| 2013年09月03日(火) |
眠れる美女、終わりゆく一日、ザ・ストーン・ローゼズ:メイド・オブ・ストーン |
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※ ※僕が気に入った作品のみを紹介しています。なお、文中※ ※物語に関る部分は伏せ字にしておきますので、読まれる※ ※方は左クリックドラッグで反転してください。 ※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 『眠れる美女』“Bella addormentata” 2011年3月紹介『愛の勝利を』などのマルコ・ベロッキオ監 督による2012年の作品。 2009年にイタリアの国論を2分した1人の女性の延命措置を 巡る出来事を背景に描かれる3つの人間ドラマ。 まず背景となるのは、17年前に交通事故に遭って以来、カソ リック系の病院で昏睡状態が続いている事故当時21歳だった 女性の問題。彼女の両親はその延命処置の停止を求めて裁判 を起こし、裁判所は停止を認める判決を下すが、尊厳死を認 めないカソリック教会はそれに猛反発する。 そのため両親は、娘の身体を尊厳死の実行できる病院に移送 する。しかしその周囲には尊厳死に反対・賛成のデモが渦巻 いていた。一方、カソリック教会を支持母体とする当時のベ ルルスコーニ首相を中心とした議会はその判決を無効にする 緊急立法を進めていた。 そして1番目の物語は、その立法審議に加わっている国会議 員。彼の所属する党は立法に賛成派だったが、彼自身には妻 の延命処置を停止させた過去があった。そして以来彼に反発 する娘は、女性の移送された病院の周囲で延命措置の継続を 求めるデモに参加していた。 2番目の物語は、病院勤務の医師。彼は出勤中に出会った女 性に金を取られそうになり、さらにその女性が病院でも盗み を働く現場を目撃する。そして取り押さえた女性はとっさに 手首を切り、昏睡状態に堕ちいてしまう。しかし医師は彼女 を見捨てられなくなっていた。 3番目の物語は、輝かしいキャリアを捨てて昏睡状態の娘の 看護に没頭している女優。その女優の行動には周囲も困惑し ており、特に女優としての母親を尊敬して止まない息子は、 母親の愛に飢えていた。また夫との関係も冷え切っていた。 そして息子はある行動に出る。 この3つの創作された物語が、実際の報道の記録映像などと 交錯しながら描かれる。 出演は、2011年8月紹介『ゴモラ』などのトニ・セルヴィッ ロ、2011年8月紹介『やがて来たる者へ』などのアルバ・ロ ヴァケルとマヤ・サンサ、『愛の勝利を』などのピエール・ ジョルジョ・ベロッキオ、そしてフランスから今年1月紹介 『愛、アムール』などのイザベル・ユペール。 実際の出来事は、言葉は悪いがある種滑稽ですらあったもの で、その政治に振り回される出来事の裏での人間ドラマが巧 みに描かれている。それを支える俳優たちの演技も見ものの 作品だ。
『終わりゆく一日』“Day Is Done” 1997年に“Ghetto”という作品でハイデルベルグ国際映画祭 際の最優秀ドキュメンタリー賞などを受賞しているトーマス ・イムバッハ監督が、15年の時間を掛けて撮影した作品。 映像は、スイスのチューリッヒ駅近くの工場街の一角にアト リエを構える監督が、その窓から見える風景を長年撮影した もの。そこには三角に敷設された鉄道線路が見え、駒落しで 撮影された二階建て列車やイヴェント運行らしい蒸気機関車 などが走りまくる。 また周辺に暮らす人々の営みや、眼下で起きた交通事故、火 事などの様子も記録される。さらに映画の後半では高層ビル が建ち始め、その工事の進捗なども記録されている。そして 上空を形を変えながら流れて行く雲や満月などの風景も撮影 されている。 その一方で音声には、留守番電話に残されていたという録音 が登場し、それは監督に行動記録にも相当するものにもなっ ている。そこでは映画祭での受賞の報告や出演のオファー、 また息子の誕生や夫婦間の確執、離婚。さらに別れて暮らす 息子との会話などが記録されている。 まあ長い年月を描く作品として、その間の状況を留守番電話 で描くというのはなかなか面白い手法だと思う。ただし本作 の場合はそれはあまりにプライベートな内容で、監督の本人 的には思いの丈なのかも知れないが、傍から観るとちょっと 退いてしまうところもあった。 それに対して列車の行き交う映像は、マニアにはかなり堪ら ないものがあるところで、中でも威風堂々とした蒸気機関車 の登場は、多分事前に知っていた上で撮影されたものと思わ れるが、その煙だけの映像から本体が現れるまで監督も好き だなあと思わせるものがあった。 因に線路の配置はグーグルで見ると、駅から左右に分かれて 線路が敷設され、さらにその別れた線路を直進で繋ぐ線路が 設けられている。ただし映像で、弧を描いて二階建て列車が 走行しているのはさらにもう1本の別線のようで、かなり複 雑な配置になっていた。 そんなことを確認しながら観るのも面白い作品だった。
『ザ・ストーン・ローゼズ:メイド・オブ・ストーン』 “The Stone Roses: Made of Stone” 2011年10月に活動を再開したイギリス・マンチェスター出身 のロックバンド「ザ・ストーン・ローゼズ」の姿を、2009年 1月紹介『THIS IS ENGLAND』などのシェイン・メドウズ監 督が追ったドキュメンタリー。 バンドは1987年に結成され、1989年にメジャーデビュー。翌 年にはリヴァプールで2万7000人を集める野外ライヴを敢行 する。しかしマネージャーとの確執などからアルバムを発表 できない時期があったり、さらにメムバーの脱退も相次いで 1996年に解散。それから15年後の出来事が描かれる。 そのバンドを追ったドキュメンタリーだが、メドウズ監督は 元々がバンドのファンだったそうで、その監督の目が現在の バンドを追いかけ、さらにアーカイヴ映像で過去の日々が描 かれる。ただしその描き方はあくまでファンの目線であり、 それはある種の慈愛に溢れた作品になっている。 このため一般のファンは立ち入れない楽屋の映像では、あく まで傍観者の目に徹するし、また急遽開かれたライヴの様子 では、間に合わなかったファンの姿に眼が向けられていたり もしている。 しかしその一方では、ライヴ途中でメムバーの1人が帰って しまった出来事でその原因などを深く追求しないのは、多少 物足りない感じもしてしまうが、ファンにはこれで充分とい うところなのだろうか。 なお個人的には、知人に以前からファンの女性がいて、彼女 は多分2011年にはイギリスまで復活を目撃しに行ったと思わ れるが、バンドには日本にも熱狂的なファンが多いようだ。 そんな日本のファンには、映画のエンドロールに添えられた メムバーの日本での様子も貴重と思われる。 ここに特別な映像が綴られたのには、ワールドツアーに日本 まで同行した監督の心情が反映されているとも思われ、そん な日本のファンの熱意がこのドキュメンタリーを締め括って いるものだ。ファンには必見の作品と言えるだろう。 ファンなら当然観に行くと思うが。ファンでなくても熱気に 溢れたコンサートの模様などは、臨場感も充分に楽しめた作 品だ。
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