North West XPress日誌Ver.2.01
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2005年06月05日(日) 
ほんと長いんで。
 さて本題。あ、先に書いておきますが私には写真の知識は皆無です。押すだけのカメラしか使えませんし、見る方も好きなモチーフの写真集を何点か持ってるだけで、写真家の写真展をわざわざ見に行ったりしないです。ので、説明もとても恣意的ですのでご了承を。それから田村彰英というと黒澤明という繋がりもありますが、私はほぼ風景写真しか見ていませんので、風景写真についての文章です、こちらもご了承を。
 で。昨日の話の流れで分かるかと思うのですが、田村彰英の写真はすごく「キレイ」なのです。もうそれに尽きます。
 
 私が田村彰英の写真を見たのは、神田の魚山堂書店というところで『MOLE UNIT N°2』を買ったのが最初です。表紙の写真一枚でもうお金を払ってもいいと思う出会いであって、今もこの表紙は大好きな一枚。日本の都市のどってことない場所を撮ったモノクロームなんですけれど、夕焼けか夜明けか遠くの空が明るくて、遠ざかる電線が柔らかく消えてく、大型車のシルエットとテイルランプがすべって長い光を残してる。もうただキレイだな、と思ったわけです。その後別の古書店で『BASE』を探して買って、やっぱり同じようにキレイだ、と思ったんですよね、
 でもこの2冊は両方モノクロームだったのですね、だからどこか幻想的な美しさを感じても、それは例えばマネキンはどんなにキレイでも生々しいだけだけど石膏像だといきなり芸術になるという、そういう感じでモノクロームだから芸術性とか創作性とか感じるんだろな、と思ってもいたんです。カラー写真もカラーテレビも知ってる現代人には、モノクローム写真はありのままの記録ではない、と思ってたんですね。

 で、長いですがやっと『スローカメラの休日』です。これはカラーで、しかも『MOLE UNIT N°2』も『BASE』も大判でゆったりと余白を取った体裁なのに比べて、文庫サイズ。でも掲載写真を見たときの感動はモノクローム同様に鮮烈でした。
 例えばp.065の白百合なんか、あまりに生き生きとしていて、それを見ながら息を深く吸い込みたくなるんです。p.125のトンネルもすごく好きです。石畳の上の光と、猫の影。他にも写真を机の目の前に貼っていつでも眺めていたいくらい気持ちいい写真がたくさんなんですが、その「好き」な感じを文字で書いても伝わらないと思うので割愛。
 田村彰英の写真を見て、たんにキレイなだけの写真じゃないか、という人はいると思うんです。だって本当にキレイなだけなんですよ、そこに主張とか信念とか理想とか感じる訳じゃなくて。p.069とかp.070の「ベス単」で撮ったという写真は、かなり「表現」があります、見たままではない、でもそこに確かにある光でもあって、表現が煩わしくなくて、やっぱりただただキレイなんです。何度も書いてますが、私は写真を撮るのは全くの素人ですし、見るのも経験があまりない。だからそのキレイさをすんなり受け入れられるとも思うんです。どんなキレイさも新鮮に見える。それは逆にとても運が良いことだと思う。キレイな物をキレイに撮るという技術は、もう芸術なんだと私は思うんですよ。美しく撮られた美しい写真は絵画的な美しさを備えると思う。この気持ちのいいキレイさが私は好きなんです。
 
 ちょっと興味の湧いた人は、文庫だから書店で立ち読み出来ますから見て欲しいなと思います。ちなみにこの『スローカメラの休日』は純粋な写真集ではなくて、多分写真好き、カメラ好きの人々をターゲットに発行されたもので、本人の散文というか随筆というか、そういう文章と共に写真が掲載され、使用機材や撮り方のガイドが併記されている、というものです。
西UKO **:**
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