創造背景賞は、 『ゼロ・グラビティ』−Exterior 長編アニメーション映画における創造背景賞は、 『アナと雪の女王』−Elsa's Ice Palace 実写映画における仮想撮影賞は、 『ゼロ・グラビティ』 実写映画における模型賞は、 『ゼロ・グラビティ』−ISS Exterior 実写映画における特殊効果賞は、 『ゼロ・グラビティ』−Parachute and ISS Destruction 長編アニメーション映画における特殊効果賞は、 『アナと雪の女王』−Elsa's Blizzard 実写映画における合成賞は、 『ゼロ・グラビティ』 以上が各部門の受賞者になった。因に実写作品では『ゼロ ・グラビティ』が6部門、アニメーション作品では『アナと 雪の女王』が4部門の受賞で、それぞれ圧勝という感じの結 果だった。この勢いはアカデミー賞にも続きそうだ。
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