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2006年09月16日(土) ろしあ日記 Day1.テイクオフ




とりあえず乗り込むところから。
かの有名なアエロフロート、危ない噂のつきまとうアイツだけど、今回は荷物だって手荷物のみだからロストバゲッジする可能性もなし、この身が無事に着けば十分だ。(ちなみに私は荷物がすくない。小型キャリーで7キロ。)

飛行機のって席を探すと、まさかまさかまさか、こ、このマシュー・ベラミー似の30代東欧人の席の隣がわたくしですか?神様ありがとう!マシューベラミー(仮)に荷物をもちあげるのを手伝ってもらい、私の頭の中で全裸のルーファスが高らかにラッパを吹き鳴らしたりしましたが、すぐ左手に既婚の印を認めて多少盛り下がる。(←ほらこの人最近枯れてるからしょうがないんだよ!)
それはともかく、あーさよなら日本。そしてもうすぐロシア、ロシア、ロシア。エロイカの少佐も「離陸!俺の好きな瞬間だ、この瞬間を境にそれまで地上で起こった出来事はすべて忘却の彼方だ」と言っておりましたが、わたくしも離陸の瞬間の何とも言えないわくわく感がたまらんのでございます。テイクオフ!

窓の外を見て、小さくなっていくわが故郷千葉県にしばらく興奮しておりましたが、隣のマシューベラミー(仮)を見るとどうやらチェコ語の本を読んでいるご様子。ロシア人だったらいろいろ観光情報聞こうと思ったので、ちょっと残念だ。話しかける機会を失ったまま、機内食サービス。そのときにマシューベラミー(仮)から「Enjoy your meal!!」といわれたのをきっかけにぼつぼつ話しだす。外国人のこういうとこって、いいよね…。

ざっと言うと。
彼はチェコ人、工場のマネジメントのセミナーを受けるためにわざわざチェコから来て横浜に3週間いたんだと。そして毎朝ラジオ体操(変な音楽付きのエクササイズと言っていた)をやらされていたので1〜8までの数字は日本語で言えるけど9が覚えられない。笑。横浜のホテル(寮?)では3食いっつも同じ冷めた日本食が出てきて死にそうだった。何でみんなあんなに味のない米ばかり食べるんだ。 i like japanとは言い切れないけど日本はinterestingだ。浅草はよくわからなかったけどシーパラダイスは最高だ。イルカがショーをやるなんてすごい。何、きみはチェコに来たことがあるのか?え、ビール?外国人はみんなチェコというとビールの話しかしないがどうなってるんだ?ところでどうしてアエロフロートのドリンクサービスはリンゴジュースとオレンジジュースとトマトジュースの3種類しかないんだ。厳しすぎる。あのスチュワーデス、にこにこ笑っちゃいるけど、俺は信じないぜ?

という感じで、かなりおもしろいひとでした。トークが印象的だったのでだんだんマシューベラミー似の外見が気にならなくなってきた。笑。それから私に入国カード(外国人用なのにロシア語しか書いてない…)の書き方、キリル文字の書き方を熱心に教えてくれました。ロシアは空港しか行ったことないけど(モスクワで乗り換えてチェコに帰るらしい)、こどものときにロシア語は6年間やらされてたそうです。ああ、いろいろな歴史が…
ちなみに最後に名前を聞いたら「ユリカ」。女の子みたいだな!

ユリカのおかげで10時間があっという間でした。彼はトランジット方面なので、空港で別れて入国審査へ向かうと、そこにはすでに長蛇の列が。日本人ツアーと思われるグループも発見。添乗員さんはこの列で延々と待たなければならないことについての説明に苦労している。日本人の中には何か質問されていた人もいたので緊張しましたが、私は何も聞かれずにすみました。入国カードがよかったのかも。ありがとうユリカ…。結局入国審査で30分くらい待たされたましたが、私は比較的早く並んだほうなので、一時間以上待つ人もいるのだろうな。恐るべしこの審査。

さてそれから換金をすませていよいよホテルへ移動。主要国の中で最も治安が悪いと書かれていたモスクワ・シェレメチヴォ空港ですが、たしかに。外へ出て出迎えの人のあいだをくぐり抜けると、白タク勧誘「マダム、タクシー!」の嵐だ。マダムってなんだ俺はまだまだマドモワゼルだぜ?と思いつつ、なるべく目を合わせず「ニェト(No)」と言って通り過ぎる。バス停は「地球の歩きかた」に載ってた空港地図で位置を頭に入れていたので、スムーズに発見。市内へはバスとマルシルートカ(乗り合いワゴンみたいな…)の2種類があるのですが、マルシルートカがちょうど来たので、そこで待ってた人に続いて乗ろうと思いきや、足をかけた瞬間に車内から「ニェト」の嵐。え、なにこれ、ブーイング?まさかのアジア人差別!?と最悪の被害妄想が一瞬にして頭をかすめ、呆然としてしまったのですが、よく見たら座席がすべて埋まっていて、ただの人数オーバー。よ、よかったけどあんな大勢からいきなりロシア語でまくしたてられて本当にびびった………

