加藤のメモ的日記
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2011年10月28日(金) 脳卒中リハビリ

鹿児島県にあるベッド数50床の戸規模な病院に、最後の望みをかけて全国から患者が集まっている。そこには従来の常識を変えた独特のリハビリ法と、笑顔あふれるスタッフの存在があった。

放送翌日、病院の電話は鳴り止まなかった

「4年間マヒで動かなかった指が動いた」9月4日放送のNHKスペシャル「脳がよみがえるぬ卒中・リハビリ革命」が大きな反響を呼んでいる。身体の片側半分がうまく動かない「方マヒ」は回復しないという脳卒中リハビリテーションの定説を覆すリハビリ法が紹介されたのだ。

場所は九州の南端、鹿児島県の霧島温泉郷の一角に建つ鹿児島大学病院霧島リハビリテーションセンター。同病院のセンター長・川平教授が考案した促通反復療法、いわゆる「川平法」と呼ばれる手法がそれだ。とくにここの手指の動きを改善させる訓練法はこれまで皆無だったため、放送翌日は「2回線しかない病院の電話が受診の問い合わせでパンクしました」(川平教授)という。

従来の麻痺肢へのリハビリは患者の自主性に任せて行なわれ、療法師はマヒした部位の筋肉が硬くなるのを防ぐためにそこをほぐすことはあっても、基本的に訓練中はそばで見守るだけである。だが、川平法は療法士が患者のマヒした手指や腕、足に直接触れて、動作に必要な筋肉を適切に刺激することで、意図する動きができるように神経路の興奮を手助けする。

例えばマヒした指のリハビリなら、患者の指の付け根から指先に向けてこすりあげ、曲げるタイミングで第一関節を外側からトンと叩いて刺激を加える。「曲げる。曲げる」と治療者と患者双方が言葉を発しながら、指1本1本に100回同じ動作を繰り返すのだ。「それより、脳卒中のよって途絶えてしまった神経回路を脳に再構築させるんです」(川平教授)

脳卒中を起こした脳の血流が断たれると、脳の神経細胞が生きていられるのは3時間足らず。脳は脳はその後、できる限り機能を再生させようとするが、回復可能な目安は6カ月とされていた。この時点で残ったマヒはよくなることはない。多くのリハビリ機関では現在もそう考えられている。

発症から10年後でも回復する

ところが、この川平法では発症後2年、4年という患者のマヒが改善されいる。番組内では、脳卒中を経験した元NHK解説委員のマヒが残る指が、前述のような方法で10分間繰り返し動かしただけで、4年間できなかった「指で円を作る」様子が紹介された。諦めていた人からすれば、まさしく”奇跡”に見えただろう。川平教授はこう語る。「誰もが1回でそこまでよくなるわけではありません。ですが、わずかでも指が動くなど治療の適応があれば、発症から10年経過しても、また他の病気で起きたマヒでも、指が動くようになる可能性はあります」

脳の神経は一つではなく千を超える神経がつながっている。たとえ指を動かす神経回路が途絶えても、指を刺激し動かすことで新たに迂回ルートが作られていく。あとはそれをくり返すことで強化するのである。この病院ではリハビリは苦しいものではない。患者は無理に身体を動かす必要はなく、「動かそう」という気持ちで楽に動かせばいい。そのため患者も前向きな気持ちを持ち続けられるのだ。

現在は外来で週1回、病院に通う鈴木さんはリハビリが楽しみだという。「朝9時から17時過ぎまで訓練室で自主トレをして過ごします。ここにいると安心なんですよ。似たような状況の人が訓練しているから。そういうふうに動かせばいいんだとわかります。



『週刊現代』


加藤  |MAIL