| 2011年02月27日(日) |
軽蔑、サンクタム、塔の上のラプンツェル・3D、Lily+バンコク遠征記(後編) |
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※ ※僕が気に入った作品のみを紹介しています。なお、文中※ ※物語に関る部分は伏せ字にしておきますので、読まれる※ ※方は左クリックドラッグで反転してください。 ※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 『軽蔑』 1992年に亡くなった芥川賞作家中上健次が残した最後の長編 とも言われる作品の映画化。 東京の新宿歌舞伎町でポールダンサーしていた女性と、その 歌舞伎町でヤクザのパシリの様なその日暮らしの生活をして いた男性。そんな2人は以前から面識はあったが、男が女の 踊る店を襲撃した中で、咄嗟に男は女の手を引いて高飛びを 提案する。 そして2人がやってきたのは男の故郷の田舎町。そこで男に は資産家の父親がいて、男は女を嫁にすると両親に宣言する が、両親は女の出自が気に入らないようだ。それでも父親は 2人のためにマンションの1室を用立ててくれる。 こうして2人の暮しが始まり、男は叔父の店の手伝いなどで 地道に働き始めたりもするが、資産家の息子である男には周 囲の人々の関心も高く、昔の女や蔓んでいた仲間たちも現れ 始める。そんな中で男と父親との間で決定的な事件が起き、 女は男を残したまま都会へ帰って行くが… 何度も書いていると思うが、僕はチンピラものは物語として 好きではない。それは特に馬鹿が馬鹿を重ねて行く展開が気 に入らないのだが。本作の場合は、主人公たちは馬鹿ではあ ってもそれなりに筋の通った行動で、その点では認めざるを 得ない作品だった。 それは互いを好きになってしまった男と女の止むに止まれぬ 行動であり、それがどんな結末を迎えようとも、それを受け 止めざるを得ない…。そんなぎりぎりの感覚が見事に描かれ た作品のようにも感じられた。 主演は、昨年7月紹介『おにいちゃんのハナビ』や12月紹介 『まほろ駅前・多田便利軒』にも出演していた高良健吾と、 2002年『リターナー』や『…多田便利軒』にも出ていた鈴木 杏。特に鈴木は子役の頃から見てきたが、見事に女優として 開花してきた感じだ。 他に緑魔子、大森南朋、小林薫らが共演。さらに忍成修吾、 村上淳、根岸季衣、田口トモロヲらが脇を固めている。 監督は、2003年11月9日付「東京国際映画祭」の中で『ヴァ イブレータ』を紹介している廣木隆一。2003年の作品でも寺 島しのぶから見事な演技を引き出していたが、今回は鈴木を 見事に開花させた。 脚本は、昨年3月紹介『パーマネント野バラ』や2009年7月 紹介『サマー・ウォーズ』などの奥寺佐渡子。こちらも女性 の心理を描くことには長けている感じの脚本家だ。 ただし、ポールダンスは元々女優さんには無理な注文のもの で、それなりにアップの多用などで誤魔化してはいるが、こ れは多少厳しい感じがした。両手のグリップを固定するなど 裏技を使っても良かった感じもしたが、それも危険だったの かな…難しいものだ。
『サンクタム』“Sanctum” ジェームズ・キャメロン製作総指揮の許、新水路の発見を賭 けてケイヴ・ダイヴィングに挑む冒険家の姿を3Dカメラで 追った作品。 舞台はパプア・ニューギニアの密林の中にぽっかりと開いた 陥没孔。そしてその底から広がる鍾乳洞。その大半は地下水 の中に水没し、そこをケイヴ・ダイヴィングで探索し、海に 抜ける水路を発見するのが冒険家たちのテーマだった。 しかし探索開始からすでに1カ月以上が過ぎ、スポンサーの 声も厳しくなり始めた頃に、そのスポンサーが恋人の登山家 を現地に連れて来るところから物語は始まる。そしてその現 場にはサイクロンも接近していた。 