その次に来たバスにおとなしく乗り、「ヴ・ミェトロ・レチノイ・ヴァグザール?(地下鉄のレチノイ・ヴァグザール行き?)」と運転手のおじさんに聞いて確認し、無駄にちょっとロシア語できるふりをしてみる。チケットがスムーズに買えたのはいいのですが、改札みたいな機械への通しかたがわからない…。わたわたしてると後ろに並んでたおばさんがロシア語で何かわめきながら私のチケットをひったくり、代わりにやってくれた。なんか、さっきのマルシルートカでもそうだけど、行為は親切なんだがみんな勢いが激しいのでびびる……
そしてこのバス、私の人生史上最高に汚くてぼろいバスでした。ガタガタいいまくってるのでもう20年は走ってんじゃないかと。しかも空港からのバスだというのに、観光客ぽい人やロシア人じゃないっぽい人が一人もいない。そのうえ、空港以外は普通のバス停にもとまるため、地元の花屋のおじさんや買い物帰りのおばさんがどんどん乗ってきてはどんどん降りて行く。今時アジア人なんてさほどめずらしくもないだろーに、おじさんにガン見される。ロシア語はわからんがじろじろ見られながら「ヤパーナァ」がどうとか「フィリピーニャ」がどうとかずっと言ってる。ええい、私はフィリピン人ではない。。。
花屋のおじさんたちのおかげでバス中が花の匂いに満たされながらも、小1時間も乗るとだんだんバスに酔ってきた(車に弱い)。。。

バスを降りると次はメトロだ。バス停からはメトロの駅がまったく見えずちょっと焦りましたが、人の流れに適当について行ったら無事発見。
駅の窓口でまた無駄にクールに「アヂン(1回)」とか言ってロシア語ができるふりをして地下鉄の1回券を買う。チェコでもそーだったがやはり旧共産圏はエスカレーターが早い。ゴウンゴウンいってる。人が乗ってるというより、運ばれてる感じだ。
レチノイ・ヴァグザールは終点駅なので、電車の方向には迷わずにすんだ。うぉぉぉぉロシアの地下鉄だ!と興奮しながらも、あまり目を付けられたくないので、さも当然のように乗車する。発車をしばらく待っていると、台車に乗った足のない軍服姿のひとが物乞いをしに車両に入ってきた。海外旅行先で物乞いが多いのはよく見たし、地下鉄にそーいう人が多いのもわかっていたけど、この人の登場は相当ショックだった。だって真っ黒によごれた顔にぼろぼろの軍服、乗ってるのだって車椅子じゃなくて荷物を運ぶようなみじめな台車で、それにわずかに残った足をヒモでぐるぐるに縛りつけただけだ。そして何かをわめきながら、汚い麻の袋を片手で差し出し、もう片方の手で地面を押して台車で移動している。いきなりこんなハイレベルなロシア人の登場にすっかりクラクラしてしまった。そして地下鉄が動き出し、次の駅に止まったと思ったら、また別の、軍服で足のない人が台車で車内に乗り込んできて物乞いを…うわぁー……

モスクワの地下鉄は、大理石の宮殿みたいな豪華な内装のところが多い。しかし駅名の看板があまりなく、「あれ、今何駅だ?」と思っても向かいのホームに電車が来ると隠れて見えなくなる位置に書いてある(誰かこれについて考えなかったんだろうか?)。日本みたいにすべての柱に「えびす」「えびす」「えびす」とは書いてくれないのだ。内装に凝る前にそのへんをしっかり(以下略)。仕方ないので駅の数を数えて確認。間違えずに目的の駅に着けてよかった。

さて地下鉄から外に出ると、モスクワの中心地なわけですが、建物がやたらと大きい。道路が本当に広い。普通に6車線とかあって、車がびゅんびゅん通ってる。そのため地図で確認しても、なんだかうまく場所がつかめない。地下鉄の出口には地図には乗ってないような小さい店があったりして、どの方向になにがあるやら。巨大ビルのせいでなんだか感覚もおかしい。しかし川沿いのホテルだったので大きな通りから橋を確認し、見当をつけて向かったら当たってた。

途中でネスカフェのでかい広告発見。ギャー!
ロシアでネスカフェといったらエロイカです!!


ぶらぶら歩いてホテルに着く。中国人がロビーで騒いでいる。
チェックイン時にはフロントのウキウキした笑顔のかわいいねーちゃんに癒された。あまりに癒されたので
「あちらがバー・ストックホルムになります!」
「え?なぜにストックホルム?」
「うちのホテルはスウェーデン風なんですよ!」
「へぇ〜だから民族衣装の子がいるのか…」
みたいな不毛の会話をだらだらと続ける。モスクワでスウェーデン風ねぇ…。
滞在中はホテルに滞在証明書をもらわないといけないため、パスポートは2時間預かりますと言われる。ちなみにここロシアでは観光客は外出時にパスポートを携帯していないといけないため、持っていないのが見つかると警察に金を巻き取られてしまう。何か食べに行こうかと思ってたけど外出ができなくなってしまったのだが、まあすでに9時だし移動でくたくただったのでおとなしく寝ることにする。
部屋のテレビでアイスホッケーを観て、罪と罰をすこし読んだ。ソーニャのお母さんが狂ってしまったところだった。


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