金色の夢を、ずっと見てる

2010年06月24日(木) 『Mother』にどっぷりハマってました。

もう、本当にね……毎週泣きながら見てました。


最初はシンプルに、虐待されてる子をなんとか救おうとするドラマだと思ってたんです。それも間違いではないんだけど、実際はもっと深く掘り下げた親子愛とか家族愛がテーマだったんだな〜…と、見終わって思いました。


最初の1〜2回は、玲南ちゃん(芦田愛菜ちゃん)が虐待されてる様子が辛かったですね〜。母である仁美(尾野真千子さん)が彼氏といちゃいちゃするために、500円玉を渡されて家から追い出される7歳の女の子。それも、仁美が黙って500円玉をテーブルに置くだけで、娘は自分で身支度して素直に出て行く…その様子が、いかにその行動が日常的に行われてるかを端的に表現してて、もうそれだけで辛くなりました。

その『彼氏』のお菓子を勝手に食べて怒られてビニール袋に入れられた場面。パートから帰ってきた仁美がその袋を見て
「ちょっとこれ、まさか…!」
と青ざめる。でもそれは娘の事を心配してじゃなくて、まさか殺しちゃったんじゃないでしょうね!?と面倒な事になるのを恐れての危惧なんだとはっきり判るあの場面、怖かったです。決して良い人の役ではなかったけど、あの女優さんも上手かったなぁ。



奈緒(松雪泰子さん)が玲南に
「私、あなたの母親になろうと思う」
と誘拐を決意したシーンで
「…お母さん」
と泣いた玲南。正直、今まですごく優しくしてくれたとか、長く関わりあってしっかりした絆があったわけでもないはずなのに、すぐに奈緒を受け入れた玲南がちょっと不思議だったんです。でもそれも、それだけ実の母親とその彼氏との生活に傷ついてたって事なんだな、と。きっと、いつも心の中で『誰か助けて』って思ってたんだ。



ドラマの後半で描かれた、道木仁美が玲南を虐待するようになった経緯。玲南が産まれた時は本当に心から喜んで、テレビで流れる幼児虐待のニュースに
「こういうの、本当に信じられない」
「私は絶対にこんな事しない」
と憤ってたはずの仁美が、夫を亡くし、いろんな事を犠牲にして1人で頑張って子育てをして、でもサポートしてくれてた近所のおばちゃんがいなくなり、少しずつ疲れて追い詰められていく中でろくでもない男に引っかかってしまって…見ていると、仁美の気持ちの変化が(判りたくないけど)判ってしまうんだよね。

今の私は、夫や両親をはじめとする周囲の支えに本当に恵まれていてどうにか頑張れてるけど、仁美と同じように何もかも自分1人で頑張らなければいけなくなったら、今と同じようにやれる自信はない。むしろ、仁美と同じように子供を疎ましく思ってしまうかもしれない。『虐待する人』の気持ちなんて判りたくないけど、『したくなる人』の気持ちは判ってしまう。子育てしてる人の中に、何割かはそういう人っているんじゃないかなぁ。

仁美も、最初のうちは男にかまけて娘をないがしろにする自分に罪悪感を感じてた。でも、深夜に
「助けて…」
と泣いた玲南を背負って家から逃げ出し、でもどこへも行けずに、死ぬ事も出来ずに結局家に戻ってきてしまった。あの時に、玲南はもう諦めてしまったんだろう。母親は自分を選んではくれないと。

そして、運命の分かれ道とも思えた男との旅行。
「玲南の分の旅費は私が出すから」
と言った仁美に
「連れて行く気?」
と返した男。男を失うのが怖くて言い返せずに
「……そうだよね」
と答えた仁美。2人に背を向けて座りピクリとも動かずにそのやり取りを聞いてた玲南。大量のお菓子と、罪悪感を打ち消すために買い与えたハムスターと共に家に置き去りにされた玲南。それでも、やはり娘が気になって電話してきた仁美に
「ママ、楽しい?」
と寂しさを見せまいとする玲南。