という展開ではほとんど先は読めてしまうようなお話だが、 取り敢えずはパプア・ニューギニアの密林や鍾乳洞の内部の 景観などが3Dカメラに納められていて、それは一見の価値 を生じさせている。 とは言うものの物語は支離滅裂で、リーダーである父親の指 示を無視して予備タンクを用意しない息子や、サイクロンの 接近を知りながら避難をしない冒険家の横暴さみたいなもの から始まって、兎に角、登場人物が馬鹿のし放題。 隘路で無理に引っ張ってエアパイプを切断してしまうダイヴ ァーや、ダイヴィングをするのにウェットスーツの着用を拒 否する登山家など、およそ現実では有り得ないシーンが連続 するのには、さすがに呆れ果ててしまった。 でまあこんな話がよく映画化されたと思ったが、そこでふと これは『SAW』などと同じソリッド・シチュエーション・ スリラーなのだと気が付いた。恐らく製作者たちにはアドヴ ェンチャーを撮るつもりはなく、ただサスペンスを描くこと だけが目的なのだ。 そう割り切って観れば、冒険家に有るまじき行為も、観客の 苛々感を増加させる効果はあるし、全てはシチュエーション の完成のために仕方ないとも思えてくるところだ。それに洞 窟内の閉塞感は、閉所恐怖症の人には耐え切れないのではな いかと思われるほどリアルなものだった。 いずれにしてもこの作品は、3Dカメラに納められたパプア ・ニューギニアの密林や鍾乳洞の内部の景観などを楽しめば 良いものであって、物語自体はあまり深く考えない方が良さ そうだ。 でもこの風景は、出来たらドキュメンタリーでも観せて貰い たい感じもしたものだ。
『塔の上のラプンツェル・3D』“Tangled” 先月にも一度紹介した作品だが今回は3Dでの試写が行われ たので、改めて少しだけ書き足しておく。 まず3Dの効果に関しては、予想通りというか、予想に違わ ぬ見事な出来映えで、特に主人公の暮らす塔の景観などは見 事だった。それに何と言っても空を飛ぶランターンのファン タスティックな美しさ、これは何度でも観たくなるほどのも のだ。 それと3D上映は基本吹き替え版となるようだが、懸念した 中川翔子の声優は違和感もなく気になるところもなかった。 それに小此木真理が担当した歌との繋がりもスムースで、そ れも心配したようなものではなかった。 それに剣幸が担当した魔女の声も、こちらは歌も含めて堂々 としたもので、特に日本語の駄じゃれを含んだ歌詞も丁寧に 歌いこなされているのは感心した。まあディズニーの吹き替 えはいつもながら見事なものというところだ。 マンディ・モーアやドナ・マーフィの声が聞けないのは残念 ではあるが、字幕なしの自然な3D映像を楽しみたいならそ れは我慢しなければいけないところだろう。それにいろいろ なヴァージョンを観るため何度か映画館に通う価値はありそ うな作品だ。
『Lily』“Lily” アメリカで映画を学び脚本家として実績を挙げつつある中島 央監督が、アメリカを舞台にアメリカ人キャストを使って英 語の台詞により完成させた長編デビュー作。 主人公は5年前に華々しくデビューしたものの、その後はス ランプに陥って第2作が書けなくなった脚本家。しかし彼に はそんな境遇でも支えてくれる女性がいて、そのある意味安 定した生活が彼の創作意欲を削いでいるようにも見える。 そして彼の脚本を映画会社に売り込むエージェントからは最 後通牒を突き付けられ、切羽詰った主人公は彼女との仲を精 算することも考え始めるが…。そんな主人公の生活と彼が書 き進める脚本の世界とが交錯し始める。 スランプに陥った脚本家の姿というと、2008年5月に紹介し たフェデリコ・フェリーニ監督による1963年の名作『8½』 や、2003年5月紹介『アダプテーション』など数々の作品が あるが、本作はその中でも最も私的な感じでその苦悩が描か れている。 それは僕のような物書きの端くれにも容易に理解できるもの であり、その意味では世の中全ての物書きの端くれに共感を 呼ぶ作品だろう。でもまあそれがどれほどの観客層なのかは 判らないが…。 