井口健二のOn the Production
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2011年08月14日(日) 沈黙の春…、夜明け…、LIFE IN A DAY、ウィンターズ・ボーン、地球にやさしい…、ラビット・ホラー、ホワイト、チェルノブイリ+Ranger

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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。なお、文中※
※物語に関る部分は伏せ字にしておきますので、読まれる※
※方は左クリックドラッグで反転してください。    ※
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『沈黙の春を生きて』
2007年に『花はどこへいった』を発表し、ベトナム戦争中に
使用された枯れ葉剤の被害/後遺症の問題を追求した坂田雅
子監督が、再び同じ問題を取り上げ、その後の3年間を追っ
た作品。
レイチェル・カーソンが1962年に発表した『沈黙の春』は、
ケネディ大統領の関心を呼び、アメリカでの農薬DDTの使
用禁止を実現した。しかしその一方でケネディ政権は1962年
1月にベトナム戦争での枯れ葉剤の使用を許可、その散布は
1971年まで続けられ、被害は今に及んでいる。
僕は、1983年に刊行された中村梧郎カメラマン撮影『母は枯
れ葉剤を浴びた』を手にしたときの衝撃が忘れられないが、
その当時はベトナムでの被害情報が中心で、シャム双生児と
いう名も残る土地柄から、遺伝的な疾患との反論も多かった
ものだ。
しかしその後にアメリカでも、ベトナム帰還兵のガン罹病率
の増加やその子供に奇形が発生し、枯れ葉剤の被害は動かし
がたいものになった。それでも現在に至るもアメリカ政府は
その責任を認めておらず、製造元の化学会社の責任追求もさ
れていないという。
その一方で民間団体による帰還兵やその子供に対する支援は
行われているようだが、実は映画の中でもその孫に対する調
査の状況などは明らかにはされていなかった。それはもしか
したらアメリカでは孫の代には影響が残らなかったのかも知
れない。
ところがベトナムには、ダイオキシン残留のホットスポット
が各地に残り、それが被害を継続させているようだ。実際映
画の中には、1971年枯れ葉剤の散布が停止された以後に生ま
れた被害者と思われる子供たちの姿が紹介されている。
現在、東京近郊でも放射能のホットスポットの所在が報告さ
れているが、化学物質と放射能の影響は同じと考えることも
できるもの。10年先の東京の現実が本作の中にもあるのかも
知れない。
さらに映画では、片下肢と左手の指が欠損していながらも、
それを克服してマーチングバンドのトランペット奏者になっ
たというアメリカ人被害者の女性が、視力を奪われながらも
一弦琴の奏者になったベトナム人被害者の男性と交流する感
動的なシーンも描かれていたが、これも数10年後の東京の姿
かも知れないものだ。


『夜明けの街で』
2006年10月紹介『手紙』などの原作者で、人気ミステリー作
家の東野圭吾による初のラヴストーリーと言われる小説の映
画化。
主人公は、建設会社で課長職、妻と1人娘の家庭を持つ平凡
な男性。そんな主人公がある夜、学生時代からの親友とバッ
テングセンターを訪れた際に、彼の職場に最近入って来た派
遣の女子社員の姿を見付ける。
そして親友と共に女性をカラオケなどに誘った主人公は、泥
酔した彼女を家まで送ることになってしまうが…。映画は最
初に「不倫をする奴なんて馬鹿だと思っていた」という主人
公のモノローグで始まり、その地獄に引き摺り込まれて行く
様が描かれる。
しかも東野の描く不倫は一筋縄では行かないもの。そこには
胸をナイフで一突きにされた死体なども絡んでくる。そして
主人公が行き着く果ては…。
男性の不倫願望? そんな男性の目から観ているとかなり痛
いところを突かれる感じの作品だ。でもまあここまで仕組ま
れているとね。しかも女性の方に目的があって、それが男性
に対しては悪意がないとすると、これはかなり納得もできて
しまう物語だった。
でも怖い怖い。確かにこの男が馬鹿だと言われればその通り
だが、こんな風にされたら男性の大半は引っ掛かってしまう
だろうし、ここから逃れる術なんてそう簡単には見付からな
いだろう。本当に怖いお話だ。

