加藤のメモ的日記
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2014年05月29日(木) 高血圧は気にしない

みんな騙されていた。健康診断と人間ドッグの不都合な真実。

血圧147でも健康。大きな反響を呼んだ新「健康基準値」を糸口に、医療の暗部と医者の本音を暴く。健康の数値に振り回されるのは、もう終わりにしよう。

新「健康基準値」を作った張本人を直撃。人間ドッグ学会理事長がついに告白。「高血圧なんて、本当は気にしなくていい」―だったら、降圧剤は必要ないのか?

無理に下げるとボケる

例えば血圧が130を超えたらすぐに「お薬を飲みましょう」と言う医者ない医者とは思えませんね。吉田茂元首相は、終戦直後に、マッカーサー元帥と交渉していた頃、血圧が300を超えることがあったそうです。高すぎて、普通の水銀血圧計では測れなかった。アメリカやソ連との駆け引きでいつも気を張っていたからでしょう。しかし、「バカヤロー解散」で総理を退いた途端、一気に150まで下がったそうです。

私も足利赤十字病院の院長だった頃はいつも血圧が180前後で、心配事があると200を超えることもありました。でも、院長を辞めてからかなり良くなった。83歳になった今でも、ピンピンしていますよ。医学界では病気の基準値を設けて、病気の健康の境界線を引いたつもりでいます。しかし、それがすべてではないと思うのです。

何か事情があるかもしれないので、血圧が高いからといってすぐに薬を飲ませるのではなく、様子を見たほうがいいこともある。昔は、場合によっては乳糖などでできた「偽薬」を出すこともありました。偽薬を「血圧の薬ですよ」といって飲ませると「ああ、よかった」と安心して血圧が下がる人もいるんです。今そんなことをしたら、とんでもない騒動になりますがね。

それくらい、血圧というものは精神的なものに左右されるのです。確かに以前は、高血圧はこわかったですよ。我々が医者になった60年前は、日本人には脳出血が非常に多かった。ところが、今では栄養状態が良くなって血管が丈夫になり、血圧が上がってもそう簡単に血管は破れなくなった。むしろ血圧が下がった時の方が危ないこともあるのです。

ビルが古くなって水道管の中にゴミが付いたらポンプの圧力を上げないと水が循環しなくなる。血圧もこれと同じで歳をとって血管が詰まりやすくなれば自然と上がる。とくに人間は、脳が心臓よりも高いので、脳に血液がいかなくなると深刻ですよ。駆け出しの医者が「血圧が高い、大変だ」ということでおじいさんにたくさん降圧剤を出すと、脳に血がまわらず、あっという間にホケてしまう。人間の脳に特有の前頭葉は、感情の制御を司っていますから、前頭葉が衰えてしまうと、若い頃は真面目だった人でも自制が効かなくなり、例えばすぐ女性の体を触るようになる、といったことがあります。下手に薬で血圧を下げようとすると、そうした弊害が出てくるわけです。

だから、数値にはこだわらない方がいい。本当に大事なのは、医者が経験を積むことです。血圧が高くても健康な人はいる。上司に怒られたんじゃないかとか、悩みごとがあるんじゃないかとか、医者はそういったところまで目を向けなければなりません。それなりに経験のある医者なら、よく患者さんと話をして、誤解を受けないようにしながら、時には様子を見るということも実践すべきです。

「この数値を超えたら薬を出さなきゃけない」と思っている医者はまだまだ駆け出しですよ。とはいえ、私も現場にいた頃は1日100人以上の患者を診るのに精一杯でしたから、現実的には難しいのかもしれません。だからこそ、基準値や薬に頼る医者が増えるんでしょうね。


『週刊現代』5.24


加藤  |MAIL