加藤のメモ的日記
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2012年01月17日(火) 筆刀直評(2)

……いわゆる””偽装難民”と、外国人不法労働者に対して、日本人は冷たい。それにやわらかに反論しつつ、朴は、「それにしても、彼らがいざ日本で職を得たとしても、今の日本が、彼らにとって家族を連れて来たいようないい国であり得るのだろうか」とも書く。強制的に連れてきて強制労働をさせ、つい最近まで、”在日韓国・朝鮮人”を「国民健康保険」に加入させなかった日本。

韓国の文通団体から日本人との文通を望む韓国の若者のリストは1万人分、日本の文通団体に届いているが、日本人が文通を望む相手の95%がアメリカ人だという。まさに、長谷川慶太郎の犯罪的駄本の題名のごとく、「さよならアジア」なのである。朝鮮学校の生徒がしばしば、イジメの対象になることについて、朴はこう嘆く。

「”パチンコ疑惑”が取り沙汰される中で、チマ・チョゴリ姿で民族学校へ通う女子学生に、各地で暴行、嫌がらせが続出しているという報道に接するたびに、悲しくてやりきれない気持ちになってしまう。チマ・チョゴリの少女たちが、一体何をしたというんだろう。「日本を開く」道は、はるかに遠いという気がする。

平成サラリーマン川柳傑作集

○ああ言えばこう言う奴ほど偉くなり
○OAとOL俺の手に負えず
○人生が酔いつぶれている終電車
○残量は御酒も出るのと子に聞かれ
○上役のふったパイではあがられず
○上役は一人でできる趣味をもて
○2メートル先の椅子まで15年


「私は途中から引き返したから、ギブアップという言葉を知ったけれども、サラリーマンは倒れるまで走り続けるんでしょうね。功なり名を遂げた人は、それを乗り越えたか、誰かが身代わりになって死んだ人ですよ」内部告発小説を書いて大丸を追われた作家の渡辺一雄はこう告白する。走り続けた後の過労死なのだろう。とすれば、途中で「降りた」人こそ正常な人間というべきだが、世界に冠たるこの会社国家では、”正常”はむしろ”異常”とされる。

「動機」は「結果」を”浄化”しない。大体、「動機」も自分で言うほどキレイだったのか怪しいのが「大東亜戦争」である。大東亜戦争はアジア解放のための戦争であったと強弁する日本人に対して、アジアの人たちは「それは違う。日本の敗戦によって、解放という結果を見たにすぎない。解放の戦いならば、あれほどアジアの人々を殺戮するはずがない」と鋭く反論するという。

深田佑介の『黎明の世紀』(文芸春秋1300円)は、「大東亜会議とその主役たち」を描いて”動機擁護”の印象が強い本だ打、中に、全アジアの「満州国」化を図る日本に抵抗するアジア各国の独立運動家が出てくる。例えば、フィリピンのラウレルは「率直に云い、日本は比島人の真理をつかみむ失敗せり。比島民衆はこれ3年間、初めて多数の日本人と接触して残忍なる民族との観念を抱くに至れり。その理想は我等の共鳴を得られず、その行なう所は民衆の生活を顧みず、却ってこれを不安ならしめ、軍に対する不平不満の声は全国に蔓延す。ことに憲兵の横暴に対する反感は、政府要路の者に至るまで浸潤し、到底救うべからずに至れり」

と、当時の駐比大仕使、村田庄蔵に迫り、秋の大統領の義父にあたるベニグノ・アキノ国会議長も「日本の占領はスペイン時代を再現したようだ。しかもスペイン時代は、名目だけでも裁判制度があったのに、日本の憲兵は、裁判もなく相手がなんぴとだろうが意に介しない。これは日本の比島政治史上の大失敗である」と語ったという。

日本の「傀儡」と言われた中国南京政府の汪兆銘も、後年こう批判している。「日本政府に対して言いたいことは山ほどある。上役がよろしいと受けても下が聞かん。前任者が言ったことを後任者はそんなことは俺は知らんと問題にしない。左右の連帯も全く欠けている。外務省がいいことを言ってくれたと当てにしていると、陸軍は一つも聞いてくれない。外務省が言ったことなど俺が知るかという態度だと。これが海軍、陸軍、外務省全部に通ずる。これが日本の悪い所」



佐高信






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