| 2002年06月22日(土) |
今更ながら大学選手権� ^‖臾邉� |
亜大の優勝で幕を閉じた大学野球選手権。今更という感じですが、数回に分けて、私が感じたこと見たことを書いていきます。第1回は優勝した亜大について。
私は恥ずかしながら、東都大学リーグを生で観戦したことがない。春の大学選手権や秋の神宮大会で、東都リーグ代表の試合は見たことあるが、さほど印象に残っていない。昨年の春は日大、秋は駒大を見た。目立った選手はいたが、それは個人の話。チームとしてはあまり印象には残らなかった。しかし、今大会の亜大は、私に強烈な印象を残してくれた。
初戦(亜大はシードのため2回戦)が終わったあと、1年生ながら3番打者として活躍した松田選手に話を聞いた。会話の中に幾度となく「全力」「思い切って」という言葉が出てきた。「どんな選手を目指している?」と訊けば、「常に全力でプレーできる選手」。「打席では何に注意している?」と問えば、「来た球を思い切り打つだけです」と、こんな具合だ。 私は話を聞きながら、もっと面白いこと喋ってよと思っていた。けれど、次の3回戦で松田のプレーぶりに注目していると、彼が話した言葉に深い意味があることが分かった。そして、松田のプレーを見ながら、これが亜大の野球なのかと感じていた。
亜大の選手は攻守交替のとき、必ず全力疾走をする。といっても、あの土佐高校のように、ガムシャラに走るわけではない。見ているものに、心地良さを与えるスピードで、攻守交替を行う。じつは初戦では、この全力疾走に全く気づかなかった。「全力でプレー」と口にした松田の言葉を頭に入れて、3回戦を見ていたときに、気づいたことだった。 三塁を守る松田は、自軍のベンチが三塁側だったとしても、そのほんのちょっとのわずかな距離でも、全力疾走で自分の守備位置につく。でも、私が一番驚いたのは捕手の小山だ。三塁よりも近い、捕手の守備位置まで全力で走るのだ。今まで何試合も野球を見てきたが、全力疾走で守備位置につく捕手はこのとき初めて見た。
小山以上に驚かされたのが、1年生の大河原だ。これは攻守交替の話ではない。ネクストバッターズサークルでの大河原の動きに、私は衝撃を受けた。 19日の早大との決勝戦。1−1で迎えた7回裏。2死二塁の場面だった。打席には7番近藤。8番を打つ大河原はネクストで近藤の打席を見つめていた。いや、私には睨んでいるように見えた。大河原は、今から1500m走でも始まるかのようなスタート体勢で、近藤を睨みつけていた。左足を右足よりも1歩前に出し、いつでもスタートを切れる体勢を取っていた。 近藤が3球目にファウルを打つと、大河原はボールがバットに当たった瞬間にネクストを飛び出し、数歩、バッターボックスに近づいた。彼は、近藤が安打を打ったとき、近藤のバットを二塁走者に邪魔にならないようにどけること。二塁走者が本塁に走るときに、どちらにスライディングをすればよいのか、一塁側なのか三塁側なのか、返球がどちら側にそれるのか。ネクストにいる打者が指示しなければいけないことを、素早く的確にやる準備をしていたのだ。
だいたいネクストにいる打者は、次に回ってくる自分の打席のことで頭がいっぱいで、二塁走者への指示など忘れていることが多い。前の打者がヒットを打ってから、ようやく自分のすべき仕事に気づくのだ。けれど、大河原は違った。ネクストにいる段階から、打者が打席にいる段階から、すでに走者への指示が自分の仕事だと認識していた。
奇しくも、この大河原も松田と同じ言葉を口にしていた。「全力でプレーすることしか考えていません」。彼らふたりは、「打つ守る」というプレー以外のところでも、自分の言葉を実践していた。 私は決勝戦の最後になって、ネクストの大河原の動きに目がいったのだが、おそらく大河原に限らず、亜大の選手全員が同じような動きをしていたのだと思う。
というのも、3回戦で当たった九州共立大の新垣投手に対し、選手全員で新垣を揺さぶっていたからだ。ランナーに出れば、リードを広く取り、早い牽制を必ずさせる。盗塁のサインが出ていなくても、走るフリ、いわゆる「第二リード」を全員が行っていた。見るからに足の遅そうな小山までもが、「第二リード」をしっかりととり、新垣にプレッシャーをかけていたのが驚きだった。 選手全員で意識を高め、同じ目的を持ち、そのためにやるべきことを実践する。だから、ネクストでの大河原の動きは、彼特別のものではなく、亜大の選手全員が行っていたことだと思うのだ。
6大学でプレーしているある選手が、「亜大の野球部は大学野球の中で一番厳しい」と言っていたことがある。それは練習だけでなく、寮生活や規律など、色々な面を含んでの言葉だと思う。 九州共立大との試合後、「足で新垣を揺さぶりましたね」という記者の言葉に、亜大の内田監督は「うちは大きいのは打てないですから、ああいうやり方でしか勝てないんですよ」と話していた。試合に臨む前から、新垣攻略法は「足を絡めて、投球のリズムを崩すこと」と考えていた。選手はその考えを、頭だけに終わらせず、しっかりと実践して見せた。
監督の考えを、グラウンドで忠実に表現できる亜大の選手たち。日頃の練習でどれだけ高い目的意識を持ち、どれほど厳しい練習をこなしているのだろうか。「大学野球の中で一番厳しい」と言ったある選手の言葉が、大学選手権での亜大の野球を見て、私なりに理解ができた。 亜大は非常にレベルの高い、緻密な野球で、2年ぶりの優勝を飾った。
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