| 2005年03月19日(土) |
秦 河 勝 連載32 |
大三輪逆は炊屋姫の寵臣として秘密を知っていたので穴穂部皇子を殯宮に入れることは断じてできることではなかった。 怒り心頭に達した穴穂部皇子は、蘇我馬子と物部守屋の両名を呼んで大三輪逆は皇子に対して無礼な態度振る舞いをしたので、切り捨てたいと言うと二人とも「御随意に」と言った。
炊屋姫の寵臣大三輪を穴穂部皇子に殺させるのは蘇我馬子の策謀であった。炊屋姫の穴穂部皇子に対する怒りを増幅するためである。 一方、穴穂部皇子は、協力者の支援を取り付けて次期天皇になろうと企んでいたので、何かと邪魔をする大三輪逆を口実を設けて殺そうと考えていたのである。大臣と大連の同意を取り付けた穴穂部皇子は、物部守屋と共に兵を率いて大三輪逆を討つべく磐余の池辺を包囲したが、大三輪逆は本拠地の三輪山に逃れた。形勢不利とみた大三輪逆は夜陰に乗じて、炊屋姫の海石榴市宮に保護を求めた。炊屋姫のかねてよりの寵臣として姫の信頼を受けているという自負と殯宮では、穴穂部皇子の毒牙から姫を守った功績が大三輪逆の拠り所であった。
それに皇位継承に関する故敏達天皇の遺命を書き記した詔勅を炊屋姫へ渡さなければならなかったからである。ところが何時の世にもあることであるが、窮地に陥った人間の足を引っ張って、手柄にしようという輩が現れるものである。大三輪逆の一族の白堤と横山が大三輪逆の居所を物部守屋へ内通したので、物部守屋の兵に捕まり斬り殺された。
寵臣の大三輪逆を失った炊屋姫は穴穂部皇子と物部守屋に対する恨みを心の中に蓄積した。
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