徒然なる Short story 集

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【冬の領域】1

2009年02月15日(日)

◇◆◇序章◇◆◇



 少女は、いつも其処にいた。
 広い庭にある、大きな樹の下──眩しい陽の降り注ぐ庭で遊ぶ子供達からはなれ、一人、樹の根元に座っている。
 一人静かに本を読んだり、絵を描いたり、ただぼんやり空を眺めたり……
 時折、庭で転げ回る仲間達に目を向けることもあった。
 その瞳(メ)には、仲間をあたたかく見守る優しさと、羨望。
 そして──言い知れぬ哀しみ。
 少女は、仲間と共にいながら、常に孤独だった。
 たったヒトリ……
 少年はそんな少女を気に掛け、いつしかそばにいるようになった。
 仲間と遊ぶより、少女と共にいることが多くなった。
 少女は微笑む。
 少年は、優しく語りかける──
 少女は少年の肩に頭(コウベ)をあずけ、微睡む……
 微かな寝息。
 微かな呟き──

  ワスレナイデ──

「忘れないよ……」
 眠り、聞こえる筈のない少女の閉じられた眼から、一雫の涙が零れ落ちる。
 それは頬を伝い、そよ吹く風に触れ、氷となる。
 地面に落ち、木洩れ日に反射し、水晶のよう煌めくと、すぐに溶けて消えてしまった。
 ほんの僅かな間。
 一瞬の出来事。
 ただ二人にとっては、触れ合った部分のかすかなぬくもりだけが確かだった。
 それは、交わした言葉。
 交わした約束──



◇◆◇第一章◇◆◇


 ◆温子 PART1◆


「……嘘、だろ?」
 それは、予想され言葉だった。
「おいアツ。朝っぱらからそんな冗談はないだろ〜?」
 受話器ごしの陽介の声は、その口振りとは裏腹に乾いたものだった。
「ホントだよ」
 イライラを抑えながら、あたしは言った。
「こんなこと、わざわざ宿泊先に電話かけてまで言う冗談じゃないわっ!」
 声が詰まる。
「じゃあ、本当に……」
「そう……本当に死んだのよ、あのコ。
 せつ……セッちゃんは……き、昨日……」
 喋る途中から、涙声になとてしまう。
 泣かないように我慢してたのに……
 私が落ち着くのを待っていたのか、陽介は暫く無言でいたけど、
「俺も行く!」
「へっ!?」
「今日午前中の試合終わったら、明日は俺達のチームは試合ない。
 だから……」
「何言ってるのよ! 途中で抜け出せるわけないでしょう!?」
 あたしは彼をなんとか会場に残るよう、説得する。
 というか……負けたら明日の試合はないぞ。





 つづく


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如月なつき [MAIL] [HOMEPAGE]