出演は、岸谷五朗、深田恭子、木村多江。他に石黒賢、萬田
久子、中村雅俊、黄川田将也、田中健。監督は2000年『ホワ
イトアウト』などの若松節朗。因に、石黒と黄川田は『ホワ
イトアウト』にも出演していた。
なお深田は、本作の中でアニソンを熱唱するシーンが登場す
るが、元々CDなどもリリースしているようだし、そう言え
ば、2009年2月紹介『ヤッターマン』でドロンジョを演じて
いたことも思い出した。今年は、劇場用アニメの主人公の声
優や7月紹介『こち亀 THE MOVIE』のゲストなど、硬軟取り
混ぜた出演で正に満開のようだ。
また、今だからこそ意味のあるエンディングロール後の一枚
のテロップが、本作の締め括りには最適だった。

『LIFE IN A DAY』“Life in a Day”
リドリー&トニー・スコット兄弟主宰の製作会社スコットフ
リーが、インターネットの動画サイトYouTubeとの共同で、
2010年7月24日の地球各地の映像を募集、応募された192カ国
4500時間に及ぶ動画の中から選ばれ編集された1時間35分の
作品。
作品は、今年のサンダンス映画祭プレミア部門に出品され、
ポーランドのドキュメンタリー映画祭で観客賞を受賞、ベル
リン国際映画祭のパノラマ部門にも出品された。
内容は時系列というか、実際には時差があるけれど、それぞ
れの場所の現地時間で夜明け前から日中を通して夜更けまで
の各地の様子が描かれて行く。その中には、前日の名残りの
酔っ払いに始まって、早朝から働き始める人々の姿なども取
り上げられている。
さらに日中になると、人間の誕生から死までの様々な出来事
が綴られている。そこでは闘病を続ける家族への想いや、家
族を亡くしたことの苦しみ。それに続く敬虔な祭礼や賑やか
な祭り、その中で起きた歴史に残るような惨事まで。
また、この日が土曜日だったということでレジャーに興じる
人々や、曜日に関係なく日々の労働を続ける子供から大人の
姿。その一方で、自転車で世界一周の旅をしている若者や、
ゲイのカミングアウト、ガールフレンドへの愛の告白。
正しくその日1日の地球の姿が描かれている。それは観てい
ると地球は広いというようにも感じるし、人間は何処に居て
もあまり変らないとも感じる。そんな様々な気持ちが心の中
に湧き上がってくる。
それは多分、今日の今現在も世界の何処かで行われているこ
となのだろうし、こんな風にして1日1日が積み重なって行
くのだろうと思うことも出来る。この作品はそんなことを考
えさせる切っ掛けにもなってくれる。

作品全体の監督は、2004年10月紹介『運命を分けたザイル』
などのケヴィン・マクドナルド。たたし個々の作品にはそれ
ぞれ監督がいて、それは日本人6人を含む332組342人の共同
監督によるそうだ。
この作品を観て、地球のことを考えるのも、人類にとって必
要なことではないかなあとも思える作品だった。

『ウィンターズ・ボーン』“Winter's Bone”
昨年の東京国際映画祭で鑑賞した作品の中で、僕の一番気に
入った作品が日本で一般公開されることになり試写会が行わ
れた。この作品は、アメリカでも映画祭以外では限定公開が
されただけだが、今年のアカデミー賞では主演女優賞部門な
どの候補になったものだ。
主人公は17歳の少女。幼い弟と妹、それに病弱な母親と共に
暮らしているが、保釈中だった父親が行方不明になり、保釈
金の立て替え業者から「裁判に父親が現れない場合は担保に
なっている家と土地から立ち退く」ことを通告される。
そのため父親の行方を探し始めた主人公だったが、まず父親
の兄弟からは探すなと忠告され、さらに彼女の前には幾多の
障害が待ち構えていた。それは麻薬の密造に関るもので、父
親はそのファミリーの掟に背いたようなのだ。
しかし彼女には、家族の生活を守るために父親の所在を知る
必要があった。たとえそれが死体であったとしても…。

