| 2008年05月31日(土) |
デイ・オブ・ザ・デッド、レッドライン、カンフー・パンダ、12人の怒れる男、1000の言葉よりも、小さい赤い花、TOKYO! |
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※ ※僕が気に入った作品のみを紹介しています。 ※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 『デイ・オブ・ザ・デッド』“Day of the Dead” 1968年から、78年、85年と発表されたジョージ・A・ロメロ 監督による元祖ゾンビ3部作。その最終章『死霊のえじき』 のリメイクとされる作品。 ロメロ監督のオリジナルは、ゾンビによって地上がほぼ制圧 された後の世界を描いたもので、前半は何か牧歌的な雰囲気 の作品だった記憶がある。それに対して本作では、ゾンビ発 生の状況から説明されているもので、オリジナルはそんな話 ではなかったから、これでどこがリメイクなのかという話に もなるものだ。 でもまあ強いて言えば、主人公にフレンドリーなゾンビが出 てきたり、廃棄された軍事基地が舞台だったりとか…となり そうだが、正直なところはあまり関係はない。しかし本作の 権利関係はいろいろ複雑なようで、本作はちゃんとロメロの 名前がクレジットされた作品になっている。 そんな作品だが、脚本は2000年の『ファイナル・デスティネ ーション』第1作(これは秀作)を手掛けたジェフリー・リ ディックで、監督は1986年の元祖ホラコメ『ガバリン』や、 1999年『UMA/レイク・プラシッド』などのスティーヴ・ マイナーだから、それなりの作品ではある。 しかも出演は、主演が1999年『アメリカン・ビューティ』で 正にタイトルロールを演じたミーナ・スヴァーリ、相手役に は最近歌姫との電撃結婚が話題のニック・キャノンという… この手の作品にしてはかなり話題豊富な顔ぶれなのだ。 ただし登場するゾンビは、2004年リメイク版『ドーン・オブ ・ザ・デッド』を引き継ぐ走り回る奴で、この設定にも最初 はかなり面食らったものだが、結局今回のリメイクシリーズ はそういうコンセプトになったようだ。 で、お話はというと、オリジナルが好きだった『ドーン…』 に比べると、まあ許せるというか、それなりにはなっている ものだ。特に若者向けには、地名や固有名詞などでいろいろ とくすぐりも入っていて、その辺は上記の出演者と共に話題 にしてもらえそうだ。 これ以上はとやかく言っても始まらないので、オールドファ ンとしてはこんなところで終りにしておきたい。なおこれで 元祖ゾンビ3部作は全てリメイクされたことになるが、これ で終りと思いきや、情報では“Dawn of the Dead 2”という 計画も進んでいるようだ。
『レッドライン』“Redline” 時速360kmで疾走するスポーツカーを描くアクション映画。 物語は、映画プロデューサー、東洋人の企業家?、宗教家、 ミュージシャンという4人の金満家が大金を賭け合って開催 する違法な路上レースや、サーキットレースを背景としたも の。そのレースは高度にチューンアップされた世界の名車で 争われるというお話だ。 そのレースに自動車整備工場の一家が巻き込まれるのだが、 この整備工場というのが母親中心で運営されていて、何とな くウォシャウスキー兄弟監督の『スピード・レーサー』を思 わせ、さらにその娘のドライヴテクニックが抜群で…という 展開になって行く。 映画全体のコンセプトは、ロブ・コーエン監督の『ワイルド ・スピード』に共通する(因に、『ワイルド…』の製作中の タイトルは“Redline”だった)が、コーエン作品が純粋に スピードと、また路上では華麗なカースタントで魅せていた のに対して、本作はかなり強引で泥臭く、これこそワイルド という感じなものになっている。 つまり本作は、上で引き合いに出した2作の影響下で作られ たことは明らかだが、ここには正にBムーヴィの精神と呼べ るものが生きている感じもして、その辺は嬉しくもなってく る作品だった。 監督は、2006年に公開された『エンド・ゲーム』のアンディ ・チャン。