加藤のメモ的日記
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2019年09月22日(日) 食道がんを発見し、手術、退院するまで

私が東葛辻中病院を取材のために訪れたのは、昨年12月半ばのことだった。この病院では2,018年5月から「AI内視鏡画像診断支援システム」を導入した。12000枚以上の胃がんの内視鏡画像に、内視鏡医が病変の範囲をマーキング。そのデータを独自のディープラーニングシステムでAIに学習させたという。

50代になり、老いには抗えないと感じるが、この歳まで大病もなく、毎年の健康診断でも異常は見当たらなかった。だから、「AI診断を体験してください」という編集部の依頼にも「結果は『異状なし』だろうから、記事が面白くないのでは……」と心配していたほどだった。ところが、内視鏡カメラによる検査を体験した後、医師から聞かされた言葉は想定外のものだった。

「胃より食道に問題があります。炎症で腫れているところがある。組織検査をして悪性がどうかを判断します」検査結果を見ると、AIは確かに私の病変を”異常個所”としてマーキングしていた。だがこの時はまだ「大したことはないだろう」と高を括っていた。しかし数日後、取材でお世話になった病院の広報担当死者から連絡が入った。「担当医師から、「ご本人と直接話したいと。できるだけ早く病院に来てください」

もし人間の医師だったら……

不安な気持ちで再び訪れた病院の診察室。一対一で向き合った医師が言った。「病理検査の結果、がんが見つかりました」初期の食道がんで大きさは直径1センチほど。覚悟はしていたがショックだった。だが、、内視鏡手術で完治する可能性が高いと言われて、少しだけ落ち着くことができた。

そういえば、夏ごろから時折、白米を食べると胸がつかえる感じがしていた。後で調べると食道がんの初期症状の一つだった。再検査、手術は専門病院であるA病院で行うことに決めた。東葛辻中病院と同一のAI画像診断の試験をしているので、検査情報がスムーズに移されることを期待した。1月15日に入院し、翌日には手術、事態は急テンポで進んでいった。

手術は無事終わり、1月下旬に退院した。最終的な検査で「転移は100%ない」と診断され、ほっと胸を撫で下ろした。今後は定期的な内視鏡検査で、再発がないかチェックすることになる。「AI診断のおかげで命拾いした」とまで言えるかどうかはわからない。AIでなくとも熟練した医師であれな発見できるものだとも告げられた。

しかし、人間にはどうしても”ミス”がある。未熟な意思が画像診断を担当したり、あるいは医師のコンディションによってがんが見逃されていた可能性はゼロではない。それを考えれば精度の高い診断に救われたのかもしれない。今のところ医師をアシストするのがAIの役割というが、今後担う領域は飛躍的に広がるだろう。医療の進歩を実感した貴重な体験だった。

『週刊ポスト』3.1


加藤  |MAIL