しかし、監督本人も多分ごく私的な思いで作り上げた作品で あろうし、それはそれで良いのではないかなとも思える作品 だ。 因に作品は、2007年に発表された同名の短編から発展された ものとのことだが、2009年に撮影された後、編集に1年近く が費やされたとのこと。物語の主人公と同様に監督にも苦悩 があったようだ。 出演は、いずれも映画ではほぼ新人のジョッシュ・ロング、 レベッカ・ジェンセン、ルアナ・パラーモ、それにオリジナ ルの短編版にも出演していたキャリー・ラトルッジ。他に、 作家でもあるジョン・ボーレンがエージェント役で物語を締 めている。 なお、監督の中島は、現在は“Arcade Decade”と題された SFラヴ・ストーリーを、日米合作で2012年の公開を目指し て準備中とのことで、その作品も期待して待ちたいものだ。 * * 以下には前回に続いてバンコク遠征記の後編を書きます。
『旅行2日目』 試合当日の2月13日は明け方から雨が降り始め、実はこの 日の午前中に観光でもという目論見は足元を掬われた。そこ でホテルで朝食を取った後はしばらく様子を観ていたが10時 過ぎごろに雨も止んだので出掛けることにした。 そこでまずホテルのフロントで、バンコク市内を走る高架 鉄道スカイトレインの最寄り駅を確認しそこに向かった。こ のスカイトレインはバンコク市内に2路線あって、中心街の サイアム駅で相互に乗り換えが出来るが、僕が向かったサパ ン・タクシン駅からは試合の行われるナショナル・スタジア ム駅までが1本で、終点まで乗れば到着できるものになって いた。 ところがこの駅に向かう途中でちょっとしたトラブルに遭 遇。実は駅までは徒歩で10数分の道程があったのだが、その 途中の交差点で信号待ちをしていたら突然何やら声を掛けら れた。そこで咄嗟に‘I can't understand’と応えてしまっ たのだが、するとそこにいた白人ぽい男性が、今度は極めて 流暢な日本語で「どちらに行くのですか」と話し始めた。 ここで、こいつは客引きと気が付いたが、話し始めてしま うと相手はしつこい。それで困っていたところに、偶然その 交差点で椅子に座っていた老人が男を一喝してくれて、男は 引き下がったが、判らない声を掛けられても迂闊に応えては いけない場所だったようだ。因に近くには日本人女性の観光 客もいたが、そちらには目もくれなかったようで、どうやら 男性専門の客引きだったらしい。午前中だというのに… その後は道沿いに出ている屋台店を眺めたりしながら駅に 到着。ナショナル・スタジアム駅までの運賃は30バーツだっ たが、試合の前後に観光することなども考えて、120バーツ のOneday Passを購入。スカイトレインに乗り込んだ。 因にこのサパン・タクシン駅は、開設当初は終着駅だった そうで、現在は反対方向にも複線で延伸されているが、駅構 内だけは単線のまま。従って同じホームに両方向の列車がや ってくるが、高架線は見晴らしが良いので方向を間違える可 能性は少なそうだ。ただし乗車の位置が方向によって微妙に 異なっていて、それはちょっと慌てることになった。でもま あ大したトラブルではなかったが。 車窓の風景は見晴らしも良く、途中でルンピニー公園など も広がっていたが、冷房の効いた車内から観ていると如何に も暑そうでここはパス。最初は中心街のサイアム駅で下車し て、IMaxも併設されているシネコンの上映作品をチェックし たり、旧正月の飾り付けなどを鑑賞。その後にナショナル・ スタジアム駅まで行って、準備の様子などを下見した。 因にシネコンは、1館は前々回紹介『ザ・ライト』と前回 紹介『抱きたいカンケイ』を上映中、もう1館では1月30日 紹介『ブルー・バレンタイン』、それに“BIUTIFUL”“The Fighter”のアカデミー賞関連3作品が上映されていた。 これらの中では“BIUTIFUL”にちょっと心を引かれたが、 スペイン語の台詞にタイ語の字幕ではどうにも理解できそう になく断念。