彼はジャッキー・チェンのスタント吹き替えでも 知られる人物だが、その他にスタントマンとして、2003年の 『デアデビル』『ランダウン』や、2006年『M:i:�掘戮覆匹� も参加しているようだ。 一方、出演者では、日本で知られるスター俳優はあまりいな いようだが、中で主人公ナターシャを演じているナディア・ ビョーリンは、1965年に放送開始の長寿シリーズ“Days of Our Lives”で、1999年から現在までレギュラーを務めてい るそうだ。 他に、2006年『スネーク・フライト』のネイザン・フィリッ プス、『ソウ3』『ソウ4』のアンガス・マクファデンらが 共演している。 でも、この作品で本当の話題になりそうなのは、出演者より 出演車の方で、ここにはエンツォ・フェラーリ、フェラーリ F430、アストン・マーティンV12ヴァンキッシュ、フ ォードGT、ディアブロ、ムルシエラゴ、メルセデス・ベン ツSLRマクラーレン、サリーンS7、ポルシェカレラGT などの名車がずらり並んでいる。外車マニアはそれを観るだ けでも楽しめそうだ。
『カンフー・パンダ』“Kung Fu Panda” 『シュレック』などのドリームワークス・アニメーションの 今年の新作。中国奥地の村を舞台に、ひょんなことから村の 平和を守る「龍の戦士」に選ばれたパンダが、自らを見つめ 直し使命に目覚めて行く姿が描かれる。 パンダのポーは、食べることが大好きで、かなりメタボな若 者。しかし夢の中では、トラ、ヘビ、サル、カマキリ、ツル の戦士たちと共に、村を守るカンフー・ヒーローとして活躍 していた。 でも現実は、父親(大型の水鳥?)が営むラーメン屋の手伝 いながら、いつもはぐうたらと暮らしていたポー。そんな彼 の住む村には伝説の翡翠城があり、そこで鍛練を積む戦士た ちによって村の平和は守られていたのだった。 ところがある日のこと、翡翠城で伝説の「龍の巻物」を継承 する戦士を選ぶ武闘大会が催され、それを見物に行ったポー は偶然その戦士に選ばれてしまう。この決定に長く鍛練を積 んできた戦士たちは不満顔だったが決定は覆らない。 しかもそこに、元は翡翠城で最強だったヒョウの戦士が、厳 重に見張られていた監獄から脱獄したとの知らせが入る。そ のヒョウの戦士は、トラ、ヘビ、サル、カマキリ、ツルの戦 士たちが束になっても叶わない戦闘力の持ち主だった。 そのヒョウの戦士に対抗するべく、パンダのポーの鍛練が始 まるが… このパンダの声優をジャック・ブラックが担当、師匠のレッ サー・パンダをダスティン・ホフマン、さらに戦士のトラを アンジェリーナ・ジョリー、ヘビをリューシー・リュー、サ ルをジャッキー・チェンらが務める。他にイアン・マクシェ ーン、マイクル・クラーク=ダンカンらも出演している。 物語の全体は、ジャッキー・チェンやブルース・リーらのカ ンフー映画にオマージュを捧げているような部分も多々観ら れ、キャラクターの設定や背景などには、ファンがニヤリと するところも続出する作品となっている。 それにアクションは、アニメーションらしい奔放さと、過去 のカンフー映画をよく研究していると感じさせる動きも登場 して、これもファン泣かせという感じのものだ。特にチェン のコミカルカンフーを再現している部分は、若い観客にも受 けることだろう。 師匠とヒョウの戦士との確執など、もう少し描き込んで欲し かった感じのするところもあるが、まあエンターテインメン トとしてはこんなところなのかも知れない。また、カンフー 映画だけではない、いろいろなパロディも楽しめた。 なお、本作の物語はちゃんと決着しているものだが、本作の キャラクターからは、製作中の第4作で完結する予定の『シ ュレック』に代わる新シリーズを始める計画もあるようだ。
