せきねしんいちの観劇&稽古日記
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2006年09月17日(日) 第10回レインボーマーチ札幌 「二人でお茶を」千穐楽

 第10回レインボーマーチ当日。
 あまり早く行っても、メガネなしでよく見えず、相手が誰だかわからず失礼をいっぱいしてしまいそうだったので、ホテルと喫茶店で原稿を書き、出発時間のちょっと前に集合場所に到着。いっこうさん、パチパチと合流。札幌のみなさん、全国から集まった、なつかしいみなさんにご挨拶。至近距離で。
 札幌のパレードは規制の厳しい東京と違って、すべてがおおらかだ。フロートの高さや警察との関係も。もちろん道路の幅のひろびろとしたかんじは言うまでもない。
 今回の札幌のレインボーフラッグは、いつものレインボーカラーに白を加えた7色だ。この場にいない人、いろんな理由で来れない人、すでにこの世にいない人、彼らとも一緒に歩くという意味を込めたのだそうだ。そんな話をひさしぶりに会ったマーガレットさんと立ち話。
 出発! ゆるゆると実行委員会フロートの後あたりを歩く。時々、沿道にまわって、外からも見てみる。
 パレードを歩くのは一昨年の札幌以来、二年ぶりだ。出発のカウントダウンで涙ぐんでしまう。歩きながらも泣けてきてしまって困った。
 みんな思い思いのかっこうで歩いている。バッチリ決めている人もいるけれど、微妙にゆるいテイストがここでもとてもステキだ。
 僕のすぐ前にいたのはピンクのファーでつくったビキニをはいたゴーゴーボーイの2人。かなりいい男な彼らが、シンプルに手を繋いで歩いている後ろ姿が、とてもかっこいい。
 のどかな雰囲気のパレードだけれど、実行委員は大忙し。トモコちゃんがカメラを片手に撮影しているのに出くわした。ゲイが撮影した記録をちゃんと残しておこうということで、急遽かりだされたそうだ。
 「二人でお茶を TEA FOR TWO」やその他のイベントの準備でへとへとだろうに、ひとしきり撮影すると次のポイントまで駆けだしていった。
 隊列の整理をしているケンタさんともおしゃべり。実行委員会フロートの選曲について。あまりにバラバラでイカしていたので、「誰が選んでるの?」と聞いてみた。ケンタさんはフロートを指さすと、「あそこにいる女装たち」と答えて、また歩いていった。
 何日も寝てないというケンタさんは、とっても白っぽい顔色で、なんだかやるだけのことをやりきった人の美しいオーラが出ているようだった。他の実行委員のみんなからも、そんなすがすがしさ、というか美しさをかんじた。
 駅前通りで空に風船を飛ばす恒例のイベント。白を加えた7色の風船が空に飛んでいった。今年もまた感動的な瞬間だった。
 帰着後の集会では、今年も札幌市の上田市長が挨拶をした。人権の大切さについて話されたあと、ようこそ札幌へと今年も言ってもらう。会場は大きな拍手に包まれた。
 その後、大阪府議でありカミングアウトしているレズビアンの尾辻かな子さんの挨拶も。パレードとの関わりについての熱い想いをうかがう。こちらも、とっても感動的だった。
 微妙に予定がおして劇場入りの時間が迫ってきたので、親の会の方の挨拶までを聞いてお先に失礼することにした。
 親の会というのはゲイやレズビアンやその他のセクシュアルマイノリティの子を持つ親の集まりだ。今年は、集合場所のブースでおにぎりをにぎって売っていた。
 元気な母さんが一生懸命語っていた。「親はどうせ子供より先に死ぬんだから、大体の場合。好きなように生きなくては。思ったことは、どんどん伝えなくては」と。「おにぎりは午前中で完売したので、来年はこの3倍にぎります」と。
 その後、札幌に来たら必ず食べたい大通り公園のとうきびを買ってかじりながら劇場へ向かう。このとうもろこしはほんとうにおいしいと思う。大好きな札幌B級グルメだ。
