加藤のメモ的日記
DiaryINDEX|past|will
7月の参院選は、すでに自民党が圧勝の気配。で、早くも注目されるのはその後の成り行きだ。憲法改正はどうなるのか。維新の会の共同代表を務める橋下徹・大阪市長はいかに身を処すか。公明党は連立に残留するや否や。
自民46%、日本維新の会10%、民主党6%―。勝負の結果は下駄を履くまでわからない。とはいうものの、朝日新聞が4月13,14日の両日に実施した世論調査「参院選での比例区投票先」の結果を見れば、自民党の底堅さは一目瞭然だ。政治ジャーナリストの山村氏によれば、「7月の参院選で改選となるのは121議席。自民党は60台にはのると見られます。公明党も10は維持できるはず。これに両党の非改選議席を加えると128超。つまり与党が過半数に達する結果になるのです」
投開票日を前にして内閣を揺るがすほどの醜聞の類が噴出、といったことさえなければ、自民党の大勝はほぼ確実と見える。それこそは、安倍総理の悲願たる「衆参のネジレ解消」に他ならない。その何よりの果実は法案の成立がスムーズになることだが、総理はネジレ解消の先に別なる野望の実現を企画しているのだという。自民党の関係者が言うには、「世論調査の数字にますます意を強くした総理は、先の総選挙では強調しなかった”あの公約”を、争点に掲げることを決意しました。それは憲法改正の手続きを定めた96条の改正です」
周知の通り、日本国憲法は制定から60年以上、一度も改正されたことはないが、日本大学法学部の百地教授の解説によると「憲法改正には、衆参両院でそれぞれ3分の2以上の賛成が必要です。そのことを規定したのが96条。96条に則り、もし両院で3分の2以上の賛成により憲法改正の発議案が可決された場合、60〜180日以内に国民投票が実施され、賛成が有効投票数の過半数となれば、改正された条文がいよいよ交付、施行されることになります」安倍総理は、この96条そのものを改正し「衆参両院でそれぞれ2分の1以上」と、発議の要件を下げることを目論んでいるのだ。衆院では与党が圧倒的多数を占める。が、大勝してもなお、参院では与党のみで現状の96条をクリアする「3分の2」を確保するのは困難である。しかし、「参院でも、賛成が3分の2に届くでしょう」とは政治部記者の見立てだ。
「なぜなら維新の会も、みんなの党も96条には賛成の立場だからです。参院選の獲得議席は維新20、みんな10と予想されている。非改選を含めると両党で41議席。これに自公を合わせると、3分の2を超す計算になるのです」96条が改められ、憲法改正の発議に必要な両院の議員数が「2分の1以上」となれば、不磨の大典に「手を入れる」までの高かったハードルが一気に下がることになる。ただ、これはあくまで第1段階にすぎない。「総理の真の狙いは96条改正ではない。9条の改正こそが目的です。9条が変われば、集団的自衛権の行使に道が開けます」と先の記者。
「ですが、たとえ内閣支持率が高くても、9条の問題に今すぐ着手する必要があると考えている国民は多くない。総理は当面、国会の解散は念頭になく、となると衆参ともに3年先まで選挙はありません。だから今後時間をかけて国民の理解を得ようと考えているはずです」さらに先の山村氏はこんな分析も披露する。「自民党総裁の任期は、1期3年で2期までと規定されている。当然、安倍さんも2期を全うしたい考えです。そこで1期目で96条改正のメドをを付け、2期目で9条改正というスケジュールを描いているでしょう。ただ、96条はともかく、9条の改正には相当強く反対する勢力がある。今のような高い支持率を長く保てるかどうかがキモですね」その道のりは決して平坦ではなさそうだが、さて、9条改正で一体、何が変わるというのか。
党分裂の火種
昨年4月、自民党が作成した憲法改正草案にそのヒントはある。「9条の2」項を新設し、国防軍を設けると明記されているのだ。その要諦を、中西京都大学名誉教授が説いてくれる。「尖閣の”領土問題”がなくなることが考えられるでしょう。領海侵犯を繰り返す中国の海洋監視船に対し今、日本ができることは限定的です。海上保安庁の巡視船が併走し、無線で”日本の領海がら出て行け”と警告するぐらいのもの。9条の改正により、ミサイルなどを装備した海上国防軍の艦船が中国に警告したり、接舷(せつげん)して領海の外に押し出したりすることが可能になる。であれば、中国船もむやみに領海侵犯してこなくなると予想されます」
