加藤のメモ的日記
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2023年09月11日(月) ケーシー高峰 享年85

死ぬとわかっていたから、最期の病気のことは口にしなかった

「ケーシー高峰は、いつも周囲の人を笑わせようとし続けました。舞台に立てば会場は爆笑の連続。どんな偉い芸人でも師匠のあとに出るのを嫌がったものです」ケーシー高峰さん(2019年没)のことを後輩芸人「おぼん・おぼん」のおぼんさん(72歳)はこう懐かしむ。ケーシーさんの医事漫談ネタには、自分の病も入っている。2005年には舌がんで舌の3分の1を切除する。

「師匠は喋れないのにパジャマ姿で病院を抜け出し会場にやってきた。僕は師匠のネタが好きで覚えていましたから『ケーシー高峰とカルーセル麻紀の診療所』をやる師匠の横で、代わりに喋ってコントをしました。回復してからは、すかさずがんネタも舞台にかけた。師匠にとっては老いも病もネタのうち。でも肺気腫だけは、ネタにしているのを見たことはありませんでした」

死因となった肺気腫を発症したのは、死後1年前の2018年だった。「肺気腫を病んだ頃、沖縄でのNHKラジオの公開録画ご一緒したのが最後になりました。師匠は一歩一歩の足取りが重く、空港ロビーから機内までたどり着くのにもぜえぜえと苦し気に喘ぐ。それでも弱音は吐きません。辛いんじゃないかと少しでも思われたら、周りの人が笑えなくなってしまう。だから一切、弱音を吐かなかった

医者一家に生まれ、一度は医者の道を志したケーシーさんには、この病で自分が死ぬことになるとわかっていたはずだ。そして舞台に上がると漫談をやりきった。あまりの壮絶さに舞台袖でおばんさんは落涙したという。「肺気腫は、末期になれば排泄するだけでも息が苦しい病気です。真綿で首を絞められるような状態で漫談をやりきったというのは信じられない」(ホームオン・クリニック野田病院長)

最期まで人を笑わせた爆笑王が、空の上で「グラッチョ」と言ってニヤニヤする姿が目に浮かぶ。


『週刊現代』7.10


加藤  |MAIL