前潟都窪の日記

2004年12月08日(水) ベチャ��

 勇はベチャ面作りがうまくいかなかった上に、投げしまで良い餌を富雄に巻き上げられてしまい、面白くない一日だった。勇は家に帰りつくとうっぷんの持っていき場所がなかったので、飼い猫の三毛が勇の傍らへじゃれついてきたのを幸いとばかり思い切り蹴飛ばした。三毛はいきなり蹴飛ばされてギャォーと悲鳴をあげながら、すっ飛んで逃げた。

 勇の面作りは進んで、あとはエナメルを塗り、面の頭に毛をつけるだけとなった。勇はさっきから、面の色を何色にしようかと考えている。赤色か、緑色のどちらかなのだが、装束のことも一緒に考えておかなければ、簡単には決められない。勇は緑色に塗って緑色のシャツを着、黒い袴をはいてみたいと思うのだが、勇の体に合いそうな緑色のシャツも黒い袴も自分の家にはなさそうである。赤なら、岸田の寿美姉のセーターと腰巻きを借りれば、恰好だけはつきそうである。腹巻だけ母親にねだって縫って貰えばよいのだ。ここまで考えて勇は赤色に塗ることに決めた。後は頭髪につける棕櫚の皮を伯父の家へ行って貰ってくればよい。

 いよいよ秋祭りの日がやってきた。
 勇は親友の毅にも内緒で作ってきたベチャの面を被って往来を歩いているベチャの群れの中へ入っていくことを考えると胸がわくわくした。そして何よりも、ベチャ姿で香織のうちへ訪ねて行き、香織を驚かせてやろうと思うと心がはやった。

 勇の町は鶴崎神社の氏子が殆どなので、祭りといえば鬼がでるものと決まっている。鬼は通常小学校4〜5年生の年頃から17〜18才の青年までが、めいめいに作っておいた鬼面を被り、それぞれに意匠を凝らした装束を纏って、町を練り歩くのである。赤色または青色のシャツを着て、色付きのモンペ風のズボンをはき、足には脚絆を巻き手には手甲をする。腰には超ミニスカート風の腰巻きを巻き、腹には金時腹巻をつけている。ほう歯の高下駄を履き丹精して作った鬼面を被る。鬼面には棕櫚の毛で作った頭髪がつけてあり、背中へ長く垂れ流すのである。

 そして手には青竹を六尺くらいの長さに切った棒を持ち、青竹製の棒をひきづりながら歩くのである。青竹の先は割ってあり、通行人を襲う時は青竹を地面に叩きつけて、パンパンと音を出す。このような青鬼、赤鬼が祭りともなれば40〜50匹も出現して町中を練り歩くのである。17〜18才の青年達は町の若い娘達の尻を追いかけ喜んでいるという具合である。


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