自民党と同様、96条改正を公約に掲げている維新の会。だが、共同代表を務める橋下徹・大阪市長の足元は、「志」を同じくする安倍総理ほどには盤石ではない。時事通信の世論調査では、政党支持率も最高の4.6%から1.5%に急落。すでに報じられているように首長選、市議選で4連敗を喫するなど、一時の勢いはもはや見る影もない。「だからこそ橋本さんが、参院3出馬に踏み切る、というより追い込まれる可能性が払拭できないのです。無論、参院選に出馬すれば、大阪市民から”裏切り者”と罵られるのは火を見るより明らかですが…」と語るのは現地の政界関係者である。
「7月の参院選を橋本さんが見送ったとすると、次は3年先まで国政選挙がない。その間、大阪市長のままであるなら維新での求心力は低下するばかりです。国会議員団に主導権を握られ、口出しを封じられることになりますからね」だが、橋下氏が国政に転じても茨の道が待つばかり。まず問題は、橋下氏が頼みにする石原慎太郎氏の評価が党内で著しく低下していることだという。維新関係者によれば、「石原さんは、安倍総理との党首討論で公明党を”自民党の足手まとい”と批判しました。これに旧維新の会の議員が憤激しています。大阪市議会で公明党は19人の議員を抱える第2政党で事実上の与党。彼らがつむじを曲げて野党に転じると、市政運営上、市議たちも困る。それに昨年末の総選挙では多くの国会議員が、創価学会の世話になって当選しているのですから」
さらに旧太陽系の議員らが一様に石原氏を信奉しているわけではないことも、橋下氏にとっては頭痛の種。「旧太陽内で”石原さんには神通力がなくなった”と揶揄する声は少なくない。先の総選挙で、維新は石原氏の知名度を頼りに東京の選挙区では2〜3議席、比例ブロックで5議席は堅い、と読んでいた。それがフタを開けてみれば、比例で3人しか当選できなかった。石原さんはもはや張り子の虎だという、醒めた見方さえあるくらいです」(同)
石原氏という後ろ盾がこんなことでは、橋下氏が晴れて議員バッジをつけたとしても、維新の会を切り盛りしていくのは容易ではない。「橋下さんが旧維新の会のメンバーと旧太陽の党、とくに平沼さんたちの間の溝は深い。そもそも、いま最も重要な経済政策からして理念が違っている」と、先の政治部記者。「旧維新の会は構造改革を主張し、新自由主義的な経済政策を唱えていました。他方、旧太陽の党は、例えば平沼さんがかって郵政民営化に反対したように、”規制緩和は何でもよし”とはしない、概して保守的なスタンスです。選挙のために目を瞑っていた、こうした路線対立がいよいよ顕在化する恐れがあります」
言い訳の歴史
自民党の連立パートナー、公明党。彼らとて、維新の“足並み不一致”を高みの見物、というわけにはいかないようだ。平和と人道、連帯を標榜する同党にとって、9条改正を見据えた96条の改正は到底、呑めるはずもない。つまり、自民党にとっては目の上のタンコブになりかねず、自民党を補完する別の勢力が現れれば、参院選の選挙結果次第では連立から追い出されかねない状況なのである。そのことは、山口那津男代表が口にした、苦し紛れの次の発言が象徴している。「連立の目的以外のことで、自民党と意見の食い違いがあったとしても、国民の期待に忠実に応えていきたい」自民党とは「大抵のことでは別れない」と言わんばかりなのである。が、実は、96条改正については公明党も、党内が二分している状態だという。
公明党担当記者によれば、「山口さんは改正に慎重なグループの代表格です。が、改憲容認派も、決して少なくありません。とくに漆原さんは先鋭的で、”山口代表は言い過ぎだ。与党に残るために、どうせ改憲を容認する。だからっもっと上手く言わないと軌道修正が難しくなるよ”と怒ってこぼしていたほどです」事実、公明党はそのあけすけな弁の通りに振る舞うことになりそうだという。「公明党は、間違いなく与党に残りますよ」こう断言するのは、福本・元公明党参院議員だ。
「改憲にアレルギーが強い、支持母体の創価学会員から異論が出ようと、“連立を組むことで我々が暴走を防ぐブレーキになるのです”という弁明をするはず。公明党はこれまでも、与党残留のために主義主張をかなぐり捨ててきた“言い訳の歴史”がある。たとえば1992年、カンボジアへの自衛隊のPKO派遣問題が審議された際には、当時の市川書記長がPKO協力法案の作成に加わり、会員から猛烈な抗議が殺到しました。が、”世界平和を守るためには、新しい形の国際貢献が必要だ”などと、もっともらしい理屈を捻りだしています」長期政権を夢見る安倍総理。内部分裂にフタをしたまま政権入りを目指す維新の会。そして与党にしがみつこうとする公明党。すなわち、憲法改正を巡る権力ゲーム。参院選が自民党の圧勝で終わっても、醜き「永田町劇場」は終わりそうにない。
『週刊新潮』5.2
|