加藤のメモ的日記
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2014年06月26日(木) ストーカー

突然、「キレイですね」
「県警内部では今頭を抱えています。近年、警察全体でストーカー事案に力を入れてきた。実際、県警でも4月から子供女性安全対策課内のストーカーなどへの対応を目的とした『人身案全対処理係』という新部署を設置したばかりなんです。その矢先に起きた前代未聞の不祥事です」愛知県警幹部は苦々しい顔で語る。それもそのはず、県警現役頸部の高井幸次(45歳、仮名)のストーカー行為が発覚したのだ。

高井がつけまわしたのはまったく面識ない20代の女性会社員。1年ほど前から名古屋駅周辺で女性をたびたび見かけるうちに、高井は一方的に好感を抱くようになる。そして思い切った高井は、女性にアプローチを始めたのだ。駅構内で待ち伏せし、突然「キレイですね」と女性に声をかけたり、メッセージを書いたメモをムリヤリ渡そうとしたりした。だが、女性の方は当然、高井への好意はなく、気味が悪いと思っただけだった。女性は今年3月「男につきまとわれている」と同県警中村署に相談した。

これを受け、捜査員は名古屋駅構内で張り込みを始める。会社からの帰路、女性がいつの乗り換えのために通るコンコースを歩いていると、高井が姿を現した。おもむろに女性に近づく高井。それに気付き、すかさず捜査員に目くばせする女性。高井が声をかけようとしたその瞬間、捜査員が彼の前に立ちふさがった。「警察です。ちょっとご同行願えますか」最初驚いた顔を見せた高井だったが、やがて諦めたように、素直に従った。「任意で事情聴取したんですが、身元を確認して捜査員は仰天したそうです。同じ愛知県警の同僚で、しかも公安警察出身のエリート警部だったからです」(県警幹部)

公安出身。一般人にも身近な交番の警察官やドラマでおなじみの捜査一課などと違って、その存在が謎のベールに包まれている公安警察。いったいどんな捜査をする集団なのか。元公安捜査員が解説する。「危険人物や組織を監視し、その動向を把握することが主な仕事です。名目『公共の安全』を守るため。比較的優秀な人材が集められる傾向にあるといわれている。共産党、極左、労組、右翼などを捜査対象としています。外事課で他に外国人スパイやテロを扱っています」

公安はストーカーと同じ

公安は尾行や身辺調査など潜行調査のプロフェッショナルだ。鍛えた技術を使えば、ストーキングなどお手のものといえる。『日本の公安警察』などの著書のあるジャーナリストの青木理氏は次のように語る。

「左翼やカルト集団などを監視するとき、公安はまず協力者という名のスパイをつくるのが常套手段です。そのための方法はいろいろあるのですが『基礎調査』から始めるのが普通。仕事はなんで、交友状況がどうで、男女関係や酒癖、借金の状況などを調べあげる。自宅前を張って尾行したり、住民票などを入手して徹底的に捜査します。言うなれば、公安の仕事は基本的にストーカーと同じ。今回のケースでも同じことをしている恐れはあり、もし職務権限を使っていれば、問題の根は深いと思います」

女性のことを気に入っていた高井は操作の基本中の基本、尾行をしてまずは住所を突き止めたはずだ。そして次に行なうのは張り込みである。家族と同居しているのか。恋人はいるのか、毎日の出勤、帰宅時刻はどれくらいなのか…。「施設課はない金なので、日中の張り込みはできないでしょうが、出勤前の早朝に彼女の家に立ち寄っていた可能性は充分ある」(県警幹部)

さらに不気味なのは、捜査員がその気になれば、住民票や戸籍などの公的資料も入手できることだ。もちろん捜査目的以外でそれらを取得するのは職権の乱用だが、元公安刑事として役所に顔のきく高井にとっては、より容易なことだったに違いない。それによって女性の来歴や家族構成などは、完全に丸裸になる。それ以外にも、まだ高井にできることがある。「例えば銀行口座の取引状況や携帯電話の発着信記録の入手。厳密には捜査令状がないとできないんですが、強制力のない『操作関係事項紹介書』というものがある。これはあくまで任意の照会なんですが日本の企業はお上に弱いので断らない。公安の場合、もっと裏ルートで手に入れている節もあります」(前出・青木氏)

もちろんカード会社の利用明細も同じように入手可能だ。高井がその気になれば、彼女の年収はもちろん、毎月何にいくら使って、どこで買い物をしているかまで、知ることができる。高井が今回、どこまでそういった「元公安刑事」の経験と特権を使ったのかは、定かではない。恐いのは、今後書類送検された高井が素直に罪を認めた場合、起訴されて公開の裁判で裁かれる可能性はほぼないことだ。つまり、高井が実際何をやったかは、永遠に闇に葬られることになる。公安の捜査手法をストーカーに悪用されたら、女性としてはたまったものではない。愛知県警は、高井の犯行様態をすべて明らかにするだろう。


『週刊現代』6.14


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