『12人の怒れる男』“12” 1957年のシドニー・ルメット監督による名作をロシアの現状 を背景にリメイクした作品。父親殺しの罪で裁かれる少年の 罪状を巡って、12人の陪審員たちの論争が描かれる。 その裁判は3日間の審理を経て、少年の犯罪は明らかなよう に見えた。しかもそこには、目撃者やその他の証言などの証 拠も揃っている。そこで陪審員たちは、有罪に即決して審議 を終えようとするのだが、そのとき1人の陪審員が反対を表 明する。 それは単に、証拠調べもせずに結論を出してしまうのはどう かというだけ考えだったが、全員一致の結論が必要な審議は それで終了できなくなる。こうして開始された審議では、い ろいろな意見が交錯して行く。 元々は1954年に“Studio One”という1時間枠のテレビ番組 で放送されたドラマがあり、そのオリジナルも手掛けたレジ ナルド・ローズが97分の作品に仕上げたのが1957年の作品だ った。因にローズは、1997年に放送された117分のテレビド ラマ化も手掛けている。 その作品のロシア版となるが、今回の上映時間は160分。最 初の試写の案内では、153分のインターナショナル版の予定 だったが、日本公開は7分長いロシア国内版で行われること になったようだ。 つまり最初のテレビドラマからはほぼ3倍に伸びている訳だ が、そこに描かれているのはロシアの現状を克明に描いたも のとなっている。特に、被告の少年がチェチェン出身者とさ れているなど、ロシアが抱えるさまざまな問題が描かれてい るものだ。 その内容は、ロシアの政府機関紙イズベスチャが、「観るも のの心は痛み、情けないという感情さえ覚えさせ、涙までも 溢れてくる」と論評したものだが、日本人の観客としてそこ までの気持ちは抱かないまでも、映画製作者の持つロシアの 現状に対する懸念のようなものは如実に感じられる思いがし た。 恐らくそれは、ロシアの現状であると共に、その現状に無関 心な国民にも向けられているものと思われるが、その状況は 日本人にもあまり変わりはないのではないかとも思える。そ してそれは、現代の世界中の国々に共通する問題のようにも 思えた。 なお本作は、今年のアメリカ・アカデミー賞外国語映画部門 にノミネートされた。
『1000の言葉よりも』“...More Than 1000 Words” イスラエル人のフォトジャーナリスト、ジヴ・コーレンを追 ったドキュメンタリー作品。なおコーレンは、1995年に撮影 のイスラエルのバス爆破事件の写真が、2000年に選出された 「過去45年間に撮影された最も重要な写真200」の1枚に選 ばれている。 カメラマンに関するドキュメンタリーでは、昨年10月に『ア ニー・リーボヴィッツ』を紹介しているが、それとはかなり 違うものだ。もちろん、彼が報道写真家というところもある が、コーレンの写真は人間をより人間として撮影している感 じがした。 それは戦場という生死を賭けた世界で撮影しているためでも あるのだろうが、コーレンの写真には、仮に被写体が非戦闘 員の子供であっても、そこには生きていることの証が写し取 られている感じがしたものだ。 結局、リーボヴィッツの写真はフィクションであり、コーレ ンの写真はノンフィクションなのであって、その優劣は一概 には言えないが、優れたノンフィクションがフィクションに 勝ることは致し方ない面もあると言うことだろう。フィクシ ョンにはフィクションの面白さがあることも確かだが。 実は、少し前に写真映画と称するスチルのみで構成された映 画作品の試写を観て、その時にはスチルはムーヴィより情報 量が少ないと感じていた。しかし本作では、優れたスチルは ムーヴィに劣らない情報量を表現できることも確認できた。 特に、映画の中で撮影される何枚かの写真では、ムーヴィか らシャッター音でスチルに切り替わる構成となっているが、 そのスチルに捉えられた感動の強さには、ムーヴィ以上のも のが感じられた。 その他にも、戦闘の前と後に撮られた写真の比較映像なども 登場し、そこから受けるインパクトの大きさも、ムーヴィよ りスチルの方が大きいものだった。そういうことがいろいろ と判りやすく映像になっている作品でもある。 因に、監督のソロ・アヴィタルは元特撮のスペシャリストだ そうで、本作にはその特徴もよく出ていたようだ。その監督 の次回作はユダヤ人のユーモアを題材にしたものだが、同時 にそれは第三次世界大戦にも関連するテーマだそうで、その 作品にも期待したいものだ。
