※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページは、キネマ旬報誌で連載中のワールドニュー※ ※スを基に、いろいろな情報を追加して掲載しています。※ ※キネ旬の記事も併せてお読みください。 ※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 今回は賞関連のこの続報から。 前回、アカデミー賞VFX部門の予備候補15本を報告した が、今回はさらにそこから7本に絞られた。ところがこれが ちょっと波紋を広げているようだ。 まず、選ばれた7作品は、『ボーン・アルティメイタム』 “Evan Almighty”『ライラの冒険/黄金の羅針盤』『アイ ・アム・レジェンド』『パイレーツ・オブ・カリビアン/ワ ールド・エンド』『300』『トランスフォーマー』。 何とここで、前の2作でオスカーを連続受賞した『スパイ ダーマン3』が落選してしまったのだ。しかもその一方で、 VFXがさほど重視されていない『ボーン…』や“Evan…” が選ばれていることには異論を挟む声も高くなっている。 実は、その直前に発表されたVES賞では、『スパイダー マン3』は4部門で候補に挙がっており、その違いも話題に なっているものだ。 そこでVES賞候補(映画関係のみ)を紹介しておくと、 まず、VFX主体の映画におけるVFX賞候補は、『…レジ ェンド』『トランスフォーマー』『ライラの冒険』『パイレ ーツ…』『スパイダーマン3』 VFX主体でない映画におけるサポートVFX賞候補は、 『レミー…』『ゾディアック』“We Own the Night”『君の ためなら千回でも』『俺たちフィギュアスケーター』 単独VFX賞候補は、『トランスフォーマー』の砂漠のハ イウェイ、『パイレーツ…』のジャックとデイヴィの決闘、 『300』の暴れ馬、『サーフズ・アップ』のチューブ・ラ イド、『スパイダーマン3』のサンドマン誕生。因に、この サンドマン誕生のシーンはVFX史にも残ると言われている ものだ。 実写映画でのアニメーションキャラクター賞候補は、『ス パイダーマン3』のサンドマン、『ウォーターホース』のク ルーソー、『パイレーツ…』のデイヴィ・ジョーンズ、『魔 法にかけられて』のピップ、『トランスフォーマー』のオプ チマム・プライム、『…レジェンド』の感染者のリーダー。 アニメーション映画でのキャラクター賞候補は、『サーフ ズ・アップ』のチキン・ジョー、『シュレック3』のハロル ド王、『ベオウルフ』のベオウルフ、『サーフズ・アップ』 のコディ、『レミー…』のコレット。 アニメーション映画でのFX賞候補は、『ベオウルフ』の ドラゴンの追跡、『シュレック3』の各効果、『レミ…』の 料理、『サーフズ・アップ』の波、『レミー…』の速さ。 実写映画での背景賞候補は、『スウィーニー・トッド』の 古い町並、『パイレーツ…』の渦潮、『ゾディアック』のワ シントンと桜、『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』の予 言の部屋、『ラッシュアワー3』(対象の特定なし)、『… レジェンド』のタイムズスクエア。 ミニチュア賞候補は、『パイレーツ…』の海賊船、『ダイ ・ハード4.0』のF-35、『トランスフォーマー』(対象の特 定なし)、『ハリー・ポッター』のホグワーツ校、『スパイ ダーマン3』のビルとクレーン。 合成賞候補は、『トランスフォーマー』全体、『パイレー ツ…』のベケットの死、『パイレーツ…』全体、『…レジェ ンド』の港湾、『ウォーターホース』のクルーソー、『ハリ ー・ポッター』の予言の部屋。 また『ハリー・ポッター』は、特殊効果(SFX)賞の候 補に1本だけ選出されている。 なお作品別では、『パイレーツ…』が6部門7候補、『ト ランスフォーマー』が5部門、『スパイダーマン3』『…レ ジェンド』がそれぞれ4部門、『レミー…』『サーフズ・ア ップ』『ハリー・ポッター』が3部門4候補、『ゾディアッ ク』『ウォーターホース』『シュレック3』『ベオウルフ』 が2部門、他は1部門となっている。 つまりVES賞の候補には、『ボーン…』も“Evan…”も 選ばれなかったもので、これには異論が湧くのも当然という ところだろう。とは言え、『スパイダーマン3』の3作連続 オスカーVFX賞受賞はなくなった訳で、『LOTR』に続 く偉業はならなかったものだ。 ついでにアカデミー賞メイクアップ部門の予備候補7本も 報告されたので紹介しておくと、こちらの予備候補は、『潜 水服は蝶の夢を見る』『ハリー・ポッター』『エディット・ ピアフ』“Norbit”『パイレーツ…』『スウィーニー・トッ ド』『300』ということで、何とフランス映画が2本も名 を連ねたが、それに異論を挟む人はいないようだ。 * * 賞関係は以上にして、ここからはいつもの製作ニュースを 紹介する。 まずは一般映画の話題で、スティーヴン・スピルバーグが 次の作品に予定しているとも言われる法廷劇“The Trial of the Chicago Seven”の主演に、『スウィーニー・トッド』 の好演が注目されたサッシャ・バロン・コーエンの起用が噂 されている。 作品は、1968年8月イリノイ州での民主党全国大会におけ る反戦運動で逮捕され、その裁判でのパフォーマンスが話題 となったシカゴ・セブンと呼ばれる活動家たちの物語。その 中でもコーエンが演じるのは、特に注目を集めたアボット・ ホフマンの役ということだ。因にホフマンは、裁判中に判事 の法衣を着て法廷に現れたり、無罪の判決が出ると裁判官に LSDの効用を語って知人のディーラーを紹介することを申 し出たとも伝えられている人物だ。 という実在でも相当に奇矯な人物のようだが、これにコー エンの演技が填ったら…かなり面白くなりそうだ。脚本は、 1998年ウィル・スミス主演『エネミー・オブ・アメリカ』な どのアーロン・ソーキン。ソーキンは昨年公開されたトム・ ハンクス主演“Charlie Wilson's War”の評価も高い。 ただしスピルバーグには、ピーター・ジャクスンと共働の “Tintin”と、リーアム・ニースンの主演が予定されている “Lincolin”の計画も進行中で、タイミング的には今回の作 品がベストのようにも見えるが、さてどうなりますか。 なお、コーエンは先のインタヴューで、『アリG』『ボラ ット』のキャラクターを封印する発言もしているそうだ。今 回の計画と発言との関係は不明だが、シカゴ・セブンは僕の 世代では一番興味を引かれるところでもあり、いずれにして も早期の実現を期待したい。 * * 次は続報で、第149回で報告したジョニー・デップ主演、 マイクル・マン監督の“Public Enemies”の計画が進行し、 相手役にクリスチャン・ベールの起用が発表されている。 物語は、デップが扮する史上に名高い銀行強盗犯ジョン・ デリンジャーを描くもので、ベールはデリンジャーを追いつ めるFBI捜査官メルヴィン・パーヴィスを演じるとのこと だ。脚本は、マンがすでに書き上げており、撮影は3月にシ カゴで開始される。 ということでベールの出演が発表されたが、ベールには、 第148回で紹介した3月15日に撮影開始予定の“Terminator Salvation: The Future Begins”でジョン・コナーを演じる ことも発表されている。そこでそのスケジュールが心配にな るところだが、実は“Terminator”の新3部作でのコナーの 活躍は、第2作、第3作が中心になるとのことだ。 これに関して、製作者のジェームズ・ミドルトンの発言に よると、新3部作ではまず『T3』で描かれた破滅後の世界 が舞台となり、そこでの生き残った人々の生活が描かれる。 そして彼らのレジスタンスが始まり、やがてその中からジョ ン・コナーが登場してくるという展開になるそうだ。従って “Terminator Salvation”では、ベールが演じるコナーは、 まだ脇役ということのようなのだが…それでどんな話が展開 されるのか、完成が楽しみだ。“Terminator Salvation”の 全米公開は2009年夏に予定されている。 因にミドルトンの発言によると、前回報告したシュワルツ ェネッガーの出演も今はなくても良い展開になっているそう で、それぞれの発言者は異なるが、脚本家のストライキの最 中に、このような設定に関する発言がころころ変更されるの も、ちょっと心配な感じのするところだ。 * * ということで、ここからはSF/ファンタシー系の情報を 紹介しよう。 まずは、12月14日の公開以来、年末までの全米興行で2億 4000万ドルを達成し、すでに史上第51位の成績となっている 『アイ・アム・レジェンド』に続編の情報が報告された。し かもこの続編の計画を、原作者のリチャード・マシスンが承 認したとのことだ。 この続編に関しては、公開に先立って行われた主演ウィル ・スミスらの来日記者会見の際に、会場に紛れ込んでいた某 テレビタレントが「続編に出演したい」と発言してスミスの 顰蹙を買っていたもので、その時にスミスは、「前日譚なら 作れるかも知れない」としていたが、今回の情報は正に続編 が検討されているとのことだ。 確かに、元々のマシスンの原作は続編の作りようのないも のだったが、今回の映画化では物語が大幅に改変されて、そ の改変された物語からなら続編は作れないこともない。つま りそういうことも想定された上での映画造りがされていた訳 で、ここにはハリウッドのしたたかさが見えるものだ。 