一方、街中には歴史大作らしい“Eagle”とい う作品のポスターが随所に出ていて気になったが、こちらは 近日上映作品とのことで、これは残念だった。 さらに向かったナショナル・スタジアム駅の近くでは、実 は事前に入手したバンコク市街の地図の中で気になっていた 「ジム・トムプスンの家」を訪ねた。このジム・トムプスン という名前は、前回紹介した映画『キラー・インサイド・ミ ー』の原作者と同じもの。それでひょっとしたら作家の所縁 の場所かと考えたのだが、行ってみるとそこはシルク・キン グとも呼ばれた資産家の自宅跡で、タイの文化財の保護にも 尽力したという人の記念館のようなものだった。 従って作家とは無関係だったのだが、ここでふと、以前に 親しかった翻訳家の黒丸尚が生前トムプスン原作の『グリフ ターズ』の翻訳をしていたころに、「バンコクに家があると 聞いたが、違う人だった」というようなことを話していたの を思い出した。でもそれは、直前に映画を観なければ作家の ことは思いつかなかったし、その家を訪問しなければ黒丸の 言葉も思い出さなかったはず。そんなことで何となく不思議 な巡り合わせを感じてしまったものだ。 そこからはすぐ裏の運河沿いを歩き、スカイトレインの別 の駅からサイアム駅に戻った。そしてキャラクターが合掌で 迎えてくれるマクドナルドで軽い昼食。メニューは日本でも お馴染みのポークバーガーをコーク、ポテトのセットで頼ん だが、これがSAMURAI PORK BURGERと名付けられていて、何 故侍なのか…。しかし味は日本と変わりなかったようだ。 その後は再度ナショナル・スタジアム駅に向かい、事前に チームに申し込んでおいたチケットを受け取り、ド派手な選 手バスを出迎えたりしてメインスタンドで試合を応援した。 ここでは、会場で知り合ったタイには何度も来ているとい うジャーナリストの人と一緒に行動したが、試合前のセレモ ニーなどでもタイ語以外のアナウンスメントは一切なしで、 突然国歌が流れたときには、その人のアドヴァイスで応援団 を静粛させるなど、いろいろ活動させて貰えた。 因にスタジアムはペットボトルの持ち込みが禁止で、腕に 再入場のスタンプを押して貰って外に出て買った飲料は、コ ップかポリ袋での持ち込み。その際には事前の忠告に従って 氷は入れないでおいて貰ったが、それでも良く冷えた水の温 度は結構保っていたようだ。 試合は、リーグ戦の開幕を1週間後に控えたタイのチーム と、まだ3週間以上ある日本のチームとでは仕上がりの状態 が全く異なり、しかも相手チームには外国籍の選手が5人ま で認められていて、能力の高い選手が半数近くいるとゲーム 運びも難しかったようだ。その上、その外国籍の選手が、フ リーキックの際にキッカーの目前1mぐらいに立ちはだかっ ても、主審が排除しないというローカルルールで、これでは 勝負にもならない感じだった。それで試合は2−1で負けた が、そんな中でもルーキー選手が1得点を挙げてくれたのは 収穫だったと言える。 さらに試合後は、会場で知り合ったジャーナリストの人に 誘われて日本料理の居酒屋に行き、タイのビールと日本のス ーパーなどで売られている大元の焼鳥や、その他の軽めのつ まみを飲食したが、以前に海外の日本料理屋で飛んでもない 「和食」を食べてきた経験からすると、至極真面な料理だっ たものだ。そんな訳で夜も少し遅くなってからホテルに戻っ たが、ここでまたちょっとスリルを味合わされた。 というのは、駅からホテルまでは上記のように10数分の道 程なのだが、夜も9時を過ぎると屋台街はまだ賑わっている が、商店街はシャッターが閉まって昼間とは雰囲気が全く違 う。それにホテルの前が一方通行で、そこに向かって曲がれ ばいいと思っていたのが車通りが減り、さらに道路標識も読 めないと一通かどうかも判らなくなる。これが誤算だった。 それでも最初は暖かい夜道を気楽に歩いていたら、突然背 後から唸り声が聞こえてきた。