玲南を気にかけつつも旅行を楽しんでしまった事で、仁美の中のストッパーが壊れちゃったんだろうな。子供がいなければ自分の好きなように過ごせる。一度それを経験してしまったら、仁美にとって玲南は邪魔ものでしかなくなってしまった。


つぐみ(玲南)が生きてると知って迎えに来た仁美に、
「玲南ちゃんはもういないの。天国に行ったんだよ。私はつぐみ」
と自分で告げて
「ママの事、嫌いになったの?」
と尋ねる仁美に
「あのね、好きでも嫌いでもないの。もうママじゃないから」
とつぐみが答えた場面……あそこは本当にズシンと来ました。母として、虐待してたとはいえ自分が産んで、最初の数年は確かに愛情を注いで育てたはずの娘にそんな事言われたら…と思うとそれも怖かったし、わずか7歳でそれほどの意志で母を捨てようとするに至ったつぐみの心の傷の深さを思うと、見てるだけで辛くて辛くて。



同時進行で描かれる、奈緒と母親達との関係。つぐみと出会い『うっかりさん』と慕われて奈緒に関わっていく事になった、生みの母である望月葉菜(田中裕子さん)。誘拐という罪を犯した奈緒と、結婚や就職を控えた2人の娘との間で揺れた育ての母である鈴原藤子(高畑淳子さん)。どちらも強くて、優しくて、この2人がいたからこそ、子供が苦手だったはずの奈緒の中に自然に母性が産まれたのだと思います。




仁美が奈緒への腹いせに誘拐されたという申告書を出し、つぐみの前で捕まって連行されてしまった奈緒。つぐみは施設へ送られ、藤子は責任を問われて社長職を辞し、下の妹は就職の内定を取り消される。それでも藤子は奈緒との養子縁組を解消はせず、逆に
「つぐみちゃんを救ったあなたを、母として誇りに思う」
とキッパリ言った。妹達も離縁しないという藤子の意志を受け入れ、『懲役1年・執行猶予3年』という判決を下された奈緒を心から迎え入れる。血の繋がりだけじゃない、共に生きて積み重ねてきた時間の重さを感じました。

その一方で、奈緒を手放したはずの葉菜は、残り少ない自分の命を縮める事になっても奈緒とつぐみを守ろうとする。共に生きる事が出来なくても、血の繋がりとはこれほど重いものかと思わされます。このドラマのすごい所は、その2点が無理なくどちらも同じ重さで描かれてた所ではないでしょうか。



施設で『玲南ちゃん』と呼ばれて普通に楽しく暮らしてるように見えたつぐみちゃん。でも本当は、夜中に何度も奈緒の携帯にこっそり電話をかけていた。裁判が終わって帰ってきた奈緒がようやく電話に出ると、ごく自然に
「お母さん?つぐみだよ」
と名乗る。このシーンは本当に号泣でした。一生懸命元気なふりをして何気なく聞こえる話をして、でも途中でこらえきれずに泣きだして
「お母さん、いつ迎えに来てくれるの?つぐみ、待ってるんだよ?」
……実は、今思い出しながらこうして書いてるだけで泣けてきそうです(苦笑)


最終回で、もらったおこづかいで1人で室蘭からやってきたつぐみちゃん。執行猶予中の奈緒にとっては、もし見つかったらそのまま猶予取り消しで実刑になりかねない事態なので見ててハラハラしました。でもそのおかげで(というのも変だけど)つぐみも一緒にうっかりさんの最期を看取る事が出来た。眠るつぐみちゃんの隣で静かに息を引き取ったうっかりさんは、きっと幸せだったろう。夫を殺した罪で服役し、そのために奈緒を手放さざるをえなくなり、ずっと1人で寂しく生きてきた葉菜。人生の最後に奈緒と再会し、つぐみと出会い、奈緒や藤子と和解して満たされてから逝った…。