具体的なことは何も発表されていないが、製作脚本のアキ ヴァ・ゴールズマンを中心に、主なスタッフは戻ってくると 考えられ、この計画は案外早く進むかも知れないとのこと。 某テレビタレントがそれに登場するかどうかは、その時にな れば判るだろう。そして続編が成功したら、後はシリーズ化 にまっしぐらとなる。 * * E・E‘ドク’スミス原作の“Lensman”シリーズの映画 化が、『アポロ13』などのユニヴァーサルとイマジンで計画 されている。 スミスは、スペースオペラの創始者とも呼ばれるSF作家 で、彼が1928年から発表したSkylarkシリーズの第1作“The Skylark of Space”によって、人類は想像上で初めて太陽系 を越えて大宇宙に飛び出したと言われている。そして、スミ スが1937年に誕生させたLensmanシリーズでは、スケールは さらに拡大し、高度な存在によって選ばれた人類と邪悪な敵 との戦いが、大宇宙を舞台に壮大なスケールで描かれた。 このLensmanシリーズは、実は1984年に日本でアニメシリ ーズ化されたことがあり、さらに1987年の続編シリーズと、 2000年に単発の作品も製作されている。しかし今回の計画で は、このアニメ版の存在は無視されているようで、スミスの 孫に当る版権の管理者が、ユニヴァーサルとの間で18ヶ月の オプション契約を結んだとのことだ。 因にこの契約は、必要に応じて18ヶ月の延長が認められる ものだが、契約を履行するためには、少なくとも最初の1年 半以内に製作の目途は立てられることになる。 なお“Lensman”シリーズの映画化に関しては、2004年の 6月頃にも1度、ビバリー・ヒルズにあった新興のプロダク ションで計画が立上げられたことがあるが、そのまま情報が 途切れてしまったもので、今回は大手が動くことでもあり、 何とか実現してもらいたいものだ。 * * 2005年2月15日付の第81回で紹介した『ダレン・シャン』 シリーズ第1作“Cirque du Freak”(奇妙なサーカス)の 映画化が進められ、2月8日の撮影開始が発表された。 この原作は、著者名をダレン・シャンによって発表された ファンタシーシリーズで、親友と共に「奇妙なサーカス」の チケットを手に入れた少年ダレン・シャンが、そこでの出来 事によって命が危うくなった親友を救うため、自ら半ヴァン パイアとなってしまうというもの。そしてその後のシリーズ では少年がヴァンパイアとして成長する姿を描き、全12巻が 発表されているという作品だ。 そしてこの映画化では、以前に紹介したように『Rock You!』や『マイ・ボディガード』などのブライアン・ ヘルゲランドが脚色を担当し、当時の情報では原作の第1〜 第3巻を映画化の第1作として製作するとなっていた。 その計画が進み始めたもので、まず監督には『アバウト・ ア・ボーイ』などのポール・ウェイツが起用され、ダレン・ シャン役に1992年生まれのクリス・J・ケリーが扮する他、 サルマ・ハエック、ジョン・C・ライリー、『テラビシアに かける橋』のジョッシュ・ハッチャーソン、さらに日本から 渡辺謙の出演が発表されている。因にハエックは、産休明け の最初の仕事になるそうだ。 以前の紹介では、シリーズの全体を3部作で映画化すると いうことだったが、シリーズの後半ではヴァンパイアの世界 をかなりの広がりを持って描いているようで、その世界感の 映画化が楽しみになりそうだ。 * * ウォシャウスキー兄弟監督の『マッハGo!Go!Go!』の映画 化“Speed Racer”の予告編の上映が開始され、ジェームズ ・ウォン監督による“Dragonball”の撮影も開始されている が、それに続いてまたまた日本製アニメシリーズからの映画 化の計画が発表された。 作品の題名は“Vicky the Viking”。1974−75年に『小さ なバイキングビッケ』の邦題で放送されていたシリーズで、 元々日本=ドイツの合作で製作されていたようだが、今回は その作品の実写版がドイツで製作される。 原作は、スウェーデンの作家ルーネル・ヨンソンが1963年 に発表した児童書で、ヴァイキングの族長の息子だが父親に 似ず身体の小さい少年ビッケが、知恵を使って父親との力比 べに勝ち、遠征航海に参加していろいろな冒険を繰り広げる というもの。本国では全7冊のシリーズで発表されたが、日 本での翻訳は5冊で止まっているようだ。 そしてオリジナルのアニメーションは、日本では放送から 30年以上たった今でも根強い人気があり、さらに2006年には 『パイレーツ・オブ・カリビアン』の公開に絡めてDVDBoxが 発売されるなど、人気は再燃しているとのこと。 一方、ドイツでもオリジナルは1974年に放送されて大成功 を納めていたとのことで、その映画化が、最近3作の興行収 入合計が1億9000万ドルを越えるという人気監督ミヒャエル ・ヘルビヒの手で行われる。