4つの季節を重ねながら

2002年06月24日(月) W杯とフランス vol.2



お待たせしました。やっとやっとの「vol.2」です。なっがぁ〜いです。ごめんなさいぃ。


フランスがまだ負けていなかったころ、日本のマスコミが伝えていたほど、フランス人がサッカー好きかどうかは、わたしにとってはかなり疑問です。

そもそも、4年前フランスでW杯があったときまで、一般のフランス人からサッカーの話題なんて聞いたことがありませんでした。

年が明けてから先生が授業中に「今年はまぁ、良きにつけ悪しきにつけ、みんなW杯のことを話題にするでしょ」と言っても、ほとんどが 20代の生徒たちはみんな腑に落ちない顔。

数人で話してたときに、1人の女の子が「せっかくフランスで大会があるのだから、1度くらいスタジアムで見てみたい」と言っても、男の子たちはぜんぜん関心なさそうな顔で肩をすくめていて。

何年も前からW杯のときにフランスに来ると言っていた友人の宿を確保するために安宿街を歩き回っていたときも、バス停には「TVの、TVによる、TVのためのイベントW杯をボイコットせよ!」なんて紙が貼ってあって、「あ〜あ、なにもこんなフーリガンがいっぱい来そうなところにこんな貼紙をしなくても。。。」なんて思って見ていました。


   とにかく、流行りものが嫌いなんだなぁ〜、フランス人って


と、まだ在仏2年目だったわたしは思ったものでした。

そして、これはフランスが優勝を決めたあと知ったことだけれど、当時のフランス監督ジャケ氏はW杯開催前、各種スポーツ紙に「おめぇ〜が監督じゃあ、フランスは一生勝てねぇよっ!!」くらいのことは書かれていたらしいです。

ええ、いまトルシエ監督の後を継いで、来期以降日本の監督になるかと噂されている人物ですね。(笑)

W杯のチケットも、日本戦以外はけっこうあっさり手に入っていたらしいし。

4年前まで、フランスでサッカーがあんまり人気がなかったのは、どうやら「下層の人たちのスポーツ」という意識がかなりあったからのようです。自分は上流の人間だという意識の強い人ははっきりと「サッカーのはなしはしたくない」と言うケースもあったよう。

上流の人間でなくても、サッカーの話をするのはあまり品のいいことじゃないという意識はあったかもしれません。たしかに、フーリガンのような行為はまともな育ちの人間のやることではありませんよね。(苦笑)

サッカー選手達もほとんどが移民だったり、フランス人であっても訛り丸だしだったりして、美しいフランス語を話す選手はほとんどいません。

欧州中で騒がれるW杯がせっかくフランスで行われているにもかかわらず、一般の人たちは知らん顔。

そういった雰囲気を変えるために、シラク大統領自身が何度かフランスの応援に足を運び、彼がスタジアムで積極的に応援しているのをTVの中継で見て、多くの人たちがサッカーに対する認識を少しづつ変えていったのです。


それがまぁ〜、優勝したとたんにどこから湧いてきたのか大勢の人がシャンゼリゼに集まって、大騒ぎ。それがメディアにのって、世界中に伝えられたのでした。

そして優勝したあとは突如「俺たちは世界チャンピオンだ!うぉー!!」と言いだす”若干名”が学校内に現れて、そのたびにわたしは「優勝したのは選手達でしょ、あなたじゃないの、ね」な〜んていぢわる〜なつっこみを入れたりして。。。(苦笑)

その後突然、TVではサッカーの中継が激増。フランスリーグの試合の行方が日常生活で話題になるようになり。TVが中継するから話題になるのか、人々の話題にのぼるからTVが中継するのか、そこからはニワトリと卵の関係。

そして、W杯の優勝国は勝てないというジンクスを破って欧州選手権に勝ち、その後の国際試合でも優勝し、そのたびに「俺達は世界チャンピオンだ!うぉー!!」を聞いていると、フランスはぼろぼろの経済で完全になくしていた自信とか、自国への愛とか誇りとかといったものをサッカーを通して取り戻しているように見えました。

あのころのフランスは失業率14%、新卒者の失業率は25%でしたから、経済低迷といっても、日本とは比べ物にならない悪さ。パリ風物のカフェはがらがら、みんな家に帰ってコーヒーを飲む状態だったのです。


だから、前回のフランス大会から、今回の日韓共同開催までのあいだに、中流のフランス人がサッカーのことを話題にするのに抵抗を感じなくなったという変化はあると思います。今回ははるか彼方のアジアの国で行われるにもかかわらず、フランスでもだいぶ話題になっていました。でも、そこに「きっとまたフランスが優勝できるだろうから」っていう期待がなかったとはいえないんじゃないかな〜と思うんですね。

それに、中流の人たちはサッカーを受入れたとはいえ、上流意識の強い人たちはどうなのかなぁ?たとえば食卓でサッカーの話題をとりあげるのは大丈夫になったかもしれないけど、自分の子供がサッカーをしたいといったら反対しないのかなぁ?

そんなことを思いながら、わたしは今回のW杯の予選を見ていました。

そしたら。。。負けちゃうし。あは。(^^;;

もちろん、多くの人たちは残念がっていたけれど、平日の昼間に市役所前の巨大スクリーンをわざわざ観に行ったような熱烈なサッカーファン以外の人たちは、「残念だったね、負けちゃったね」で終りで、サッカーの結果で絶望したりなんてしないっすよ、やっぱり。

パリにはセネガル人がたくさんいるので、フランスに勝ったセネガル人がお祭り騒ぎをしても、べつに 日本の某紙で伝えられたように「パリの街で浮いている」なんてこともなかったし。その記事を書いた記者さんはきっとパリにはフランス人しか住んでいないとでも思っていたんだろうけど。


フランス代表選手達は大半が貧しい家の出身なので、彼らが移民の子どもたちや、貧しい家庭の子どもたちに与えられる夢の大きさを考えると、やっぱり勝ってほしかったな〜って思いますけどね。

サッカーがフランス人にとって決して自分たちの国への誇りを思い出させてくれるものではなくなったいま、これからがフランスで本当にサッカーが愛されるスポーツになるかどうかの正念場なのではないかな〜と思います。



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