それで振り返ると、シェパー ド風の犬が後に10匹ほどを従え牙を剥いて構えている。実は タイは狂犬病の汚染地区でこれも事前に注意を受けていた。 でもさすがに市街地の犬は涎を垂らしている風でもなく、病 気の恐れは少なそうだったが、それでも噛まれれば痛いし、 怪我をすれば帰国も面倒になる。 それで慌てて前を見ると、そちらにも1匹。見事に挟み撃 ちにされたが、そこは車の来ない広い車道を横切ったら、さ すがにそこまでは追ってこなかった。その後は街中に点々と 開いている飲食店の客などにホテル名を言って道を教えても らいホテルに戻ったが、都合ホテルの建つ街区を1周余分に 回ってしまったようだ。 往きには変な男に絡まれたりもあって、それで多少混乱し てしまったところもあったが、道順と特に曲り角はしっかり 覚えておくことを肝に銘じたものだ。
『旅行3日目』 この日は帰国するだけなので、朝7時30分のピックアップ に合わせて6時のモーニングコールを頼み、朝食とチェック アウトも済ませて送迎の車に乗って空港に向かった。その途 中ではMISUSHITADENKIと書かれた大きな看板を観たような気 がしたが、見間違いだったのかな。 そして空港では、ガイドの指示に従って航空機会社のカウ ンターに行き、バンコク−タイペイ、タイペイ−成田の搭乗 券を受け取って出国管理。これらは多少の待ち時間はあった が問題なく通過した。ここで旅行土産をまだ買っていなかっ たが、免税品店では酒も煙草も香水も興味はないので、取り 敢えず象の形のチョコレートとお香のセットを購入。他に、 日本で集め始めた根付けを探したら、何とハロー・キティの タイ版を見付けたが、趣味に合わなかったので購入はしなか った。 そこでこのまま搭乗口のゲートに向かったが、ここでは指 定されたG1の隣にG1aというゲートもあって多少混乱し たものだ。そして機内では、昼食と映画を楽しんだが、上映 されたのは“Morning Glory”。つまりタイペイ行きの上り 線はすべて同じ映画だったらしいのだが、しかもタイペイま ではほとんど機内に日本語はないのに映画だけは英語と日本 語版。結局この作品とは4度目のつきあいとなったが、あま り気にならず楽しめたのは、この作品にそれなりの魅力があ るということのようだ。 その後のタイペイ−成田間は、偏西風に乗って飛行時間も 2時間15分とのことで映画はなし、機内食の夕食を楽しみ、 申告品なしの税関書類などを書いて着陸を待った。 しかしこの後でちょっとトラブル。被っていた帽子を無く してしまった。これは成田に向けての降下が始まったところ でしっかりと被り直し、その後は荷物を取って入国管理に向 かっただけなのだが、入国管理で帽子を取らなくては、と思 ったところで紛失に気が付いた。でもそこからは捜しに戻る こともできず、諦めるしかなかった。 そして税関では、最初にバンコクには何回目ですか?と訊 かれ、初めてですと答えたが、ここで初めてなのに2泊3日 ですかと突っ込まれた。これには正直にサッカーの応援だと 答えたが、チームがベルマーレというと「ベルマーレ平塚で すか」と言われたものだ。そこですかさず「今は湘南ベルマ ーレです」と言ったが、後でこれは引っ掛けだったのではな いかと思い至った。 確かに初めての土地に2泊3日はおかしいし、そこでチー ム名を正確に答えられなかったら、さらに疑われても仕方が ない。そんなことも考えながら帰宅の途に着いた。他に同じ 引っ掛けが出来そうなのは「ヴェルディ川崎」ぐらいしか思 い付かないが、サポーターは覚悟していた方が良さそうだ。 後は積雪の都内を、最寄り駅まで娘に迎えに来てもらって 帰宅。あっという間のバンコク旅行を無事に締め括ったもの だ。来年は何処のチームが招待されるかは判らないが、何時 かまた次はちゃんと観光の時間も取って訪れたいと思える町 だった。
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