金色の夢を、ずっと見てる

2004年08月23日(月) 『本物』は素人さんに迷惑かけるようなマネしません。

今の会社に入る前に、レンタルビデオ屋と平行してパーティーコンパニオンのバイトもしてました。仕事内容は主に2種類。各種宴会に参加して場を盛り上げるパターンと、披露宴会場で料理や飲み物を出したり空いたお皿を下げたりするサービス係。それぞれ通称『お座敷』『婚礼』と呼んでおりました。

お酒が飲めない私は婚礼の方が好きでしたね。お座敷だとどうしても多少は飲まなきゃいけなくなるから。でもたまに、私達コンパニオンの分も宴会予約の人数に入ってて、
「君たちの分も料理が出てくるから、遠慮なく食べなさい」
なんて言われる事もあってそれは『ラッキー♪』って思ったけど。自分から飲みたがっちゃいけないけど勧められたらそれを断わるのもダメ、となってたので、結局お座敷の時はほぼ毎回飲むハメになってた。


でも、お客様によっては圧倒的におもしろいのもお座敷。なかでも特に覚えてるのは、『九州各県から集まったそのスジの方達』のお座敷に出た時の事。

わざわざ前日に事務所から電話かかってきたんですよ。
「あのねぇ、明日のお座敷なんだけど・・・・・・・・いわゆるアチラの方達のお席なんだけど、大丈夫?」
・・・・・・アチラの方達、って・・・・・・・・・
「え、つまり・・・・・いわゆる“そのスジの方”ですか?」
「うん、そう。あ、でも危険な事はないと思うの。スーパー(※)を御希望なんだったら最初っからそういう事務所に電話するだろうから、本当に、場に華を添えて、お酌とかお料理を取り分けたりとか、そういう細々した気をきかせてくれればいいはず。・・・・・・いい?」

※スーパー・・・・・スーパーコンパニオンの意。脱ぎやらお触りやら、時には本番ちっくなサービスまでアリの、その名の通り『スーパーなコンパニオン』。当然、その分料金も高い。それを売りにしてるコンパニオン事務所もあります。

まぁ1人で行くわけでもないし、大丈夫だろ〜・・・と承諾して、さて当日。

事務所で制服に着替えて、チーフさんを中心にミーティング。全部で7人。
「お客様の御希望としては、“若さにはこだわらないから、ちゃんと気配りが出来て話を楽しめる娘を”という事なので、え〜と・・・・・・○○ちゃん、いくつ?」
「・・・・19歳です」
「・・・・・22歳って事にしましょう。で、もし何か粗相があっても名前を覚えられないようにしておきたいので・・・・適当に源氏名を付けてもいいんだけどそれだと自分達が混乱しそうだから、今日は皆さん名札は付けなくていいです。オープン(栓抜き。これにも名前シールを張ったプレートが付いてる)も持たなくていいです。お店のを借ります。念のため私だけ持っていくんで、どうしても手元になかったら私のを貸しますから言って下さい。後はとにかくご機嫌を損ねないように。楽しんで頂けるように気を配って下さい。あと、これが一番大事なんだけど、ビクビクしないように。お客様である事にかわりはないんだから、お金をもらう分はキッチリ仕事をしましょう。いいですね?」

・・・・・・この時点でひょえ〜って感じ。未だかつてこんなに緊張感あふれるお仕事があっただろうか。

タクシーで本日のお仕事先、繁華街のふぐ料理店へ出動。お店の少し手前からもう異変に気付く。
「この、道の両側にバラバラ立ってる人達って・・・」
「どう見てもカタギじゃないねぇ。多分“お客様”の連れっつーか、下っぱ達だろうね」
店の前でタクシーを降りると、さっき道端にいた人達よりももうちょっと格上っぽい男性数人がチラリとこっちを見ます。とりあえず笑顔で
「お世話になります
と挨拶してお店に入る私達。店の前にはいかにもな感じの高そうな車がずらりと並んでますよ。

一番奥のお座敷に通されると、そこには7人のお客様。・・・・え、1対1!?

通常は、お客様数人に対してコンパニオン1人です。お客様が12、3人ぐらいまでならコンパニオンは2〜3人。コンパニオンが7人も呼ばれたら、それはいつもならお客様は20人以上は間違いないんですよ。

でも今日はお客様とコンパニオンが同じ人数・・・・・・・1人のお世話に付けって事ですね(汗)


でもまぁ、意外と言っては失礼かもしれないけど、いい人ばっかりでしたね。そのスジの方とは言っても、ある程度の地位にある人は逆に紳士的です。妙に偉そうにしたりとか、威圧的だったりはしません。極道である事をひけらかして傍若無人な振る舞いをするのは下っぱばっかりです。

ま、それでも
「え〜なんか袖口とか襟元とか、なんか肌に模様が見え隠れするんですけど〜?」
とか
「気のせいじゃないよね〜、なんか小指だけ長さが違うわ〜」
とか、そんな人ばっかりでしたけど(笑)

