加藤のメモ的日記
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2013年10月02日(水) 東京五輪バブルの正体

2020年 開催決定 歓喜に沸いた日本列島…だが手放しで喜べない

本当に儲かる人 損する人

9月7日、アルゼンチンで行なわれたIOC総会で、ロゲ会長が2020年の五輪開催が、東京に決まったことを発表した。その瞬間、日本の招致委員会たちは喜びを爆発させた。地球の裏側の日本列島も歓喜に沸き、経済効果は3兆円、いや6兆円だ、アベノミクス4本目の矢だ、と期待感を膨らませた。

だが、一週間たつと、五輪開催を喜ぶ温度差が巷では徐々に広がりつつある。東京五輪といっても、大阪には恩恵がまわってくるのは最後の最後だからと、大阪では懐疑的。期待できないという。ではどんな人たちが東京五輪で儲かり、誰が損するのだろうか。

「まず大喜びしているのは、霞が関の官僚と永田町の政治家たちでしょう」そういうのは現在シンクタンクに勤める元官僚。「五輪関連という題目さえ唱えれば、予算がつくからです。新国立競技場や選手村、各競技施設の建設などが見込まれていますが、このほか、老朽化した首都高速道路やトンネルの改修などもあります。予算がつけば利権も生まれ、官僚や政治家は甘い汁を吸うことができます」

経済評論家の杉村氏もこういう。「東京五輪決定で政府は、すでに発表済みの国土強靭化計画を進める大義名分を得たことになります。つまり全国でどんどん公共事業をやれる。これから五輪バブルが始まるのは間違いありません」この五輪バブルの中心地は東京湾岸地区。会場はここに集中するので、開発を行なう会社は潤いそうだ。「湾岸地区のお台場に本社があるフジテレビの上層部が、ある会議で”ウチは今視聴率的には苦しいが、これですべて解決する”と胸を張っていたといいます。視聴率の皮算用はともかく、フジは関連会社などで不動産業も大規模に展開し、ダイバーシティーなど同地区の開発を牽引してきましたから、さもありなんです」(民法関係者)

同地区だけでなく、近郊でも建設ラッシュとなる。建築業界からはこんな声が。「実は現状でも人手不足なんですよ。特に鉄筋工不足で、10人分の仕事を1人でこなさなきゃならない状況。これ以上仕事が増えたら、みんな過労死するんじゃないかと…まあ、嬉しい悲鳴ですけれどね」(下請け会社社長)さらに、ある現場関係者は、こう胸をなでおろす。「今の景気も、続いて来年か再来年までと噂していたんです。東京五輪が決定してくれたおかげで、”寿命”が延びました」

家電業界も鼻息が荒い。49年前の東京五輪がテレビの普及率を強引に後押しした”栄光”の再来を期す。「現在のフルハイビジョンの16倍の解像度を持つ8Kテレビ。この本格放送が東京五輪の年に始まる予定です。これで一気に買換え需要が伸びるはずです」(家電メーカー関係者)歓喜の声を上げたのは、東京ばかりではない。

中央リニア新幹線のルート予定地になっている山梨県でも歓迎ムードが高まっている。リニアは2027年の開業予定だが、五輪開催の2020年に前倒しして開業という話が飛び出したのだ。甲府商工会議所では「もし全線の開業が間に合わないとしても、東京〜甲府間の試験開通は十分期待できると思います。時速500キロ以上の世界は、山梨でしか味わえませんよ」前出の東京五輪に合わせて東海道新幹線が開通したように、リニア新幹線が2020年東京五輪のシンボルになりそうだ。

東京から遠く離れた北の街でも期待が膨らんでいる。というのも、サッカー一次リーグの予選が札幌ドームで行なわれるためだ。札幌は勝手冬季五輪が開かれた土地。夏季と冬季、いずれも開催する年になるのが札幌の誇りだという。「日本に来る外国人観光客が年間2.000万人といわれる時代。五輪を契機にもっと集客力をつけられるよう、知恵を出していきたいですね」(札幌観光協会)

しかし、いいことばかりではない。まず懸念されるのは、マンションの高騰だ。「建設業界では人手不足に加えて、建材価格の急騰が問題になっています。円高や東日本大震災の復興需要で、ずいぶん値が上がったところへ五輪が重なると大変なことになる。特に首都圏のマンションは、30〜40代の一般世帯には手が届かなくなるでしょう」(大手不動産業者)どうやら手放しの歓迎ムードに浸ってはいられない雲行きだ。

目下絶好調の建設業界でも…

タクシー業界では”逆経済効果”を懸念する。「もちろん、景気回復でタクシーに乗ってくれる人が増えればいいですよ。ところが客が増えず、五輪特需で道路工事が増えて渋滞がひどくなったら逆効果です」(タクシー会社)実際にハンドルを握る運転手もこう吐き捨てる。「東京五輪?迷惑もいいところだよ。だって、猪瀬知事が、五輪に合わせて地下鉄やバスを24時間運航するって言ってたじゃない。それでなくても深夜の長距離がいないのに。外国人?ダメダメ、彼らはみんな公共機関を使って、タクシーなんか使わないよ」

本来なら”儲かる”側のホテル業界関係者も不安を覗かせる。「先のロンドン五輪では、開会式からしばらくの間、ロンドンの滞在客が3割ほど減ったんです。ホテル代も高騰したし、一般観光客が五輪の混雑を嫌い、他の国へ逃げたためです」実は、絶好調の建設現場にも、こんな声がある。「今が良くても、いつどうなるかわからない。だから若い連中には、その時のために副業を持っておけって」(とび職の男性)

前出の経済評論家・杉村氏は、五輪特需の危うさをこう指摘する。「公共工事の財源をどう捻出するか。仮に消費税を5%から10%に引き上げても追いつきません。危機的な財政運営が続き、ガクッと経済が失速しかねません」とはいえ、56年ぶりに日本で開催される夏季五輪。賛否はあるが、アスリートたちには励みになることは間違いない。


『週刊大衆』 9.30


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