wakaP〜の好物三昧

2004年01月19日(月) 二玄社 「CG」(前編)

車の本の話である。
僕はエンスーでは無いけれど、多分、普通の男並に車が好きだ。
エンスーとは「enthusiast=熱狂的な人」に由来する言葉だが、「車マニア」に良く使われる。「CG」=「Car Graphic」はそのエンスー達に「カーグラ」の愛称で呼ばれている老舗の車専門誌である。(決して「Computer Graphic」の略ではありませんよ…。)

購読を始めて既に25年になる。毎月必ず買っている。キッカケは××テレビではなく会社の車好きの先輩である。彼は入社当時、BMW2002iに乗っていて、やはり同じ車に乗っていた彼女と結婚した。(新婚時代は二台のBMWが玄関に並んでいたらしい。)当時、大変贅沢かつマニアックな車である。普通に車が好きだった僕はBMWに乗っている先輩に興味有り色々と車談義に花を咲かせていた。その時「車好きならこの雑誌を知らなきゃモグリ」と言われて紹介されたのが「カーグラ」なのだ。

なぜ「カーグラ」なのか、と言えば理由は三つある。
まずひとつ目にジャーナリズムの精神が息づいていることだ。これも先輩の言葉だが、どんな雑誌かと言う質問に「広告の入った『暮らしの手帖』。」との答えが適切だ。今も「厳正中立な試乗記」がセールストークになっている様に、一般雑誌では当たり前のパブリシティ(記事に似せた広告企画)や所謂「ちょうちん記事」を書かないことを誇りとしている。

正しい車のあるべき姿を踏まえ、毎月発表される新車に対し意見をはっきりと述べる。広報車と言われる「完璧」に整備された車だけでなく、重要と思える車種は自社で購入し車だけでなくメーカーや整備工場でのサービス面まで、しっかりと長期テストリポートする。更に重要な記事は全て社内スタッフ自ら取材・執筆する贅沢な体制を採る。

ある号の編集後記では、明らかに広告掲載していると分かるあるメーカーが反社会的行為を行った事について、痛烈に批判展開していた。少々エキセントリックとも言えるが、こうした姿勢が車選びや車はどうあるべきなのかを真剣に悩んでいる読者にとって、信頼できる情報源としての価値作りに繋げているのだと思う。

一見カッコ良い国産車がデータと根拠ある価値観の基にバッサリ斬られ、正に「目から鱗」の世界も何度も見せられた。「カーグラ」編集部員が来ると新車試乗会の雰囲気がぴりりとシマルと言う「伝説」もこうした背景が生み出したものだろう。アンダーステア、オーバーステア、タックイン、カウンターを当てる、クラッチミート等、車を語る独特な専門用語も「カーグラ」からの伝授だ。

その一方で、車の評価は理屈だけでは成り立たないことも教えてくれた。
例えば「理想のファミリーカー」を語る時、彼らはしばしば「大人4人がゆったり座れる」「旅行に必要な荷物をタップリ積める」「背が高く乗降しやすい」「馬力はそこそこで良いから十分なトルク」「華美な修飾より機能的で必要十分な装備」と言った指摘をするが、その通りのマジメな車(例えばTOYOTAのVとか・・・)がヒットした事は余りないですよね。

日常的に様々な車を比較・評価できる専門家が推薦する「ファミリーカー」と、この一台しか持てない者が求める「ファミリーカー」とは求められるものが違っていて、更に言えば人心はもっと我が侭かつ気まぐれな存在であるのだろう。

車に求められるものは「正論」と「夢」のバランスと思う。だから正しい事(例えば「機能性」)に、その時代感や持つ事の「満足感」をいかに上手く加えること(ある時はトレードオフ)が出来るかが車の持つ商品度の要になる。

では「車の評価は売れれば良いのか」と言われると、それも悩ましい課題かもしれない。
(以下、次回)


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