加藤のメモ的日記
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2014年06月08日(日) 官々諤々

電力会社値上げ救済の愚

原発再稼働の遅れを理由として、電気料金再値上げが必要だという議論が始まった。電力会社やそれを支援する一部全国紙のキャンペーンだが、その言い分は本当に自分勝手で見苦しいものだ。電力会社は、経産省を使いながら毎夏恒例の「電力不足」キャンペーンを必死になって展開している。原発再稼働を認めないと電力不足でとんでもないことになるぞという脅しだ。原発の必要性をアピールして再稼働につなげる、そしてもしそれが遅れた場合でも料金値上げの口実に使おうという作戦だ。

しかし、原発が動かなくて電力会社の経営を苦しくなると、なぜ値上げになるンか。電力会社は、原発が動かないのは天災のような不可抗力だと考えているが、それは全くの間違いだ。世界中で原発の安全規制が年々厳しくなる中、日本だけがその規制強化を怠ってきたが、そのサボタージュの推進役が電力会社だったことは原子力安全委員会の斑目委員長(当時)が証言している。みんなで集まって、日本だけ規制強化の適用を逃れる方法を検討していたというのだ。

原子力安全・保安院は、中越沖地震後に全原発に免責重要棟の建設を支持したが、実行したのは東電の福島第一などごく一部の原発だけだった。いかに電力会社がやるべきことを怠ってきたかがわかる。今日電力会社が直面している安全規制の強化は、遅すぎたものであり、しかも電力会社は基準の甘さを知りながら、対応を怠っていたのである。さらに、原子力規制員会の「想定する地震の大きさを示せ」という指示を電力会社は談合して無視した。再稼働審査の遅れの主因は、電力会社の対応にある。

またふた事目には、原発推進は国策だったとうが、強制ではない。6月の東電の電気料金は沖縄電力の料金を超えることになったが、沖縄電力は原発を保有していない。他の電力会社は沖縄電力のように、原発なしで進めばよかったが、建設コストが高い原発を作った方がより大きな利益が出るという総括原価方式の甘い蜜に釣られて、とんでもない間違いを犯したのだ。

原発を選んだのも、安全対策を怠ったのも、新たな基準への対応が遅れたのも、すべて電力会社の責任である。少なくとも消費者にその責任はない。それなのに、原発再稼働ができないことを理由に料金値上げを求めるのは筋違いも甚だしい。北海道電力、九州電力、関西電力などが経営難に陥っているが、値上げによる救済ではなく、電力会社が自らの責任で対応すべきだ。それは何を意味するのか。

答えは破綻処理である。破綻処理により、経営者の責任が問われる。多くの場合クビだ。株は紙きれ。株主責任である。銀行の債権も大幅カット。貸し手責任だ。電力会社は身軽になり一気に再生する。被災者への賠償責任問題もないから、東電のような難しさもない。電力会社の場合、地域独占のおかげで顧客は逃げないから最も再生しやすい。ANAと競争するJALより容易だ。もちろん、破綻処理しても電力が止まる心配はない。

米国では、ごく普通に大手電力会社が破綻処理される。先月もテキサス州のエナジー・フューチャー・ホールデングスが負債4兆円を抱えて米連邦破産裁判所に破産法11条の申し立てを行なった。電力破たんの引き金は、経産省に引いてもらおう。料金値上げを認めなければ破綻につながる。経産省は電力会社と癒着し、福島の人々や国民に迷惑をかけてきた。一度ぐらい国民のための政策を実施してもらいたい。


古賀茂明


『週刊現代』 5.31


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