| 2013年05月16日(木) |
第193回(訃報,Pride and Prejudice and Zombies,A.I.P.,Doc Savage: The Man of Bronze,Ice Station Zebra) |
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページは、SF/ファンタシー系の作品を中心に、※ ※僕が気になった映画の情報を掲載しています。 ※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 今回は訃報から。 1963年の『アルゴ探検隊の大冒険』や1981年の『タイタン の戦い』など、ダイナメーションと呼ばれる特撮映画で有名 だったレイ・ハリーハウゼンが5月7日にロンドンの自宅で 亡くなられた。 ハリーハウゼンは、1920年6月29日アメリカ・ロサンゼル スの生まれ。1933年の『キング・コング』に感激して、その 表現技術であるストップモーション・アニメーターを志す。 そしてジョージ・パルの許で研鑽の後、1949年の『猿人ジョ ー・ヤング』に事実上の撮影監督として参加。さらに1953年 の『原子怪獣現る』を皮切りに次々にストップモーション・ アニメーションによる怪獣映画を発表する。 また1958年『シンドバッド七回目の航海』では、ストップ モーション・アニメーションの怪獣と人間の俳優が共演する ダイナメーションの技術を完成させ、幾多の名作を生み出し て行く。因にこの技術では、アニメーションの撮影中にライ トの熱で人形が加熱され、色温度が変化するのをフィルター などで補正しており、これにより色変動の少ない見事な映像 が実現されているものだ。 この業績により、1992年にアカデミー賞技術部門の特別賞 を受賞。プレゼンターには『原子怪獣現る』の原作者で、ハ リーハウゼンとは高校時代からの親友だったSF作家のレイ ・ブラッドベリが登壇して、オスカー像が手渡された。 そのハリーハウゼンの晩年は、『タイタンの戦い』以降は 新しい作品を発表することもなく、家族と共にイギリス・ロ ンドンに居住していた。 そこには訪問客も多かったようで、その中では2005年9月 紹介『コープスブライド』をロンドンで撮影していたティム ・バートンとジョニー・デップが訪ねて歓談し、後日にハリ ーハウゼンがスタジオを訪ねて来て現場のアニメーターたち を感激させた話や、2010年4月紹介『タイタンの戦い』のリ メイクを担当したルイ・ルティリエ監督が面会して「好きな ようにやりなさい」と励まされた話などが伝わっていた。 これらの話はそれぞれの監督らの来日記者会見で語られた ものだが、いずれも師匠のように慕われているハリーハウゼ ンの人柄が感じられたものだ。 そして今回の訃報は、5月7日に遺族が公式のfacebookに 発表したものだが、その直後からスティーヴン・スピルバー グやジョン・ラセターなど世界中の弟子を自称する映画人に よる追悼の書き込みが殺到し、アメリカの芸能紙などではそ れらの紹介だけでかなりの紙面が費やされていた。 VFXがディジタルの時代になって、アナログの極致とも 言えるダイナメーションは過去のものとなっているが、観客 が驚く映像を観せたいというハリーハウゼンの精神は今も確 実に受け継がれている。そんな作品がこれからも世界中に残 された彼の弟子たちによって作られて行くことだろう。 * * 製作ニュースはこの話題から。昨年8月紹介『リンカーン /秘密の書』の原案、脚本、製作総指揮を務めたセス・グレ アム=スミスが2009年発表した小説“Pride and Prejudice and Zombies”の映画化がようやく動き出しそうだ。 この原作は、19世紀イギリスの女流作家ジェーン・オース ティンが1813年発表し、1995年や2005年にも映画化された小 説『高慢と偏見』のオリジナルの文章をそのまま活かして、 そこにゾンビの要素を挿入したというもの。2つの文章が混 ぜられていることからmash-upと呼ばれるジャンルの代表と もされる作品だ。 その作品の映画化が進められているものだが、実は計画は 数年前から昨年12月紹介『世界にひとつのプレイブック』な どのデイヴィッド・O・ラッセル監督と、ナタリー・ポート マンの主演で進められていた。ところが自分で脚本も執筆す るとしたグレアム=スミスの筆がなかなか進まず、結局ラッ セル監督もポートマンもスケジュールの都合で降板する事態 になってしまった。 その計画が再び動き出しているものだが、その監督には、 新たに2009年4月紹介『セブンティーン・アゲイン』などの バー・スティアーズの起用が発表され、主演には、昨年6月 紹介『白雪姫と鏡の女王』などのリリー・コリンズが交渉中 とのことだ。因にポートマンはプロデューサーとして関って はいるようだ。 物語は、19世紀のイギリスの田園地帯で進む恋物語に不死 身のゾンビ軍団が繰り込んでくるというもので、アメリカ大 統領が実はヴァンパイア・ハンターというより、さらに強烈 な物語が展開されそうだ。 なおmash-upというのは、文学では上記の定義によるもの だが、今回の米紙の記事を読むと2011年8月紹介『カウボー イ&エイリアン』などもその範疇に入れられているようで、 実はその2011年作の興行成績が芳しくなかったことから、営 業サイドでは躊躇もあったようだ。しかし本作が上手く行け ば新たなジャンルの誕生ともなる訳で、そんな意気込みで計 画を進めて欲しいものだ。 * * 1954年に創設され、1981年に終業するまでに500本を超え る数のティーン映画やジャンル映画を量産/配給して若年層 のアメリカ文化を席捲したとも言えるアメリカン・インター ナショナル・ピクチャーズ(A.I.P.)。 その創始者の1人で2001年に亡くなったサミュエル・Z・ アーコフの息子ルー・アーコフが、2008年4月紹介『シュー テム・アップ』などに参加した製作者のジェフ・カッツと、 2005年11月紹介『ホテル・ルワンダ』などの製作総指揮者ハ ル・サドフと手を組み、A.I.P.最初期の作品10本をシリーズ でリメイクすると発表した。 計画されているのは、1955年“Day The World Ended”、 1956年“The She-Creature”“Girls in Prison”“Runaway Daughters”、1957年“The Saga of the Viking Women and Their Voyage to the Waters of the Great Sea Serpent” “The Undead”、1958年“Teenage Caveman”“War of The Colossal Beast”“The Cool and the Crazy”“The Brain Eaters” この内の“Teenage Caveman”は、後に前回リメイク情報 も紹介したテレビシリーズ“The Man from U.N.C.L.E.”で 人気者になるロバート・ヴォーンが主演していたことでも知 られる作品だが、実はこれらの作品には共通の出演者もいて 全体が1つのワールドを形成しているのだそうで、今回はそ の全体像が描かれることになりそうだ。 シリーズ第1作の撮影は今秋スタートの予定で、以後は連 続して公開されるように製作が進められるとのことだ。 なおルー・アーコフは、1990年代にスタン・ウィンストン と組んでケーブルテレビ向けにA.I.P.作品のリメイクを手掛 けたことが有り、このような計画を進めるのは初めてではな いようだ。 * * “Iron Man 3”の脚本と監督を担当して、作品を予想以上 の大ヒットに導いたシェーン・ブラックが次の作品の契約を ソニーと結び、2010年3月7日付と2011年1月16日付でも報 告した1930年代に一世を風靡した“Doc Savage: The Man of Bronze”の映画化を進めると発表した。 この原作に関しては、以前の紹介記事にも書いたように、 1975年にジョージ・パル製作脚本、マイクル・アンダースン 監督による映画化が行われており、僕は当時旅行先のロンド ンで観たものだ。ただしこの映画化は、1930年代のパルブ雑 誌のイメージだけに頼った、どちらかというと他愛ないお話 が展開されていたと記憶している。 しかし原作は、北極に秘密基地を持つ科学に裏打ちされた 超能力を持つヒーロー=ドク・サヴェジが、仲間たちと共に 世界の敵と対決して行くもので、そこに登場する珍発明など も結構楽しめる作品。これをハリウッド有数のパルプ雑誌の コレクターとされるブラックの脚本監督でどのような作品が 登場するか、興味津々というものだ。 なお脚本は、以前にも紹介したアンソニー・バガロティ、 チャック・マンドリーとの共同で進められており、製作には 『ワイルド・スピード』などのニール・モリッツの名前が並 んでいる。 * * もう1本リメイクの話題で、1968年にMGMで製作された 北極海を舞台にした海洋ドラマ“Ice Station Zebra”に、 今年1月紹介『アウトロー』のクリストファー・マッカリー 脚本・監督が挑戦する計画が報告された。 オリジナルは、1961年『ナバロンの要塞』や、1965年『サ タン・バグ』(イアン・スチュアート名義)などの映画化で も知られるスコットランドの冒険小説作家アリステア・マク リーンの原作に基づくもので、北極海に墜落したスパイ衛星 の回収をめぐって、アメリカ・ソ連の原子力潜水艦がしのぎ を削るというお話。 監督は『サタン・バグ』も手掛けた『荒野の七人』などの ジョン・スタージェス。出演者の顔ぶれには、ロック・ハド スン、アーネスト・ボーグナイン、ジム・ブラウン、それに イギリスから『プリズナー』のパトリック・マッグーハンら が並んでいる。 映画化された1968年は、MGMでは『2001年宇宙の旅』を 公開した年でもあり、それが宇宙の関わる話で、しかも大型 アクション映画の代表とも言える『ナバロン』の原作者の映 画化。そして撮影はスーパーシネラマ方式の70mmとくれば、 これは期待は膨らむ一方の作品だった。 ところが勇んでシネラマ館に観に行った僕の前に繰り広げ られたのは、プロローグこそ宇宙空間から落下するスパイ衛 星の壮大な映像だったのだが…。そこから後は原子力潜水艦 の艦内での二重スパイや裏切りなどが横行するお話で、当時 の僕の目には何が描かれているのかさっぱり判らなかった。 実際に最近の評価も10点満点中6.5程度とのことで、正直 に言って成功した映画化とは言えないオリジナルだが、それ に敢えて挑戦しようというマッカリーの意図がどこにあるの か? 当然それなりの勝算あっての計画のはずなので、それ に期待を持ちたい作品だ。 なおリメイクの製作は、当時のMGM作品の権利を所有す るワーナーで行われる。
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