 劇場入りして、トモコちゃんとおしゃべり。パレードの感想を。
 さっき親の会を代表してしゃべっていたのは、僕の知っている友人のお母さんだったそうだ。この間彼の消息を聞かれたときには言えなかったのだけれどと、前置きして、トモコちゃんは、その彼がこの間、自ら命を断って亡くなったのだと話してくれた。
 あの母さんは、自分の息子が亡くなったのに、親の会の活動をがんばっているのだそうだ。みんな自分の子供だと思うと。みんなも、みんなの母さんのように慕っているのだそうだ。
 芝居の3場に僕が母親に電話でカミングアウトするシーンがある。東京でも盛り上がった場面だけれど、札幌ではよりいっそう楽しんでもらっている気がする。
 それはきっと、僕がしゃべっている相手の母親の人物像が、観客の頭の中にしっかりイメージされるからだと思う。まさに、親の会の母さんのような人なんだなあと、思っていたところだったので、余計に感慨深い。
 最後の舞台を、今はいない彼と、彼のお母さんのために演じようと思った。
 開場前に、1場と2場を森川くんとさらって、準備をすませて、開演。
 途中、2場で持って出るジンギスカン一式が入ってる紙袋を袖で探したり(このジンギスカンの鍋とコンロも札幌で用意してもらった)、4場でややセリフが前後したけれど、いいかんじで6場の最後のセリフまでたどりつく。ドリス・デイが歌う「TEA FOR TWO」の歌詞「We are the Family〜」というところ(たぶん)で最後の暗転。札幌での「二人でお茶を TEA FOR TWO」の幕は下りた。
 終演後の挨拶でトモコちゃんが声をつまらせる。森川くんも。僕は「やだ、僕だけ泣かないと悪い人みたいじゃない!」とつっこんでいた。
 最後の挨拶は長くなるかと思ったのだけれど、思うことがいっぱいで、いつもより簡単になってしまった。ほんとうにありがとうという気持ちでいっぱいだ。
 ロビーで、見に来てくれた尾辻さんにご挨拶。僕が非戦を選ぶ演劇人の会で活動していることも知っていてくれた。来月の大阪のパレードの成功をお祈りします!
 終演後の片づけは、舞台は劇場のみなさんにそのままでいいと言っていただいたので、楽屋の片づけのみ、来るとき持ってきた分も含めて、宅急便で送る手配をばたばたとする。
 僕らが楽屋を片付けている間に、札幌で用意してもらった舞台上の家具が車に積まれていく。カネゴンのところから来たベッドは、ビアンのカップルのところに行くことになったそうだ。
 劇場の前田さんにご挨拶。ほんとにいい劇場だった。気持ちよく使わせてもらったお礼を言う。
 トモコちゃんたちスタッフと別れて、東京からの4人は、打ち上げをしようということになった。
 たどりついたのは狸小路の炭火焼き居酒屋。昨日は、フロアの中央で焼いてるところだったけど、今日はそれぞれのテーブルに備長炭がやってくる。決して若くはないギャルソン風のお兄さんたちに焼き方のコツを教えてもらいながら、今日もまた海鮮ものをおいしくいただく。おいしいお酒も。
 こんなに気持ちよく、幸せな気持ちで乾杯できているのが夢のようだ。炭の遠赤外線でほかほかと暖まりながら、気持ちもとても暖かくなった。
 閉店時間まで飲み、しゃべり、解散。
 僕は、後夜祭に出かける。今夜もまた札幌のドラァグ勢を堪能する。
 十年ぶりだというショーコとヤッちゃんのショー。曲は「マンマ・ミーア」。映画「プリシラ」の最後に登場する曲だ。エアーズロックまでの旅をして戻ってきたドラァグさんが、この曲でショーをして、最後に「やっぱり家は最高!」と言う。目の前にいるショーコと映画がだぶって見えた。
 明日の飛行機は千歳発13時、午前中は少しあちこち歩こうと思う。


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