出演は、1990年生まれで、本作でアカデミー賞にノミネート
されたジェニファー・ローレンス、2003年9月紹介『‘アイ
デンティティー’』などのジョン・ホークス、今年6月紹介
『スーパー8』にも出演のデイル・ディッキー。
他に、2008年11月紹介『サラ・コナークロニクルズ』でター
ミネーター役のギャレット・ディラハント、『ツイン・ピー
クス』でローラ・パーマーを演じたシェリル・リー、本作で
映画デビューのローレンス・スウィートサーらが脇を固めて
いる。
少女が健気というのには程遠い壮絶さなのだけれど、でも何
とも儚げで、その辺りが見事に演じられている感じがした。
なお、さらに儚げな感じの幼い弟妹役も気になったが、共に
本作がデビューの新人だったようだ。
脚本と監督は、2004年“Down to the Bone”でサンダンス映
画祭の最優秀監督賞に輝き、第2作の本作では審査員大賞と
脚本賞を受賞したデブラ・グラニック。本作ではさらに、ア
カデミー賞の作品、脚色、主演女優、助演男優賞のノミネー
トも獲得した。
なお主演のローレンスの次回作は、“The Hunger Games”と
いう近未来アクションものだそうだ。

『地球にやさしい生活』
           “No Impact Man: The Documetary”
ニューヨークという世界有数の繁華な都市に住みながら、環
境にイムパクトを与えない生活を実践した作家の1年間を記
録したドキュメンタリー。
コリン・ビーヴァン。それ以前には第2次世界大戦のDデイ
秘話などの著作があるという作家が、ある日突然環境問題に
目覚め、妻と2歳の一人娘に向かって環境を汚さない(イム
パクトを与えない)生活を1年間実践すると宣言する。
ところがBusiness Week誌のライターの妻はカフェイン中毒
で、1日何杯もコーヒーを飲まないと仕事が出来ない。しか
し遠い国から運ばれてくるコーヒーは、その輸送などで環境
を汚しているものだ。
こうした妻との対立や、世間からは「無意味な行為」などと
批判も受けながら、車なし、テレビなし、ゴミなし、1年間
は新しいものは買わない、さらに6カ月後からは電気のブレ
イカーも落とすという、究極の環境にインパクトを与えない
生活が実践される。
それはかなり過激な試みだし、その一方で、たった1家族が
こんなことをしても実際の環境への貢献はほとんど無いだろ
う。そんなことは判っているが、誰かが始めることで世界が
変って行くかも知れない。そんな夢のようでもある実験が記
録されている。

現在の東京は、原発災害の影響で電力が逼迫しているとか言
われ、昼間の電車の間引きでは試写の会場間の移動もままな
らない事態になっているが、自ら率先してそれをやろうとい
う考えには敬服するところがあるのは確かだ。
そしてそんな夫の考えに、最初は反発しながらも徐々にその
趣旨を理解し協力して行く妻の姿も丁寧に捉えられていた。
それにしても、家の中でミミズを育てるというのは…、その
辺では夫にもちょっとやり過ぎ感もあった。
しかし現住所から2000km以上運ばれてくる物は環境に優しく
ないとする考え方や、何よりテレビなしというのは最も需要
なポイントで、先日の東北への緊急送電が野球中継のテレビ
を観るためという報道にも納得できたものだ。
日本の節電報道が原発保護のためのアジテーションでしかな
いのは明らかだが、本作でも電力を止めるまでには6カ月も
掛かっており、この依存を脱却するのが一番重要なことでは
あるようだ。