はっきりとは描かれてなかったけど、葉菜の夫殺しには奈緒が関わってて葉菜はそれをかばおうとしてる…と思える描写がありました。それもまた母性。葉菜の理容店の常連客だったおじいさん(元刑事)の
「人間には、男と女と、あと母親というものがいる。これは私ら男にはわからない生き物だよ」
という趣旨の言葉が静かにしみ込んでくる気がしました。



なんとかして奈緒とつぐみちゃんが一緒に暮らせるような終わり方はできないものかと思いましたが、それをやられてたら、それはそれで無理やりなハッピーエンドになっちゃったんだろうな〜と思います。結果的につぐみちゃんは『玲南』として施設に戻り、奈緒とは別々に暮らす事になる。最後に
「もう少しだけ、一緒にいようか」
と言った奈緒に
「見てて。つぐみ、1人で帰れるから」
と自分から手を離したつぐみちゃん。自分を虐待する『ママ』と離れてようやく自分を本当に愛してくれる『お母さん』に出会えたのに、まだまだ無条件の愛情に包まれていたいわずか8歳のつぐみちゃんが12年もの時間を施設で生きる事を余儀なくされる。あまりに残酷な結果なんだけど、現行の法律では仕方ない事なんだろう。奈緒の
「離れていても、ずっと愛してる。ずっと親子だよ」
という言葉を支えに、またいつか奈緒と会える日を信じて1人で頑張る覚悟をしたんだ。わずか8歳の子供にそれほどの決意をさせてしまうほど、虐待の傷は深く、奈緒の愛情は強かったんだ。


何かを振り切るように走って施設に帰りつき、空を飛ぶ渡り鳥を見上げてかすかに笑顔になったつぐみちゃん。離れていても、同じ空を見てる。渡り鳥を見て同じ事を思う。その絆を信じて『玲南』に戻ろう。そんな気持ちが伝わってくる気がしました。




でもね、本音を言うなら、なにもつぐみちゃんが成人する12年後じゃなくても、奈緒の執行猶予が切れる3年後の約束じゃダメだったのかな?って思います。もちろん、執行猶予が無事に終わったからって、『誘拐した人』である奈緒が『誘拐された被害者』だったつぐみちゃんを養女にするみたいに法的にも認められる形で親子になる事は不可能なのかもしれないけど、会うぐらいはいいんじゃない?って。8歳からの12年間って長いよ。たくさんの愛情を受けて成長する時期に、ずーっと会えないなんて辛すぎるじゃないか。


でも最後に1シーンだけ描かれた、多分12年後の2人。好きだった水色の服を着て、クリームソーダを注文して静かに手を取り合う2人の姿。それが2人の幸せな『その後』であると信じたいです。本当に毎週毎週泣きながら見てて、楽しいとかおもしろいとかプラスの感情をもたらすストーリーでは決してなかったはずなのに、見終わってこれほど
「見て良かった」
と思うドラマは久しぶりでした。


そして昨日の最終回で泣き過ぎて、今日はずっと頭痛に苦しむ羽目に(苦笑)






ちなみにつぐみちゃん役の芦田愛菜ちゃん。作中では7歳の設定でしたが、実はまだ5歳なんだそうですね。通常、ドラマなどでは7歳の役だったらちょっと小柄で幼く見える8歳とか9歳の子を採用するのが常らしいのですが、このドラマは監督さんが芦田愛菜ちゃんに惚れ込み、『ネグレクトで満足に食事を与えられてないため栄養失調気味で体が小さい』と設定を変えてまで彼女を起用したんだそうです。

ドラマを見ていて、5歳とは思えない演技力に本当に驚かされました。感情表現がすごいってだけじゃなくて
「今、こんな気持ちなのかな」
って見てる側にいろいろ想像させる、その表現力の豊かさ。松雪さんを始めとする周りの女優さん達の素晴らしさはもちろんなんですが、このドラマは愛菜ちゃんがいたからこそここまでのレベルで完成したんじゃないかなぁ。今後が楽しみな子役さんです。


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咲良 [MAIL]

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