加藤のメモ的日記
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| 2014年10月05日(日) |
年金の「株」投資拡大 |
安倍政権が計画 損すれば大穴 国民にツケがまわって来る
老後の生活で大切な国民年金や厚生年金。130兆円にものぼるその積立金を、安倍内閣は株式市場で大々的に運用しようとしている。利益もあれば損もあるのが株式市場。積立金に大穴があく危険もあるのになぜ。
急先鋒を担当大臣に
今回の内閣改造で世界の投資家が最も注目したのが厚生労働大臣のポスト。厚労省が所管する年金積立金管理運運用独立行政法人(GPIF)の方針を左右するからである。「できるだけ早く方針を見直したい」と公言する安倍首相が選んだのは、塩崎元官房長官だった。年金積立金の株投資拡大を主張する急先鋒である。自身も東証一部上場の23銘柄、計86.000株以上を保有している。
見直しの口実は「年金財政の長期的な健全性確保」である。しかし、首相は株価対策の本音を隠さない。例えば今年5月にロンドンの金融街シティーで演説し「日本株を買ってください」と訴えて、「世界最大の年金基金の改革」を約束している。なにしろGPIFの株での運用比率を1%増やすだけで1.3兆円が動き、その情報だけで株価が上がる。
過去には17兆円の損
実は、GPIFは世界的な金融危機に波及した2008年のリーマン・ショック前後に国内株で10兆円、外国株で7兆円もの損失を出した。株への投資を増やすということは、株価下落で損失もいっそう大きくなるということである。歴代政権はたびたび公的年金の積立金を株価対策に利用してきたが損失を抱えても責任を取った大臣は一人もいない。
株投資の拡大には、市場運用に精通した外資系銀行の専門家からも「率直なところ、自分が将来受け取る年金も心配になっている」(Jモルガン・チェース銀行・佐々木融氏、ロイター)との声が上がるほどである。損失が出たら年金受給額を減らすか、年金保険料を増やすか、増税か。いずれ国民にツケが回されるだろう。
国際的に特異な立場
政府は外国の年金運用も株が中心であるかのように言うが全く違う。金融大国のアメリカでさえ、基礎的な公的年金は、米政府が元本と利子を保証する「非市場性国債」飲みで運用されている。よく政府が株投資の割合が高いとして引き合いに出すカリフォルニア州職員退職制度(カルバース)などはいわば公的年金に上乗せされる企業年金である。そのカルバースも世界金融危機で資産の3割もの損失を出し、危険な運用からの撤退を進めている。外国と比べても極めて危ない橋を渡ろうとしている。国民の財産を博打に使っていはいけない。
『週刊朝日』9.28
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