加藤のメモ的日記
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秘密保護法案 指定対象絞り「原則公開」確実に
◆参院で文書管理の論議を深めよ
日本にも他の先進国と同様の機密保全法制が必要だとの意志が、明確に示されたと言えよう。安全保障に関する機密情報を漏洩した公務員らへの罰則を強化する特定秘密保護法案が、衆院本会議に緊急上程され、自民、公明の与党とみんなの党など議席の7割もの賛成多数で可決、参院に送付された。法案修正で合意していた日本維新の会は採決に反発し、退席した。維新の会が賛成票を投じなかったのは残念だが、与野党の枠を越えた多くの支持によって、衆院を通過したことは評価できる。
◆日本版NSCと両輪だ
ただ与党とみんな、維新がまとめた修正案に対する審議は十分ではない。「知る権利」が制限されることなどへの国民の懸念が払拭されたとも言い難い。政府・与党は参院審議で、幅広い支持を目指し、制度の運用のあり方も丁寧に説明すべきだ。北朝鮮の核ミサイル開発や中国の軍備拡大など、日本の安全保障環境は厳しさを増している。
衆院国家安全保障特別委員会で、安倍首相が「国民の安全を守るため情報収集が極めて重要だ」と述べたのはもっともだ。安倍政権は、外交・安全保障政策の司令塔となる国家安全保障会議(日本版nsc)を創設する方針だ。同盟国や友好国と重要情報の交換・共有を進めるには、機密が漏洩しない法制を整えることが必要である。
日本版nscと機密保全法制は、政府の戦略的な意志決定に欠かせない車の両輪といえる。法案をめぐる最大の論点は、政府が恣意的に機密指定を拡大し、都合の悪い情報を秘匿し続けるという懸念が拭えないことだった。首相はそれを誤解だとし、指定範囲が法案の別表に限定され、かつ指定基準も有識者の意志に基づくなど恣意性を排除する「重層的な仕組み」だと主張した。
特定秘密は原則30年で解除される。内閣の承認を得て指定が継続されたとしても、暗号や情報源など7項目の例外を除いて「60年は超えられない」と修正した。首相は30年を超えて指定を継続する情報は、7項目に限ることを基本とするとも表明した。審議を通じて、政府の考え方が明確になり、指定期間もより限定的になったのは確かだろう。
◆恣意的判断の排除を
それでも官僚機構は、「事なかれ主義」の発想で秘密指定の対象を拡大し、解除にも慎重になることが予想される。現在、政府が保有する特別管理秘密文書は42万件にも上っている。その9割は日本の情報収集衛星に関する情報だというが、特定秘密に移行する際は、さらに対象範囲を絞る努力をすべきである。特定秘密が大量になれば、政権交代や内閣改造によって行政機関の長が変わっても、秘密指定をいちいちチェックし、解除することは物理的に難しい。官僚が特定秘密を抱え込まない仕組みを工夫することも肝要だ。
秘密指定の妥当性を検証する第三者機関の設置について、首相は米国の国立公文書館にある情報保全監督局などを参考に、設置すべきだと考えていると答弁した。部外者が特定秘密をチェックするのは無理がある。情報漏れのリスクも生じる。第三者機関を設けるならば、米国にならって行政の内部組織の方が適切だ。修正案で、秘密が排除された情報は、一定期間後に原則公開とされ、後世の検証が可能になるように改善されたと見ていい。
文書の公開や保存、廃棄のあり方は大きな課題となる。民主党が主張するように情報公開のルールを整備し、機密をめぐる訴訟で裁判所が対象文書を見ることを可能にするのも一案ではないか。国会の特定秘密への関与については、与野党が秘密会の運営など議員立法で規定すべきだ。
◆「知る権利」どう担保
法案には取材、報道の自由への配慮が明記された。報道関係者の取材行為は違法または、著しく不当でない限り、罪に問われないとした点は前向きに評価できる。一部の野党がこの法案を「国民の目と耳、口をふさぐ」「国家の情報を統制し、日米同盟への批判を封じ込める」と声高に非難しているが、これは的外れである。だが、公務員が萎縮して取材に応じず、報道機関が必要な情報を伝えられなくなる恐れは残る。安全保障のための機密保全と知る権利のバランスをどうとっていくのか。この問題も参院で掘り下げるべきテーマだろう。
『読売新聞』11.27
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