せきねしんいちの観劇&稽古日記
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2006年02月11日(土) 「アクト・ア・レディ 〜アメリカ中西部ドラッグショー〜」

 にしすがも創造舎特設劇場 。地下鉄に乗るよりはと巣鴨の駅から歩いてみたら、けっこうな距離だった。右手に時折見える染井霊園の木立。傾斜の向うにあるようで、丘の上を歩いているようないい気分。
 元学校の校庭を通って、体育館に作られた劇場へ。きっちり作り込まれた客席がとてもりっぱ。体育館もこんなふうにすると劇場っぽくなるんだと感心する。
 「アクト・ア・レディ」は、1920年代の架空のアメリカ中西部の街が舞台。とってもカウボーイばっかりな、とっても旧弊な街で、三人の男が女装して芝居をしようとするお話。
 男が女を演じるということについての葛藤や、途中で劇中の人物と自分とが混乱していったりと、複雑なとてもデリケートな芝居。
 ウィッグやドレスやメークがとても大きな意味を持つなか、リーディングということですべては観客の想像力に任される。
 演出は、冒頭から「マイアヒー」を流したり、最後に踊ったりと、現代につなげる試みをしていたが、それよりも、劇中劇で演じられる女性たちの言葉のもつ意味(演じている男達にとっての)と、「演じる」ということへの彼らの自意識のありようをていねいに積み重ねるべきではなかったかと思う。(そのまえに、もっとあたりまえにきちんとリーディングできるようになってほしいとも思う。)
 非常な早口で、何を言っているのかわからないセリフが、時に、日本のアングラ風(歌舞伎的なものも含めて)な言い回しで語られるのも、演じている劇中の彼らの内面をべたっと塗りつぶしてしまってもったいない。
 演出で試みている「おかしみ」は、戯曲に描かれた自然発生的なドラァグショーのおもしろさとは全然ちがうものになっていて、どうしてこれがわからないの!!?ととてもはがゆかった。大げさな古くさい言い回しと、苦し紛れに生まれた、べたな表現のもつおもしろさが、戯曲にはきちんと書かれているのに(馬に蹴られた女性の額には、赤いひづめの跡がついている!)。無骨な男たちが、芝居を通じてゆれうごき、変わっていく様子をもっとちゃんと見てみたかった。
 衣装とメークをつけて、きっちり演じたら、なかなか面白い芝居ができあがるはずのいい戯曲。ただ、そのときはぜひ別の演出で見てみたいと思う。
 終演後、微妙にブルーな気分のまま、いつもの池袋〜西新井のバスに乗って帰ってくる。さくさくと。


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