どうやら、九州各県のそのスジの方達のトップが集まっての宴席だったようで、ご当地自慢なんかも聞けてちょっと楽しかったり(^^; 

途中で、1人のお客様が
「あれ、薬がないな」
と上着のポケットをごそごそやった時には
「何の薬だよ、おい!?」
と思いましたが(笑)ただの内服薬で。まずは座敷のすぐ前に控えてた人に
「おい、車の中からワシのバッグ持って来い」
  ↓
控えてた人、店の入口付近に控えてる人に
「おい、車の中から組長のバッグをお持ちしろ」
  ↓
店の入口に控えてた人が車のそばで控えてる人(多分)に同じように伝えて、結局その一番下っぱ(っぽい人)が座敷まで走って持ってきましたよ。いや〜ん、上下関係ハッキリしすぎ〜。


勧められて時々フグを一緒に頂いたりしながら、長〜い2時間が経過。普段なら延長つかないかな〜とか思うんですけど、この時ばかりは
「定時で終わらせてくれー!!」
と思いましたねぇ。無事終って、お店の入口でそこから二次会に行くというお客様方をお見送り。

組長さん達が、それぞれ自分のとこの若いモンに
「お前ら、先に帰ってろ。適当に別れてチェックインしとけ」
なんて指示を出してるのが聞こえますよ。

余談ですが、この日は日曜日だったんですよ。で、日曜ってクラブとかスナックは休みの所が多いんですよね。幹事だった熊本代表の組長さんが
「いつも使ってる店、開けさせましたんで。そちらへ」
と言ってたのが耳に入り、クラブでもちょろっとバイトした事がある私、今から大変な思いをするであろうホステスさんに心の中でエールを送りました(笑)

だってさ〜、うちらのお座敷では、まだ1軒目だしそれなりにマジメな話しもしてたり(・・・・そのスジの方の“マジメな話”ですから、ちょっと普段は聞く機会のない内容でしたが)で、まだお客様方もしっかりしてたけど、いい感じにお酒も入って、しかももう固い話は終ってる2軒目ではどうなるのか・・・・・・ね?


本当は
「2軒目にも全員このまま来ないか」
と誘われたのですが、チーフさんが
「ありがたいんですけど、この後もう1件、このメンバーでお座敷が入ってるんですよ〜。申し訳ありません、お付き合いできなくて」
と断わってくれたのでした。

タクシーに分乗して事務所に帰り、全員揃った途端みんなで深々とため息。・・・・・・・・・・・・・疲れた〜〜(;;)



滅多にない機会で、それそれでおもしろかったんだけど、できればもうやりたくないね(^^; 



で、なんで急にこんな話を思い出したのかというと、仕事帰りにまたそういう風景を見たから(笑)

帰る途中に斎場があるんですよ。ちょっと手前から、路駐してる車はあるわ、臨時駐車場はできてるわで
「今日の仏さんは大物だったんかな〜」
なんて思ってはいたんですが。

斎場の前で、私の前を走っていたベンツが停まりました。それも道の端に寄るでもなく駐車場に入るでもなく、普通に道の真ん中で。

ハザードはついてたから、
「あ、人が降りるための一時停止だな」
と判断して、私もその後ろで停まる。道端にわらわら人がいたので、追い越して行くのもちょっと危険かなぁと思ったんですよね。

そしたら、まず運転席から1人の男性が降りた。スーツなんだけど、丸坊主でなんか油断ならない感じの目つきの人。
「・・・・え、運転席の人が降りるの?」
と思う私にその人は
『ちょっとすいませんね』
という感じで手を上げて合図して(私もそれに『いえいえ』と会釈して返し)、後部座席のドアを開けました。そこから降りてきたのは・・・・・“丸坊主”氏より若そうなんだけど、体格が良くてなんだか貫祿がある男の人。“丸坊主”氏が素早く助手席からスーツの上着を取り出し、ネクタイを締めるその男性に後ろから着せます。なんつーか・・・・・・着せてる方も着せられてる方も、すごく慣れた感じ。こ、これは・・・・・・・・・

そう思って周りをよく見ると、停まってる車はみんなベンツだのBMWだの、国産でも明らかに上ランクのセルシオだのセンチュリーだの。そこら辺で立ち話してる人達も、なんとなくスーツの着こなしが特徴的・・・・・・



亡くなった方は『そのスジ』の大物だったらしいっす(苦笑)どうりでお通夜にしては弔問客が多いはずだよ!


どうしようかな〜・・・と固まってる私に気付いたのか、警備員の人が走り寄ってきて、付近にいた人に
『ちょっとすいません、車が通りますので』
って感じで声をかけて私に向かって『はいどうぞー』と合図。『どうもー』と会釈して通り抜けてきました。


さすがに、見かけたぐらいでビビリはしなくなったけど、やっぱりあの独特のムードに気付いちゃうと警戒しますね。ま、普段見る機会のない情景を見るのはおもしろいですが。

コンパニオンしてて他にもおもしろかった思い出もいくつかあるので、それはまたいずれ思い出した時にでも。


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咲良 [MAIL]

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