せきねしんいちの観劇&稽古日記
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2005年07月09日(土) 「プロデューサーズ」

 12時半開演のマチネ、ブロードウェイミュージカル「プロデューサーズ」@厚生年金会館。
 トニー賞12部門受賞がほんとに納得のすごい舞台だった。
 わざとすぐにクローズするようなひどいミュージカルをつくって大もうけしようと企むプロデューサーのマックスと会計士のレオの二人組。それが大ヒットしてしまって……というお話。
 「ひどいミュージカルをつくる」という点で、バックステージものの王道。それを、俳優でも演出家でもないプロデューサーの視点から描いたという点がおもしろい。
 ダメな脚本を探して、元ナチス党員でアパートの屋上で鳩を飼っている劇作家フランツ・リープキンドが書いた「ヒトラーの春」を見つけ、何でもゲイテイストで演出する演出家ロジャー・デ・ブリに演出を頼む。
 このミュージカルは、全編が皮肉とからかいと悪ふざけの連続だ。ナチス、ゲイ、そして女性、老人の性、人種のことなどなど、ぎりぎりのジョークが「そこまでやるか」というところまで
笑いのめしてしまう。
 本当ならカチンと来そうな、過剰なゲイの描き方も、ここまでやればもうあっぱれとしか言えない。本来ならダメなはずの「ゲイ・テイストな」演出が大成功を収めるというひっくりかえしかたも見事だし、何より、劇中劇の「ヒトラーの春」は本当にすごかった。頭にシュニッツェルやビールのジョッキやソーセージを載せた美女たちがしずしずと登場し、ナチス党員の男女がタップをふんで、ハーケンクロイツ(裏返しなので、お寺のマーク)のポーズをとる。ダンサーは張りぼての人形を連れてマスゲームをし、背景のミラーが大きく傾斜すると、そこにはダンサーと人形でできたお寺のマークがぐるぐる回っているのが映っている。大詰めでは、「戦車の着ぐるみ」を背負った美女も登場して、もう何が何やらになってしまう。とにかく、くだらないことをとっても真剣にやってるところが最高に素晴らしい。
 1幕のはじめのナンバーで劇場の前でマックスと街の人々が歌い踊るシーン。尼さんやら、浮浪者やら、案内嬢やら、流しのバイオリン弾きやらが、輪になって踊るばかばかしさ。この人たちは、このくだらなさ、突然歌って踊ってしまうというミュージカルのスタイルまでもを、笑っている。そして、笑いながら、深く愛して、最高に楽しんでいるんだということがとてもよくわかった。その気持ちは全編を通じて変わらない。
 ナショナル・ツアーの今回の来日キャストは、アンサンブルまでがとってもいい役者さんたちばかりだった。中でも、レオ役のアンディ・テイラーは、ピーナッツシリーズのライナスのように「毛布がないと落ち着かない」キャラを、顔を真っ赤にして演じていたのが印象的だった。
 来日公演のキャストには「ちょっと手抜いてない?」と思えるものが時々あるけれど、今回は、ほんとに真剣さが伝わってきた。真剣さというか、この舞台を彼らがとっても誇りに思い、楽しんでいるのが伝わってきた。舞台の醍醐味だ。
 客席も12時半開演のマチネとは思えないほどの盛り上がりかたで、終演後、こんなに興奮している客席というのも久しぶりに体験した。厚生年金会館から駅に向かう人波はみんな上気した笑顔の人ばかりだった。
 この舞台が、二丁目のすぐ近くで上演されているというのも素敵だと思う。ゲイだったら余計に楽しめると言い切ってしまうのはちょっと微妙だけれども、コメディが好きで、舞台が好きで、そして「ゲイ・テイスト」が大好きだったら、むちゃくちゃ楽しめるミュージカルだということは断言できると思う。
 8月に上演される日本語版は楽しみなような心配なような。マックスとレオが井ノ原快彦と長野博というのがとっても微妙。でも、藤木孝が演じるロジャー・デ・ブリと岡幸二郎のカルメン・ギアはとっても見てみたい気がする。
 夜、ジオラマ・マンボ・ガールズのマルゴリータ・ナスと浅草雷門で待ち合わせ。木馬亭の「それゆけ浅草雑芸探検隊」を見に行く。毎年ほおずき市に開催される大道芸、雑芸のおまつり。今年で一区切りで最後ということだそう。
 開演前に浅草寺にお参り。雨の浅草寺は、本堂の中にお経の音が低音でずんずん響いていて、いつになくアジアなかんじ。湿気のせい? それともPAが入ってるの?と話す。
 開演まで、六区の飲みやさんで軽く一杯。大きな肉がどこどこ入っている煮込みをさかなに。
 「それゆけ雑芸探検隊」、第一部は各地の大道芸をネタに、素朴な大道芸と「悪徳」なひとたちが交互に登場する構成。第二部は、ちんどんの「菊之家」のみなさんが登場。米寿を迎えた御大、菊之家〆丸師匠の粋なしゃべりがすばらしい。なつかしい芸に拍手を送りながら、ふと「チンドンの芸ってこんなにありがたがりながら拍手を送るものだったんだろうか?」とも思ってしまう。でも、いいよねえと思えることはたしか。素敵だった。第三部は、大道芸のオンパレード、これでもかというかんじで、個人芸が繰り出される、なかでも金子ザンさんの「一人文楽」、「狼と七匹の子ヤギれんりのしがらみ」(たしかこんなタイトル)はすごかった。マルゴリータともども大笑いする。南京玉すだれの実演中にこんがらがって、袖にはけた人を見て、「あ、やっぱり危険な芸なんだ」との思いを新たに。一昨年のgaku-GAY-kaiを思い出す。
 終演後、出演のワカさん、ミッちゃんにごあいさつ。二十年近くのおひさしぶりの人にも会って、楽しいイベントだった。
 帰りには、去年同様、神谷バーで飲み&ミーティング。今年の企画について。これはどうよ?な曲をやりとりし、その後は、思う存分閉店までおしゃべりする。「斎藤孝さんの声はなんであんなに高いんだろうね?」という点で、そう思ってたのは自分だけじゃなかったんだ!という発見をする。
 駅からの自転車でずぶぬれになり、こんなんじゃ傘なんかいらないと思ったものの、メガネが水滴で見えなくなるので、理不尽だと思いながら、傘をさしながら走る。夜中までずっと大雨。いっそすがすがしいほどの。


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