加藤のメモ的日記
DiaryINDEX|past|will
俺のことを職人の代表みたいに言う人がいるけど、実はそうじゃねえんだよ。典型的な職人ってのは、ものを言わない、人づきあいもしないでただただ自分の腕を磨いて、いいモノをつくることで満足しているもんなんだ。昔はそんな職人ばっかりだったし、今だって少なくないよ。でも俺はそうじゃない。自分から人の中に入っていくし、しゃべりだって自身がある。うちの社員なんか、「しゃべりすぎじゃないか」って心配するほどだよ。
俺はいつも言ってやるんだ。「お前らがしゃべらなくて俺までしゃべらなかったらどうすんだよ。仕事なんか来やしねえぞ。このヤロウ!」仕事を成功せさせたいんだったら、しゃべらなきゃダメだよ。技術の説明一つするんだって下手なしゃべりじゃまどろっこしくて聞いてられない。相手に合わせてポイントをかいつまんで、ちゃちゃっと説明するから「こいつは使える!」ってことになるんだよ。
人付き合いをうまくこなせないようじゃ、信用だってしてもらえないし、かわいがってももらえないね、「あいつを呼んでも、タダいるだけでろくに話もしないし、もう呼ぶ意味がないな」ってことになったら情報交換だってできなくなる。方々から声がかかることが大切なんだ。
俺はいろんな会社から、「こんな製品をつくったから、こんな設備を入れたから見にきなよ」なんて声をかけてもらえる。行って見てると勉強になるんだ。すぐ役に立つってもんじゃないけど何年か後に仕事をしていて「おっ、あの時見た技術がここで使えるんじゃないか」ってことがよくあるんだよ。自分の仕事場にデンと構えてるだけじゃ。発想もアイデアも頭打ちになっちまううだろ?
新しい技術を開発するにも、時代に即応して儲けるにも、なんてたって情報だよ。それもメーカーが持っている最新の情報を知らなきゃいけない。メーカーの人たちは、いつも5年先、10年先を見ている、時代の流れが早いってことを肌で感じているからね。その未来を見越して、製品の企画やなんかをいろいろと考えるわけだ。
だけど、実際に製品化するとなると、新しい技術が必要になってくるんだよ。そこで、「岡野さんのところで、こんな技術を開発できないか」「この部分が作れると、製品化に大きく前進するんだけど、何とかならない?」なんて話が出て来るんだ。こんなおいしい情報はないね。こっちがそれなりのものを開発すれば、絶対に需要があるってことがわかっているんだからさ。
はっきり言えば、「どうぞ、儲けてください」って情報だよ。人と話すのはめんどくさい、人づきあいは煩わしいなんて言ってたら、いい情報は入って来ないし、成功なんてどっかに行っちまうよ。成功するには、しゃべって、人と付き合って、先端情報を取りこぼさない、「世渡り力」を鍛えるしかないんだ。
人間一寸先はヤミ、いつ左前になるかわからねえし、そうなったら別荘や愛人はステイタスから一点、手足足枷になっちまう。別荘なんか維持できないし、カネ回りが悪くなりゃ愛人ともめるのは必至。金の苦労に気苦労が重なって身動きできなくなるんだよ。
いくらお金を持っていても、身の回りにはできるだけ余計なものをくっつけないで、シンプルにしとくのが、生きたいように生きるコツだってことを教えてくれたんだって気がするね。助言を守ったおかげで、今のおれがあるんだって思うよ。
世渡り力ってのは、こすっからく生きて行く、安っぽい手練手管なんかじゃないぞ。人間の機微を知り、義理人情をわきまえ、人様にかわいがられて、引き上げられてもらいながら、自分を最大限に活かしていく“総合力”なんだよ。
『人生は勉強より世渡り力だ』
|