Scrap novel
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2002年03月05日(火) happy morning!

朝、お兄ちゃんより先に起きてリビングへ行くと、お父さんが新聞を読みながら、コーヒーを飲んでいた。
あれ? いつ帰ってきたのかな?
ゆうべは夢中で(・・・)気がつかなかった。
「おはよう」
「ああ、来てたんだな」
「父さん、いつ帰ってきたの?」
「ほとんど朝だったかな。それよりおまえらこそ、朝がたまで何やってたんだ?」
「え・・! 何って・・」
「何か、物音やら話し声がしていたぞ」
「あ、そそ、それは、せ・・・」
「せ?」
「せ、せみのからあげ・・・」
「はあ?」
「じゃなくて・・・せ、セロテープをこう・・・こうやって」
「顔に?」
「う、うん。顔に貼り付けて、あはは、変なカオ・・・って」
「それ、一晩中」
「うん・・一晩中」
思わず俯いて、しどろもどろになる僕の後ろで、お兄ちゃんの部屋のドアが開いた。
「あれ? 親父、帰ってたのかよ」
「ああ、ヤマト。おまえら何だ。セロテープを顔にこうやって・・・」
「はあ?」
素っ頓狂な声をあげるお兄ちゃんに、僕が小声で説明する。
「父さんが、ゆうべ一晩中、何してたかって」
「ああ」
助けを求める僕に、なんだそんなことかという顔をして、お兄ちゃんはいたって明るく、きっぱりと言った。
「セックス」
「は?」
「おおおおおおおにおにおにおにいちゃん!!!」
父さんのとぼけた顔とは対照的に、僕は真っ赤になって大慌てで何か言おうとして、思わず舌を噛んでしまった。
何とかその場を取り繕うとする僕を尻目に、父さんはのんびりと言った。
「おまえなー、ヤマト・・・タケルはまだ小学生なんだから、こいつの前でそういう冗談言うなよ。ほら見ろ。かわいそうに真っ赤になっちまって・・・」
「あ、そうか。悪ぃ。まだウブな(死語?)ガキだもんなー、タケルは」
そう言いつつも、僕の耳元で“ウブなガキのわりには、凄かったじゃん。ゆうべ”と、意地悪を言うことも忘れない。
「さあて、行くか・・」
父さんが早々と出勤していって、僕はホッと胸を撫で下ろした。
「お兄ちゃん・・」
上目使いに抗議する僕をよそに、お兄ちゃんは涼しい顔をして言う。
「ま、こういうことは、本当のことを言っておいた方が、かえって怪しまれないんだって」
そ、それはそうかもしれないけど、何かが違うような気もする・・・。
「いいじゃねえか。別に。やましいことしてるわけじゃなし」
からっと明るく言うお兄ちゃんに、寝不足でぼんやりした頭でしばらく考えて、それからゆうべのことをしっかり思い出し、赤面しながらやっと言った。
「してるよ。充分。やましいコト・・・」




またしても再録・・・・。
bbsでちょこっとお話がでたのでこれを機会に。
「good morning!」の前フリ的なお話でした。
いやいや、胸をはってカミングアウト(?)するヤマトが頼もしい?
そして、パパは相変わらず大ボケ・・。
けっこう楽しんで書いてしまったお話でしたよ。(風太)


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