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2006年09月15日(金) ここからでかけるよ


イワン・カラマーゾフ曰く。
「俺はヨーロッパにいってきたいんだ、アリョーシャ。ここからでかけるよ。しょせん行きつく先は墓場だってことはわかってるけど、しかし何よりいちばん貴重な墓場だからな、そうなんだよ!そこには貴重な人たちが眠っているし、墓石のひとつひとつが、過ぎ去った熱烈な人生だの、自分の偉業や、自己の真理や、自分の闘争や、自己の学問などへの情熱的な信念だのを伝えてくれるから、俺は、今からわかっているけど、地面に倒れ伏して、その墓石に接吻し、涙を流すことだろう。そのくせ一方では、それらすべてがもはやずっと以前から墓になってしまっていて、それ以上の何物でもないってことを、心から確信しているくせにさ。俺が泣くのは絶望からじゃなく、自分の流した涙によって幸福になるからにすぎないんだよ。自分の感動に酔うわけだ。春先の粘っこい若葉や、青い空を、俺は愛してるんだよ、そうなんだ!この場合、知性も論理もありゃしない。本心から、腹の底から愛しちまうんだな、若い最初の自分の力を愛しちまうんだよ……」

このへんの独白、好きすぎる!

明日からしばらくロシア行ってきます。ほんとうに楽しみで楽しみで緊張して、昨日からまったく仕事なんかしてませんよ、わっはっは。会社行って一日中にやにやしながらツァーリだのラスコーリニコフだのについて妄想してるだけですよ…。ぁぁぁ帰ってきたら仕事がんばりますほんとごめんなさい!
私はすごくロシアが好きだけど、ロシアが私を好きかどうかはわからないし、行ってみたらすっかり失望してしまうなんてことになったらどうしようと怖くもあるのですが、それでもやはり実際にこの目で見ないわけにはまいりません。ネフスキー修道院行くぞー!

最近いやに感じるのは、旅行に行っていろいろなものを見たり知ったり感動するのはもちろん好きですが、そもそも「行く」という行為が自分はすごい好きなんじゃないかということです。グルーシェニカの「あたしも行くわ!」だとか、ラスコーリニコフの「一緒に行こう…!」だとか、twogallantsが歌う罪人の果てなき逃亡についての歌とか、スプリングスティーンがベイビー俺たちは走るために生まれてきたんだぜっていうこととか、ブエノスアイレスのふたりが地球の裏まで行くとことか、そういうことについて悶々と考えているとクラクラしてきます…行き先は遠ければ遠いほどいいなぁ…



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