『ラビット・ホラー3D』
2009年9月紹介『戦慄迷宮』の清水崇監督が再度3Dに挑ん
だ作品。その主演に7月紹介『一命』などの満島ひかり、撮
影監督には、2000年『花様年華』などのクリストファー・ド
イルが日本映画に初、そして3Dにも初挑戦している。
因に本作は、前作の紹介時に少し報告されていた続編という
括りにはなっておらず、本筋のストーリーは独立したもの。
ただし前作との繋がりもそれなりに設けられていて、その辺
は前作の観客へのプレゼントという感じがいた。
主人公は失語症の若い女性。小学校で図書室の司書をしてい
るが、男子生徒などからは気持ち悪がられたりもしている。
そんな彼女が口を利けなくなったのは、幼い頃のトラウマに
よるようだ。
そんな彼女には小学生の弟がいて姉弟の仲は良かったが、あ
る出来事からその弟が登校拒否になってしまう。しかも2人
で3Dのホラー映画を観に行った日から弟の様子がさらにお
かしくなり、それに誘われるようにして彼女の異世界への旅
が開始される。
この2人の観に行くホラー映画が『戦慄迷宮』で、ここでの
2重の3D感はなかなか面白かった。さらにそのキャラクタ
ーの一部が本作にも関るが、物語的な繋がりはそこまで、本
作ではここから、彼女が口を利けなくなった原因の究明など
が展開されて行く。

共演は、香川照之、緒川たまき、大森南朋。現在の日本映画
ではかなりの配役と言えるだろう。さらに子役で、4月紹介
『パラダイス・キス』にも出ていた渋谷武尊、雑誌リボンの
キャラクターも務める田辺桃子らが出演している。
まあ、お話自体は有り勝ちのものかも知れないが、それを俳
優陣がしっかりした演技で観せてくれる。しかもそれを撮影
したのがアジア映画の名匠とも呼べるC・ドイルで、それは
見事な映像の中で物語が展開されているものだ。
なおエンドロールによると、3D撮影にはパナソニックシス
テムソリューションズが協力したと記載されており、前作の
時はいろいろ手作りしたとのことだったが、今回は技術的な
サポートもしっかりされていたようだ。

『ホワイト』“화이트: 저주의 멜로디”
8月11日に日本デビューしたガールズK-PopグループT-ARA。
その中で一時はリーダーも務めていた子役出身の歌手ハム・
ウンジョンの主演によるサスペンス作品。
主人公は、売れないガールズグループ《ピンクドールズ》の
リーダー。メムバーの中では最年長の彼女は纏め役として頑
張ってはいるが、売れない期間が続くとグループの纏まりも
無くなってくる。
そんな時、スポンサーの好意で引っ越したダンスの練習場を
掃除中、主人公は隠し戸棚に置かれていた古いVHSテープ
を見付け、収録されていた「ホワイト」という曲に魅了され
る。その曲は歌っていたメムバーの事故死などでお倉入りに
なっていたものだった。
こうしてその曲を新曲として披露した《ピンクドールズ》は
瞬く間に人気者になって行くが…。人気が上がるに従ってグ
ループ内の争いも激化し、さらに不審な事故が相次ぐように
なってくる。
そんな中で曲に問題があると感じた主人公とその親友は、そ
の映像に秘められた謎に迫って行くのだが…
呪いのヴィデオテープというのは、『リング』以降のホラー
映画の定番の一つになった感じがするが、元の被害者とは縁
も所縁もない人に呪いが掛かるというのは理不尽というか、
逆恨みも甚だしいという感じのものだ。
でもまあ本作の場合は、それが一方では成功にも繋がってい
るとすると、これはなかなか深いものにもなってくる。とは
言え基本は最近の若者向けのホラーということで、本作の場
合も理不尽な呪いがメインとなっている。

共演は、テレビ出身のジン・セヨン、実力派アーチストとい
うメイダニ、元はアイスクリームCMの人気者というチェ・
アラが、《ピンクドールズ》のメムバーに扮し、他に、若手
演技派のファン・ウスレ、モデル出身のビョン・ジョンスら
が脇を固めている。
監督は、キム・ゴック&キム・ソンという双子の兄弟。韓国
映画のインディペンデント・シーンで活躍してきた監督の商
業作品デビューとのことだ。

