加藤のメモ的日記
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| 2012年02月07日(火) |
モーツァルトの手紙(7) |
大好きなお父さん! 最初のアレグロしかお目にかけないので、びっくりなさるでしょう。でも、ほかに仕様がなかったのです。急いで夜曲セレナーデK388を一つ、といってもただの吹奏楽用に書かなければならなかったので。31日の水曜日にハフナーシンフォニーの二つのメヌエットとアンダンテと終曲を、できれば行進曲もお送りします。できない場合はハフナー音楽のために書かれた行進曲K249を使っていただければなりません。これはお父さんの大好きなニ長調で書きました。
僕のオペラ、誘拐K384は全てのナンナルに敬意を表して、昨日三度目の上演が行なわれました。劇場は恐ろしい熱さにもかかわらず、またしても破裂しそうなくらい一杯でした。次の金曜日にまたやるというのですが、僕はそれに抗議を申し込みました。このオペラをもみくちゃにされたくないからです。世間の人たちはこのオペラに夢中になっている、と言えましょう。こんなに喝采を受けるのはやはり気持ちのいいものです。これの原稿を確かにお受け取りと思います。
最愛のお父さん!どうぞ後生ですから、僕が愛するコンスタンツェと結婚できるように、ご同意ください。これがただの結婚のためだけだ、などとお考えにならないでください。そのためだったら、僕はまだ喜んで待ちもしましょう。でも僕はそれがぼくの名誉、ぼくの恋人の名誉、そしてぼくの健康と心の状態のためにどうしても必要だということが、分かるのです。ぼくの心は落ち着かず、頭は混乱しています。こんな時にどうして気の利いたことを考えたり作ったりすることができましょう?
これはどこから来るのでしょうか?たいていの人は、ぼくたちはもう結婚したものと思っています。母親はそれでプリプリ起こっているし、哀れな娘はぼく同様に死ぬほど悩まされています。こんなことは造作なくなくすことができるのです。ぼくを信じていただきたいのですが、諸式の高いブィーンでも他のどの土地よりも楽に暮らせます。ただ、それは家計とやりくり次第です。
それが若い男、わけても恋におちた人間には金輪際できません。ぼくが眼とるような妻をめとる人間は、幸せになります。ぼくたちはひっそりと静かに暮らします。それでもけっこう楽しみがあります。ご心配なさいますな。ぼくが今日にでも病気になったとしても―そんなことがありませんように!―かけてもいいのですが、特に結婚していれば貴族の中でも最高の方々が、ぼくを大いに護って下さるだろうと思います。これは自信を持って言うことができます。
ぼくは、カウニッツ侯爵が皇帝ヨーゼフ二世とマクシミリーリアーン大公に、ぼくのことを何と言ったかを知っています。最上のお父さん、ご同意を心からお待ちしています。きっと同意して下さるものと、思っています。ぼくの名誉と平安がそれにかかっています。妻をつれた息子を抱擁する喜びを、あまり先まで延ばさないでください。
『モーツァルトの手紙』
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