嗚呼!米国駐在員。
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2006年05月24日(水) Work to live? or Live to work ?

ある製造メーカーが、不採算の工場の人員を減らし、同じグループ内である業績好調の工場へ人を振り向けることになった。2つの工場の距離は30マイル。ハイウェイで30分以内の距離である。ところが、勤務地変更を申し入れた従業員50人に対し、了解したのは10%程度、残りは退職を選んだという。

やっぱりアメリカだなあ、と思った。

アメリカ人は平日の夕方以降の家族や地域の時間を大事にする。
近所の人たちとのバーベキュー、子供のサッカーやベースボールの試合、学校の保護者会、全てが平日の午後6時半か7時頃に始まる。働いている親が十分参加できるようになっている。会社帰り、地元のリトルリーグ球場やサッカー場が試合をする子供とそれを見守る親達であふれ返っているのを目にすると、日本では見られない光景に何となく違和感を感じるが、彼らにとってはそれが当たり前の日常なのだ。

つまり、「仕事より家庭が優先」という文化が完全に根付いているので、家族と過ごす時間を犠牲にしてまで、遠くの職場で働く意思などは無いのである。もちろん、全てのアメリカ人がそうであるとは思わないが、勝手に残業が出来ないシステムになっているアメリカでは、日本流モーレツビジネスマンは本当に少数派ではないだろうか。いずれにしても、ほとんどの従業員が定時でピタリと帰っても、世の中が回っているのが現状。


これが日本だとどうなるか。

まず、30分程度通勤時間が長くなることで退職に踏み切るサラリーマンはいないだろう。自分の父親もそうであったが、転勤を言い渡された際、家族と離れて単身赴任という選択肢は普通に見られる。逆に、単身赴任をすることによって、どちらかというと会社への忠誠心を明らかにしているかのような風潮もある。そして、「こうした苦痛に耐え切った代償」というのも、なんと能力評価のひとつになる面もある。

こうして比較すると、単純にアメリカのスタイルが優れていると思われるのだが、現実的には日本で組織に属しながらアメリカ流生活をしていくのは困難だろう。就業後の接待や社内のお付き合い、そういう場に顔を出す事はやはり必要だろうし、日本流であれもこれもとキメ細かい仕事をしていては、とても定時には終われない。


しかし、アメリカ生活も長くなるに従い、ジャパニーズサラリーマンをしていた「あの頃」が懐かしくなる。

当時はあんなに疲れ果てていたのに、何故だろうか。

不思議なものだ。


Kyosuke