Movin'on without you
mako



 君のいちばんに。

思いは、伝えないつもりだった。
今の関係を、壊したくなくて。

彼女くらい、当然のようにいるだろうなって思ってたし
別に彼女がいても、そこから奪う気もなかった。

彼が、あたしのことを少しでも大切に思ってくれていて
あたしが彼のことをそれ以上に大切なら

それだけでいいと、思ってた。
いちばんに、なれなくても。



―――なんて、いい子だったあたし。








初めて心から「欲しい」と思ったのは

「お前の喋り方、俺の嫁さんに似てる」
そやって、あの人から言われた瞬間。



実際に結婚してる訳じゃないのに
「嫁さん」なんて平気で公言するほど
大切なひとがいるんだ、って知った時。


あまりの衝撃の大きさに眩暈がして
そのとき、初めて
いちばんになりたがってた自分に気付いた。
あたしのものにしたかった、んだって。
すごく、すごく好きなんだ、って。


「似てる」なんて言われるほど辛いことない。



それが19の春の日でした。






彼をあきらめるために
忘れるために区切りをつけるために、
前へ進むために
強くなるために、した、告白。

彼女がいると知ってて、
すごく綺麗で気が強くてやきもちやきで
あたしに喋り方の似ているその人を
あたしも知ってるその人を
誰よりも大切にしていることを知ってて、


それでも伝えたかった。
前に、進むために。



この気持ちに終止符を打たなきゃ、
あたしはもう誰も好きになれないと感じた。







「お前がもうちょっと、早く生まれてたらな」

いかせんの、台詞。

「ありがとう」の言葉と共に。
あなたのぎゅっとしてくれる、ぬくもりと共に。


年の差を理由にふるなんて、
酷すぎる、と思った。

あたしはどこにも進めなくなった。







だけどあたしは気付いてた。
辛くて惨くて切なくて痛くて苦しいその事実に。

あたしがもっと早く生まれてたとしても
たとえ「彼女」より先にいかせんに出会っていたとしても

それでもきっと、この運命は変わらなかった。



あたしじゃだめだったのは
あたしが年下だったからでもない
彼女より後で出会ったから、でもない。


あたしが、あたしだったからだめだったんだ、って。
あたしが、「まこ」っていう人間だったから
あのひとじゃ、なかったから――――






なにがあっても
どんなことがあっても

地球がひっくりかえっても
爆発したとしても


いかせんの大切なひとは、
いつでもあのひとなんだなってことに


気付きたくなんてなかったな。









本当は、いちばんになりたかった。






2004年02月03日(火)
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