吉村昭の小説よく読む。事実を元に書いているので、人間が本当にそんなことするのかと驚愕するからだ。しかもそれは、歴史の表に出ていない、凡人たちのドラマだ。例えば無人島からの脱出劇を描いた『漂流』は、読みながら江戸時代に絶海の孤島からどうやって脱出するのかとハラハラしたが、「まさか!」と思う方法だった。「諦めてはいけない」ということを、これほど思い知らされた小説は初めてだ。