加藤のメモ的日記
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2014年03月28日(金) 東大までの人と東大からの人

合格すれば将来はすべてバラ色。日本中の成績優秀な学生がそう信じて受験する最高学府・東京大学。だが合格したあとに待つのは安穏な生活どころか究極の格差社会だという。その実態とは。

東京の有名校の卒業生に限って、互いに『鈴木先生〜』『高橋先生〜』とか呼びあったりする。自分たちは将来、医師や弁護士、政治家や研究者になると大学入試前から自然に意識して育ってきているんです。それもそのはずで、彼らの親はほとんどが東大卒。東大教授の息子もゴロゴロいる。僕らが『へえ、これが安田講堂か』『これが東大の図書館か』と感心している横で、そんなもの見慣れたのだというように、スイスイ歩いて行く奴らがいる。息をするように自然に、当たり前のこととして東大背になった奴らに、僕らが追いつけるわけがない』

本当に、東大生の親には東大卒が多いのか。公式の統計は存在しないが、東京大学総長が任期中に取り組み諸課題をまとめて公表している『行動シナリオ2015』には、東大の抱える問題点の一つとして、「上層ノンマニュアル」の子弟が一貫して70%以上を占めることが挙げられている。「上層ノンマニュアル」とは聞き慣れない言葉だが、医師や弁護士、大学教授などの専門職や、大企業、官公庁の管理職、中小企業の経営者を指すという。つまり、東大生の家庭環境は7割がた、似たり寄ったりのエリート家庭ばかりで、多様性がないということなのだ。また、東大学内の学生生活実態調査によると、保護者の50%が、年収950万円以上であるとされる。こうした親の中に、東大卒業生がかなりの割合で含まれることは想像に難くないだろう。

東大思考を抜け出せ

東大経済学部在学中に起業し、企業向けにインターネットで誹謗中傷対策サービスを提供しているベンチャー企業・エルテスで代表を務める菅原氏はこう話す。「東大生には、すでに世間で認められているものになりたい、という人が多いと思いますよ。言い換えればそれは、ベンチャーには向いていないということだと思います。そもそも、東大生には親の影響を強く受けているという人がかなり多いのです。自分なりの価値観だけで判断できる人材は少ない。やはりマザコン的な人が多いんです。せっかく東大に入ったのに、なんで大手に行かないの、なんで起業しちゃうのと言われる」

菅原氏の両親は幸い、そうしたことは言わなかったというが、多くの東大生の親は自分の子供が、官僚や医師になったり、大手企業に就職するなど、既存の価値観の中で成功することをよしとしている。だが、菅原氏はそれでは今後の日本社会を発展させる原動力にならないと、指摘する。

「日本は成熟社会になったので、これまでのように国家が示した目標に向かって努力する能力よりも、将来性や世間の評価が不確実なものをマネージメントしていく能力の方が重要視されるべきだと思うのですが、東大卒でビジネスをしている人と話をしても、そういう意識の人は少ないです。結局それは、日本社会全体の価値観を反映していて、銀行や官公庁のような非常に安定した場所にいる人が『ベンチャーを起こすべし、リスクを取れ』と言って、自分で矛盾を感じていない滑稽さが、日本にはありますよね」前出の安富教授も、「典型的な東大型の欺瞞言語に縛られた人材が日本社会にマイナスの影響を与えている」と指摘する。

「30年前のソニーに東大出の責任者なんてほとんどいなかった。シャープでもパナソニックでも、昔は根性のすわった、身体性に富んだ人々が企業を動かしていたんです。ところが30年前くらいから東大生が次々とこうした企業に入り出した。すると企業はどんどんダメになっていった。

東大卒は、与えられた条件の中で自分に最大のメリットがあるような答えを出すのが本当にうまいんです。環境問題から提起して、いつの間にか、だから自分が重役になるべきという答えを出す。中国の台頭を理由に、社長になるべきは自分だ、という結論が出てくる。そういう巧妙なプレゼンができるんです。しかし、上司に引き立てられて、やがて自分がトップになった時、東大卒にできるのは、トップの地位を維持する理論をこねくり回すことばかり。結局、組織は死に体になっていく」

そんな東大色に染まりきれない、普通の高校出身者だからこそ、チャンスはある。彼らにとって、学生生活はやや苦しいが、その後は既存の価値観にとらわれず、東大に足りないと言われるベンチャースピリットを持ち、独自の道を見いだしていける可能性があるからだ。東大からの人になれるかは、東大を飛びだしてみるまで分からないのである。


『週刊現代』3.22


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