因にヘルビヒ監督は、俳優とし てはブリーの名で、フランス映画のアステリックスシリーズ 最新作“Asterix aux jeux olympiques”などにも出演して いるそうだ。 一応、本作には原作小説があるものだが、今回はVariety 紙の報道でも日本のアニメシリーズからの映画化となってお り、日本アニメの人気を再確認する感じだった。 製作は、『パフューム』『ファンタシティック・フォー』 などの製作にも参加したドイツ最大手のコンスタンティン。 因にコンスタンティンは、ワーナーに続いてBlu-Rayの単独 採用を決定したことでも話題になっている。 * * 後は短いニュースをまとめておこう。 サム・ライミ監督主宰のゴーストハウスから“Burst”と いう計画が発表されている。作品の具体的な内容は明らかに されていないが、吹雪に閉ざされた村をエイリアンが襲うと いうもので、同社が先に公開した吸血鬼ものの“30 Days of Night”の流れを汲む作品になりそうとのことだ。因にゴー ストハウスは、『呪怨』シリーズなど低予算ホラー映画専門 プロダクションとして地盤を固めてきたが、そろそろ新しい 分野への進出も検討されているのだそうで、エイリアンの登 場はその一環なのだそうだ。 『イーオン・フラックス』などのカリン・クサマ監督が、 “Jennifer's Body”というコメディック・スリラーの計画 を進めている。この作品は、ホリデーシーズンの興行で全米 第2位を記録したティーンエイジコメディ“Juno”の脚本家 ディアブロ・コディの作品を映画化するもので、いつも眠っ ているような地方の町を舞台に、主人公のチアリーダーが、 完全な人生を求めて関係した若い男たちを殺し続ける(!) というもの。かなり強烈なお話になりそうだが、コメディと のことで、『ガールファイト』の監督がどのような作品を描 き出すか面白そうだ。なお主演には『トランシフォーマー』 に出演のミーガン・フォックスが決まっている。 マーヴェル製作の“Iron Man”がポストプロダクションに 入っているジョン・ファヴロー監督が、次のコミックスの映 画化には“The Avengers”の映画化を希望しているそうだ。 Avengersは、DCコミックスのJustice Leagueと同様に、い ろいろなキャラクターが勢揃いする作品で、作り方次第では 面白くなること請け合いの作品。しかし製作するマーヴェル としては、登場する各キャラクターがそれぞれ単独での人気 を確立してからにしたいと考えているとのことで、監督自身 は、逆にそこでキャラクターを紹介してからそれぞれの物語 に進めれば良いと考えているようだが、監督の希望はまだ叶 えられなさそうだ。 一方、その“Justice League of America”に関しては、 ジョージ・ミラー監督の計画で、VFXをWetaディジタルが 契約したところまでは製作が進んだとされている。しかし、 キャスティングの方は一向に進んでいないとのことで、この ままでは夏のDGA/SAGのストライキまでに撮影完了で きるかどうか微妙な段階に来ているようだ。 * * 最後に記者会見の報告で、『スウィーニー・トッド』の日 本公開を前に、監督のティム・バートンと主演のジョニー・ デップ、それに製作者リチャード・ザナックの来日記者会見 が行われた。 そこで今回は、プレス資料の中でバートン監督が、共演者 のアラン・リックマンに関して「ヴィンセント・プライスの ようだ」と発言していたのを見て、他のサッシャ・バロン・ コーエン、ティモシー・スポール、それにデップは誰に例え るか質問してみた。 ところが監督の回答は要領を得ないもので、ついでに『シ ザーハンズ』のミュージカル版の映画化はしないかとも聞い てみたのだが、これも言葉を濁されてしまった。 僕としては、コーエンは背の高さやいろいろな言語を操る ところからクリストファー・リー、スポールはいろいろいる と思うが、特にデップが誰か聞きたかったものだ。僕の質問 の仕方が悪かったのか、ちょっと気になっている。 なお会見では、デップとバートンのそれぞれから、役作り のために、ボリス・カーロフのフランケンシュタインの怪物 や、ロン・チェニーSr.の演技などを参考にしたことが語ら れ、ホラーマニアであることを再確認することができたが、 もう1歩踏み込んだことが聞けなかったのは残念だった。 なお、今年のゴールデン・グローブ賞で、『スウィーニー ・トッド』は作品賞とジョニー・デップの主演男優賞(ミュ ージカル/コメディ部門)に輝いている。デップは、メジャ ーの賞の受賞は初めてのことのようで、受賞式が行われなか ったのは残念だが、取り敢えずおめでとうというところだ。
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