前潟都窪の日記

2004年12月25日(土) 工事会社��

 ▼工事会社
 人がある人に対して敵意を持つ動機にはいろいろある。その動機にも大小さまざまのものがあり,ある場合には、発作的に直ちに殺人行為に駆り立てるる程大きい場合もあるだろうし、心の中に細波をたてただけでやがては消えて無くなるものもある。

 勇が義父に対して敵意を抱いていることに気がついたのは、つい最近のことである。どこか世の中を拗ねたところがあり、およそ情熱とかやる気といったものとは無関係で、常に傍観者的態度をとり、決して自ら進んで事を起こしたことがない男というのが、勇に対して最近社内で定着したイメージである。

 義父の社長今岡研一が出勤してくると、事務所にいる事務員達は慌てて立ち上がり、黙礼をしてからひとりづつ社長室まで行って丁寧な挨拶をする。全員の挨拶が終わるまで社長室の前には行列が出来る。

 たまに、電話で話中の事務員がうっかりしてそのまま電話を続けているとジロリと部屋中を睨み渡してから社長室に入るやいなや雷を落とす。
「田中君、誰と電話しているのかね」
「九州出張所の佐竹さんとです」とお茶を運んできた女子事務員が、おそるおそる説明する。
「電話を止めさせて、田中君を呼びなさい」
 呼ばれた田中が入ってくると説教が始まる。
「田中君。社長が出社されたのに挨拶もせずに、平気で電話を続けているとは何事だね。相手がお客様ならいざ知らず、九州出張所と話をしていたそうではないか。相手を待たせておいて挨拶をすればいいだろう。ものの30秒とはかからないと思うんだがどうかね」
「はあ、しかし・・」
「黙りなさい。弁解は止めなさい。社長が怒っておられるんだから、申し訳ありませんと謝ればいいんだ。もっと素直になりなさい」
「どうも申し訳ありませんでした。以後気をつけます」田中は一方的に叱られて、不服そうな顔をしていたが、これ以上社長の感情を昂らせるのは得策ではないと思ったのか素直に謝った。

 勇はまた始まったかと苦々しい気持ちで田中と社長のやりとりを聞いていた。朝から気持ちが白けてしまってうんざりする。この後、必ず事務所にいる全事務員を集めて説教が始まるのである。しかも同じことを、言葉を変え、表現を変えて長々と続けるのである。

「自己中心的な考え方だから、社長にろくな挨拶もできない。社長に挨拶できないぐらいだから、お客さまにろくな挨拶の出来る筈がない。挨拶をするということは世の中の基本である。それができないような人間は何をやらせても出来ない」とまずこんな調子で説教が続く。


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