樹ラボ...大神 樹

 

 

宴の始末 - 2005年07月18日(月)

本日「姑獲鳥の夏」を観に行ってきました。
アキヒトさんと新宿にて待ち合わせ。

偶然キョウジとも現地で遭遇し、彼女の友達含め4人で並ぶ。

以下感想、未見の方のため反転してご覧くださいませ

いきなりですが最悪。
マジで泣きそうになりました。
なんと言うか…絶対問題ないだろうと思っていたところが全て痛々しくて…

公開前に多くの人の不安材料だっただろうと思われるのがキャストと上映時間の短さだったと思うのですが、僕はまだ京極夏彦作品にハマりたてで、そこまで固定したイメージを持たなかったこともあってか、キャストに違和感は感じていませんでした。
むしろこの人達がどういう風に演じるのかに期待を持っていたのです。

……事実役者の方々の演技は皆とても良かったと思います。
宮迫の木場修とかは実はかなりイメージに近くて嬉しくなりました。
阿部寛の榎木津も原作の表現とは違うイメージかもしれませんがただそれでも「これも榎木津」だと思わせてくれたと思います。

正直役者に対する不満は殆ど無く、あえて言うなら原田知世の京子の時にもう少し狂気を強く出して欲しかったかなと感じたくらい。

上映時間の短さは覚悟はしてました。
バトロワやハリポタみたいに長編を短くまとめると言うことは「可能」なワケだし。
あとは如何にしてまとめ、可能ならば映画のみの要素を盛り込めるかは技量にかかってくるわけですし。

では何が酷かったのかと言うと盛り上がりが一切感じられなかったこと。
例えば京極堂が久遠寺医院にて憑き物を祓うくだり、原作を読んでいる時は緊張感を感じ、次の1行を読むたびにハラハラしました。
ですが映画では悲しいくらいに地味に終わりました。
(細かな疑問を口にするなら、なぜ九字を切らなかったんだろうと思ったり)
梗子の腹が裂けて牧朗が「産まれる」所も、文章から察すれば牧朗が羊水に濡れている事は自明なのに明らかに乾いた身体が横たわっていたのを見た時に理解が出来なくなりました。

ラストシーンも久遠寺医院を炎上させるというオリジナルの演出を加えたのならばそれはきっと最後の盛り上がりを感じさせるためだったのかと思う。
でもどうしたって地味でした。
なにしろ火に巻かれて逃げるシーンがあるわけでもなく、火の中に人が消えるわけでもなく、燃える建物とはあずかり知らぬトコロで関口と涼子のやり取りが行われているのだから。

そして小道具の稚拙さ。
はっきりいってありえない。
プロの集団が作るものなのだろうかと本当に疑問に思った。
話の肝になる無頭児の造形が正直最低としか…無論作り物なのは当たり前ですがその作り物の中に怖さ、不気味さ、そういったものを盛り込めるかが重要なのではないのかと。
しかも石を打ちつけて殺したはずの無頭児が傷ひとつ無いのはどういうことなのかと思ったり。
ラストシーンで涼子が抱えていた赤ん坊がどう見ても布の塊にしか見えなかったのはもう何も言う気が起きなくなりました。

別にエロやグロが好きで沢山見たいと言う気持ちは無いけれども、
それらが話の中で重要なシーンを形作るために必要ならばR指定にしてでも盛り込むべきだったと感じます。
(京子の経血や内藤の情事や胎児の撲殺、癲狂院の暗喩、もし無頭児の造形がR指定にひっかかるという理由だったのならば)

久遠寺の女性3人のその後が分からなくなった事は最後のとどめでしたね;

映画館を出たときにとてつもない徒労感に襲われて4人揃ってやりきれない気持ちになりました。
怒りすら湧かずにただ、映画を観に行く日を待っていたことや、この日も2時間前から並んで、期待や不安を冗談交じりに話したことや、そういったことが全て無駄だったんだなあと。

パンフレットの中にあった京極夏彦氏のコメントで
「過去にも幾度か、この難関(映画化)に挑戦された方はいらっしゃったようですが、見事玉砕されたようです」
とあったけれど、映画化できなかったことを「玉砕」と呼ぶなら今回の映画は「討死」なのかと。

もし、もしこの日記を読んだ方で、今後姑獲鳥を観に行く予定のある人、もしくは観た上で面白かったと思った方がいたとしたならば大変不快な想いをさせたかと思います。
ただ、これは僕が思った正直な感想です。
どうしようもないです;

最後に、映画の中でよかったと思ったことを少し。

・さっきも書いたけど役者が良かった↓
・堤真一の京極堂、意外なほどしっくり来ました。
・阿部寛の榎木津は飄々としたソレでいて少しズレているような感じは見た目のイメージは違えど見事だったと思います。
・田中麗奈はハマり役みたいでしたw
・永瀬正敏の関口も情緒不安定な雰囲気が良かった。
・宮迫は要所要所を木場というキャラを見事に演じて今回の映画の中で僕としては一番イメージに合致しました。
・原田知世の儚げな綺麗さが素敵でした。
・目眩坂のセットは良いと思いました(スポットライトの演出は好きになれないけど)

パンフに「京極堂シリーズ第一弾」とあったけど二弾は無いんじゃないかなあ…
このキャストには魅力を感じることが分かったけどこのまとめ方じゃ滅ぶと思う;





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