加藤のメモ的日記
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各地で相次ぐ「孤立死」や「餓死」…。その多くは、深刻な貧困の状況の中で声を上げることさえできず亡くなった「貧困死」だった。今何が起きているのか。
介護受けられず 東京・立川 母95歳、娘63歳
東京都立川市の都営住宅の一室で7日、母(95歳)と娘(63歳)の遺体が発見された。死後約一ヶ月。母の胃に内容物はなし。介護していた娘が先に亡くなり、母は衰弱死とみられる。「娘さんは介護に困っていたが、声を上げられなかった」。母娘と十数年来の付き合いがある大沢さんは、母は認知症。要介護2の認定を受けていたのに、介護サービスは受けなかった。「うちの収入は年金だけなので、介護サービスは無理。自分で頑張る、と言っていた」と。
母の徘徊を防ぐため部屋のドアは内側から紐で結ばれていた。介護サービスを申請できない二人に行政の対応はなし。住民が都営住宅を管理する東京都住宅供給公社に異変を連絡したのに安否確認はしなかった。
保護申請させず
厳寒の札幌―。1月20日。白石区のマンションで40代の姉妹の遺体が発見された。死後約一ヶ月。姉(42)が脳内血種で病死。知的障害のある妹(40)は助けを呼べず、料金滞納でガスも電気も止められた部屋で凍死した。姉は失業し、2010年6月から3回、区役所に生活保護の相談に行った。収入は妹の障害年金の月6万5000円だけ。5万円の家賃も払えない状況だった。
それでも市は、生活保護申請書さえ渡さず、国民健康保険未加入も放置した。「本人が保護申請の意思を示さなかった」という市。日本共産党の伊東りち子市議は厳しく批判する。「面接受付表からも生活悪化がわかるはず。申請すれば間違いなく保護すべき状況だったと市も認めた。しかし区は3回とも『懸命なる就職活動』が保護の要件と追い返した。救えた命が救えないとは…」
前出の立川市で「孤立死」対策のための訪問活動を続けている日本共産党の吉岡議員は「暮らしと社会保障がズタズタにされた政治の結果、介護や保護が必要な人が放置されている。そんな政治をどうしても変えたい」
「生活保護の申請は誰にでもできる。しかし、役所の窓口では、『受給』するための条件が、あたかも『申請』するための条件のように説明される。根本には福祉を抑制したいという国の意向がある」ビラや街頭演説で「守る会」を知って相談し、生活保護を受けることができたケースが相次いでいる。59歳の男性は生活保護を申請したものの「家賃が基準より高いので引っ越しが必要」といわれ、受けるのをやめたという。その後、電気もガスも止められ、スーパーの試食で食いつないだ。スーパーにあった冊子で「守る会」を知り、最後に残っていたテレホンカードで電話をした結果、守る会の援助で生活保護の受給ができた。
東京都立川市
東京都立川市。先ほどの母娘のように介護認定されていてもサービスを受けない人は市内に約1000人いる。「立川市南部東はごろも地域支援包括センター」のセンター長は「要介護者なのにサービスに手をあげなかった人は、行政側には情報が来ない仕組みになっている」と指摘する。住民の生活状況を把握すべき民生委員も、対象は65歳以上の高齢単身者が中心である。立川市の見守りネットワーク事業は、本人が希望するか、周囲が見守るよう届けないと対象にならない。亡くなった母娘もどちらの対象にもなっていなかった。
今年に入って全国で「餓死」「孤立死」が相次いでいる。その背景に、貧困が拡大深化し続ける一方で、生活保護をはじめとする社会保障が抑制されているという構造的問題がある。2009年の日本の貧困率は16%に達し、年々悪化している。最低賃金はほとんど上がらず、非正規労働者は増え続け、失業者も高止まりしているからである。「餓死」「孤立死」をなくしていくには、まず窓口での申請をしっかり受け止め、生活保護を受けやすくする。何らかの生活困窮のシグナルが出ている場合、行政がキャッチできるようなシステム化を図ることなどが求められる。
今日の貧困は、路上生活者や派遣切りされた単身者だけでなく、家族もある人も呑み込んでいる。公的福祉サービスが切り捨てられ、家族にしか頼られない異常な事態である。家族は支えきれず、家族もろとも死に至るケースがある。日本では、政府も認めるように7人に1人が困窮者だが、生活保護を受けているのは国民の1.5%にすぎない。「貧困死」はどこで起こっても不思議ではない。日本でも生活保護を堂々と受けられるようにし、受給者を増やさなければならない。フランスでは、家賃・ガス・電気料金を滞納しそうなとき、すぐ役所に申し出れば役所が負担する。また、困窮したら生活保護は当たり前で、国民の1割以上が受給している。日本でも堂々と受給できるようにしなければならない。
『週刊朝日』
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