| 2004年09月23日(木) |
佐野暁演出・台本ー泉鏡花の『天守物語』を観る |
グランシップでの佐野暁さん演出・台本の『天守物語』の上演。 障害者と健常者の共演をモチーフに1991年から演劇祭で8回、実験劇場で3回と長期にわたってまさにボランティア的に様々なテーマを取り扱ってきた佐野暁さん。今回は、どんな演劇なんだろうと興味津々。しかもグランシップの中ホール。
泉鏡花の天守物語をキチンと読んでいないこともあって、この演劇の妖怪の世界と人間の世界の織り成す泉ストーリーにとまどいながらの観劇でした。あとで、妖怪・富姫と鷹匠・図書之介の悲恋物語と知ったのですが、その物語に障害者と健常者が「実(まこと)の俳優として演技を競う」姿を紛れ込ませるその手法はさすがと感じました。
泉鏡花自身の『天守物語』の設定が、企画書で言う「その(天守閣)高低の発想は、上下のイメージを類推させながら美と醜、善と悪、純と不純、自然と不自然、無力と権力、自由と不自由、無垢と俗臭、天と地、等々対比描写をも可能にしたのである」とするなら、なおのこと障害者と健常者の両者の共演が必然となる物語でもあります。最後のシーンでの「人間通れません」と障害を持つ役者を神的存在として登場させるシーンも納得というものです。
それにしてもいつも心配になるのは佐野さんのような静岡発の演出家が「この技」でちゃんと「飯が食える静岡」かということです。鈴木忠志氏が優遇されるグランシップで佐野暁さんの舞台を観るというのも不思議な縁です。
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