『小さい赤い花』“看上去很美” 中国の幼児教育を描いて、2006年のベルリン映画祭で評論連 盟賞を受賞した作品。 主人公のチアンは4歳の男の子。母親が軍務で地方転属とな り、空軍パイロットの父親も家を空けがちなことから、幼い チアンは全寮制の幼稚園に預けられることになる。 ところが、その幼稚園は何もかもが成果主義で、教師が口う るさく指示を出し、その指示に従えば赤い花が貰え、反抗す ると花を取り上げられる。そして、その花の数でその子の評 価が定まるという場所だった。 しかし、新入りのチアンにはそんなやり方が判らず、反抗的 でもある彼の評価はどんどん下がって行く。そんな中でも、 チアンは持前の想像力で先生を妖怪に見立てたり、騒ぎを巻 き起こす。そしてそんな彼の想像力は徐々に周囲の子供たち を巻き込んで行くが… 溝状のトイレに子供たちを並べてしゃがませて、早く排便し たものに花を与えたり、オネショをした子からは花を取り上 げたり、とにかく画一的な成果主義の教育が展開される。そ の酷さには驚かされるものだ。 映画には原作があり、その物語は文革前の1960年代初頭を背 景としているようだが、実は中国の幼児教育は今も同じよう なものなのだそうだ。こんな教育からはイエスマンしか育た ないようにも思えるが、実際、教育担当者はそれが狙いでも あるのだろう。 これでは子供の創造性も何もあったものではないが、それが 40年以上も続けられ、それで今の中国の国力があると言われ れば、仕方ないところもありそうだ。映画に登場する子供た ちの大半が、それを嬉々として受け入れているのも恐ろしく 感じられた。 でもまあ、この映画はその体制をかなり批判的に描いている もので、それにはほっとするところもある。脚色と監督は、 2006年1月に紹介した『ウォ・アイ・ニー』などのチャン・ ユアン。以前に紹介した作品も、中国社会に潜在する矛盾が 描かれていたように思うが、それを男女の物語にしてうまく ごまかしていたものだ。 それは本作でも、子供たちの姿をユーモラスに描くことで、 本当に描いていることへの批判を躱そうという考えはあるよ うだ。それが中国で映画を作り続けるための知恵なのかもし れない。難しい体制の中で今も頑張っている監督の作品と言 えそうだ。
『TOKYO!』“Tokyo!” ニューヨーク在住のミシェル・ゴンドリー監督と、パリ在住 のレオス・カラックス監督、それにソウル在住のポン・ジュ ノ監督が、それぞれ東京を舞台に撮り上げた3本の中編作品 からなるオムニバス映画。 一つの都市を舞台にしたオムニバスでは、2006年12月に紹介 した『パリ、ジュテーム』の先例があるが、その紹介の時に も期待した東京が舞台のオムニバスが製作された。しかも今 回は、製作された3本がいずれも本格的なファンタシー作品 という嬉しいものだ。 因に、『パリ…』の中にも吸血鬼ものや、ちょっと異世界も ののような作品も含まれていたが、ファンタシー度では本作 の方が断然上回っている。そんな嬉しい作品が3本揃えられ た。 その最初の作品は、『エターナル・サンシャイン』などのゴ ンドリーの監督で、映画青年と一緒に上京してきた女性を主 人公にしたもの。彼女は都会の生活に疎外感を感じ始めてお り、それでも彼のために一所懸命に頑張っていたが… 実は、ここからがちょっとびっくりするくらいにファンタス ティックな展開になっているもので、これには感動させても らった。出演は藤谷文子と加瀬亮。特に藤谷はかなり体当た りの演技も見せてくれている。 2作品目は、『ポンヌフの恋人』などのカラックス監督で、 物語は巻頭から『ゴジラ』のテーマが鳴り響き、それに合せ て下水道から現れた怪人が、銀座通りなどで大暴れするとい うもの。 この怪人役には、カラックス作品には常連のドゥニ・ラヴァ ンが扮して、かなり奇矯な怪人役を演じている。また共演の ジャン=フランソワ・バルメールとの、謎めいた言葉合戦も 楽しめた。石橋蓮司、嶋田久作らが共演。 そして3作品目は、『グエムル』などのポン・ジュノの監督 で、引き込もりの青年と、その部屋にピザを配達にくる女性 との交流が描かれる。そこに地震が起こり、彼女も引き込も りになったと知った青年は、ある行動に出るが… この青年を香川照之、女性を蒼井優が演じて、これもまたか なり不思議なムードの物語が展開するものだ。 2作品目の『ゴジラ』のテーマが象徴するように、この監督 たちは東京にかなりファンタスティックなイメージを持って いるようだ。それが一般の観客にどのように受け取られるか は判らないが、僕にはどれも痛快に感じられる作品だった。
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