『チェルノブイリ・ハート』
            “Chernobyl Heart/White Horse”
1986年4月26日にソビエト連邦ウクライナのチェルノブイリ
原子力発電所4号炉で発生した原子力事故。その15年後を取
材し、2003年のアカデミー賞短編ドキュメンタリー部門を受
賞した表題作と、さらにその5年後を取材したドキュメンタ
リー作品。
題名の意味は、表題作の後半で明らかにされるが、チェルノ
ブイリの汚染地区の周辺で生まれ育った子供たちに多発して
いる心臓疾患。それは心室間の隔壁に穴が開くなどの症状が
現れ、現地の医師の技術では手術不能とされて2〜5年の余
命しかないとされる。
その他に水頭症(これは現地の医師でも処置ができるが、費
用の問題などで放置されている)や、諸々の放射能の影響と
見られる障害の多発して様子がアメリカ人の女性ドキュメン
タリストの取材で明らかにされて行く。
今回最初に紹介した『沈黙の春を生きて』では、枯れ葉剤と
いうワンクッションが置かれていたが、本作はもろに10数年
後の東京の現実だろう。
実際に映画の中でも、住いが非汚染地区とされて補償も打ち
切られたという地区の住民の子供が障害に苦しんでいる様子
が出てくるが、福島でも避難区域の指定が次々解除されてい
る状況が見事に重なるものだ。
また映画の中では、情報がまったく公開されないという住民
の不満も聞かれたが、これも東京電力のやり方に酷似してい
る。チェルノブイリは共産国家の管理下だったが、東京電力
も保安院の指示で公開を怠っているのだから、これも同じよ
うに感じられる。
それにしても放射能障害を負った子供たちのかなり強烈な症
状の様子は、正視するのが辛くなるほどのものだが、それを
放置した政府の無策ぶりも恐ろしく、今後は日本で同じこと
が起こらないよう祈るしかない。
実際に、日本でなら医療処置の可能な症状もあるようだった
が、早く政府がその責任を明らかにして、的確な処置が行わ
れることを望みたいものだ。
なお後半は、原発の目と鼻の先に住んでいたという男性が、
20年ぶりに住いを訪れるというものだったが、「2度とここ
には戻ってこないだろう。ずっと住んでいたかった」という
独白が避難住民の心情を考えて辛いものだった。

(本作は昨日公開が始まっているが、試写替わりのDVDを
ようやく今日を観ることができたもので、内容に鑑みて敢え
て緊急で紹介することにした)
        *         *
 製作ニュースは少し気になる情報で、6月12日付で紹介し
たばかりのゴア・ヴァビンスキー監督、ジョニー・デップ主
演による“The Lone Ranger”の計画からディズニーが手を
引くとの発表が行われた。
 この計画では、前回の報告で2012年12月21日の全米公開日
も発表されていたものだが、最終的に2億5000万ドルに及ぶ
という製作費にディズニー側が躊躇してしまったものだ。そ
れはもちろん、『POTC』を作り上げた監督/主演のコン
ビに信用は置けるものではあったが、今回は主題に不安があ
るし、増してやデップがタイトルロールでないことも、懸念
材料ではあったようだ。
 一方、ディズニーの2012年公開計画では、今年1月30日付
で紹介した“John Carter”(正式題名はこれだけになった)
や、5月29日付紹介“Oz, The Great and Powerful”などの
超大作がすでに製作中となっており、これらに加えての製作
は状況も厳しかったかもしれない。
 ただ、今年になってから、スティーヴン・キングの原作を
映画化する“Dark Tower”が、ロン・ハワード監督の就任が
発表された直後に延期されたり、ギレルモ・デル=トロ監督
の“At the Mountains of Madness”も動き出したと報道さ
れた直後にキャンセルされるなど、大作映画を取り巻く状況
全体が厳しくなっているようだ。


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井口健二