加藤のメモ的日記
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2013年07月01日(月) 私が日本株を売った理由

世界でもっとも有名な「投資の神様」ジム・ロジャース直撃インタビュー

「私が日本株をすべて売り払った理由を話そう」

プロなら誰でも知っている

昨年11月、安倍首相が無制限の金融緩和策を行なうと発表した直後、私は日本株を買いました。一般的に、紙幣が多く出回るようになると、株価は必ず上がる。だから、その前のタイミングを見計らって買ったのです。そして、買った株のほぼ全てを、5月6日の週に売り払いました。

こう話すのは米国生まれの世界的投資家、ジム・ロジャース氏(69歳)だ。「稀代のカリスマトレーダー」として有名なジョージ・ソロス氏と共に、1970年代、「クオンタム・ファンド」を設立。10年間で投資額の4.200%もの驚異的な利益を生みだした。現在は、英語圏と中華圏の接点であるシンガポールを拠点に、投資活動を続ける。そんな氏が、先日保有していた日本株を売却したという。なぜ、今このタイミングだったのか。「投資の神様」ジム・ロジャースに、売却の真意と、今後の相場の見通しについて、独占取材した。

「そもそも、私が日本株を買ったのは、アベノミクスを評価してのことではありません。日本国民は株価が上がったことでアベノミクスを歓迎しているようですが、巨額の財政出動は根本的な問題解決ではなく、先送りにすぎない。長期的に見れば、円安は止められなくなり、通貨の価値は下がり続けるでしょう。日本経済の見通しは、決して明るくないのです。

それなのになぜ、私は日本株を買ったのか。私を含め今、日本株を買っているのはプロの投資家たちです。経験豊富な彼らは、その国がどこであれ、政府が紙幣を刷ると発表すればすぐその国の株に食いつく。金融緩和がなされれば、株価が上がることを経験上知っているからです。そして、売り時にもセオリーがある。つまり、株価が一定の割合で直線的に上昇している時です。事実、私もずっと売り時を見計らっていた。そして、まさにそのタイミングが訪れたのが、5月6日の週でした。株価は毎日、2〜3%の上昇を見せていた。一般の投資家の方には意外かもしれませんが、このように一定かつ急激に上がり続けている時こそ、プロは売り時とみるのです。

しかし今現在、日本の株式市場は、5月23日に株価が暴落して以来乱高下が続き、不安定な相場となっています。私は、あの時に売った自分の判断は正しかったと確信しています。先ほども言ったように、私はアベノミクスが成功するとは思っていません。安倍政権発足以来の株価の急騰は、アベノミクスによるバブルといわれていますが、私は安倍首相の経済政策全般について、まったく評価していない。バブルでもないと思っています。

解決法はある

確かに、株価は急上昇している。潤っている人は多いし、みんな幸せを感じている。でも、これはくまで短期的な影響なのです。日銀はインフレターゲットを2%としていますが、政府がインフレ率をコントロールすることはまず不可能。歴史的に考えても、インフレを起こしながら通過の切り下げに成功した国を私は見たことがない。いずれ実際の物価上昇率は、政府の当初の想定よりもはるかに高くなるでしょう。そして円安が進み、通貨の価値は下がっていく。

すると何が起こるか。今はアベノミクスによって、円は25%も価値が下がり、輸出関連産業は息を吹き返しました。しかし、日本は食料、石油、銅、綿など、多くのものを輸入に頼っている国です。円安が止まらなくなれば、それらの輸入価格がどんどん上がっていく。インフレが起こり、物価が上がって日本の国民の生活はどんどん苦しくなることは必至です。これまでの歴史を振り返ってみても、無制限に印刷された紙幣が、どれだけ最悪のインフレを起こしてきたか。想像するのも恐ろしい。安倍首相にはそれが見えないのか。あるいは見ないふりをしているのか…。

借金とインフレに基づいた経済システムは、いずれ崩壊するでしょう。今の日本は、応急処置ではどうにもならない、本質的で深刻な問題を抱えています。それは、人口の減少と、増え続ける借金です。日本では高齢化と少子化が進み、労働力が不足しています。これを解決するには、移民を受け入れるか、女性をもっと効率よく労働力として使うか、もしくは労働のシステムを変えなければならない。例えば、欧米のように定年をなくすなどです。欧米では仕事ができるかどうかが問題なのであって、年齢は問題ではない。

少子化問題の解決法は、とにかく子供を作ること。少子化対策や移民の受け入れを進めなければ、本当の意味で日本の発展はありえません。日本は、国債も大量に発行し続けている。借金は天文学的数字に膨らみ、世界有数の借金大国となった。今後も借金が減る見込みはなく、10年後、20年後には日本の財政状態はもっと悪化しているはずです。財政支出を大きく削減していかない限り、日本経済は衰退していくだろうし、デフォルト(債務不履行)だってないとはいえません。

今、世界的に経済が悪化していく中で、各国が自国の通貨の価値を下げることに狂奔しています。事実、安倍首相と日銀の黒田総裁が無制限の金融緩和を発表したすぐ後、アメリカもイギリスも、「我々ももっと紙幣を刷らなくては」と追随した。すでに、通貨安競争は起きているのです。このような状況下で、日本人が資産を守るためにどうすることがベストか。それは、「実物資産」に投資することです。実物資産とは、原油や金、銀などの貴金属、小麦や米などの穀物、銅やアルミなどの非鉄金属など、先物市場で取り引きされる商品のことです。

各国が競って紙幣を刷り続ければ、全ての貨幣価値は実物に対して下がっていく。だから、紙幣よりも実物資産に投資すべきなのです。一方、為替で儲けるのは非常に難しい。しかも今は、通貨安競争が起きているので、どの通貨も非常に危うい。うっかり手を出すと、大損する危険があります。私自身、実験的に少しだけ円を売り買いしながら、様子を見ているのですから。

日本では金が上がり、米や不動産価格も上がった。賢明な人は、紙幣ではなく米や不動産を持つようにすべきでしょう。では、株式投資はどうしたらよいか。私は日本の農業部門の銘柄は売らずに手元に残してあります。これから円安が加速していけば、リアルな商品を生みだす分野が強くなるからです。とはいえ、総合的に見て日本株の相場は不安定です。今度の参議院選後に暴落する可能性も十分あり得る。これから新しく買おうと思っている人は、危険が伴うことを忘れてはいけません。



『週刊現代』6.15


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