静謐の宮
miyano



  純愛のワナ(本のネタバレ)

うだうだと本を読んでおりました。
この前購入した大崎善生の「アジアンタムブルー」です。
これは前作「パイロットフィッシュ」の続きか?とか一瞬思っちゃったんですが、
前作は図書館で借りたので手元に無くてよくわからない。

文庫で買ったので、何気なく読んでいたのですが、ネットで検索したら、以前、
思いっきり純愛系と言う感じのハードカバーだったから敬遠した本だったです。
すっかり忘れてた。装丁見て思い出した。

この人の文章は本当にさらさらとキレイで、
ありがちな例えですが、水のように飲める。
でももちろん水にだって味はある。そういう感じ。
それでその味が私には合ってる感じ。

単純な純愛モノ、と言えばそうかも。
もともとハードカバーの帯コピーが、
「愛する人が死を前にした時、いったい何ができるのだろう」ってやつで。
つまりは恋人が死ぬ話で。

はっきり言ってそういう類の本は敬遠してきましたが、
これはそこまでベタベタしてないし、
いろんな人が指摘してますが、文体とか雰囲気が村上春樹っぽいんだな。
村上春樹をさらにクリアにサラサラにした感じ。
だから村上春樹の文章が好きな方なら、悪くないと思います。

しかしこの大崎さんという方は、癌にそうとう思い入れがあるのかな。
ネタばれですが、







パイロットフィッシュもアジアンタムブルーも癌で死ぬ人がいるんです。
てゆーか癌ばっかり。

それから、読んでて思ったこと、ちょっと後半、急ぎすぎたっつーか無理矢理過ぎ。
恋人が死ぬ、もう助からない。
そして希望を叶えてやりたい。
そう思ったとき、一般人には1ヶ月仕事を休むことはできても、
この小説のように叶えてやれるだけの財力はあるだろうか。この年齢の男性が。
それに外国に行った時に、フツーに現地人とみんな簡単にコミュニケーション取ってますが、
何語喋ってんの? そういうとこのリアルさが薄いぶん、ちょっと不満ですかね。

読後に色々考えていると、けっこうキライなシチュエーションなんですよ。
その大切な人を失くした後のトピックだったり、
そんな劇的なことがそんな簡単にあるだろうか?
登場人物の設定がけっこうフツーじゃないので、そう言う意味で確かに面白いけど、
なんっか現実的じゃないんですよね…。

でも読んでる間は気にならないくらい、雰囲気が好きだった。
なんというか悩ましい作家です。

あ、この本は、じっくり読まないと時系列がけっこうわかりにくいです。
回想シーンやら過去の記憶の断片やら色々あって。
パズルがバラバラになってしまった話でもありますので。


2005年08月13日(土)
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