吉村昭の小説で、最近もう一つ感銘を受けたのが『高熱隧道』だ。トンネルを掘るために危険を顧みず働く男達の物語だ。働くためには動機が必要だ。その動機が社会のために役に立つ…が必要だと私は思っているが、そんなキレイごとで動く人間はわずかでしかない。ほとんどの人は自分の家族を守るための金や名誉のために働く。それがすごいエネルギーになる。その動機なくして社会は成立しないことを教えてくれる小説だった。