加藤のメモ的日記
DiaryINDEXpastwill


2009年06月14日(日) 世界はユダヤ化に向かう

金融に限らず、現代の世界はユダヤ化の方向に向かっている―と書くと、日本では「ユダヤの陰謀」という話になるわけだが、私が言いたいのはそういうことではない。これだけ複雑化した世界において、一部の人たちが世の中の流れを変えられるわけがない。いかにユダヤ人たちが賢く、豊かであってもそう簡単にに世界は動かないのである。それではどうして世界はユダヤ化に向かっているのか。その答えは第二次大戦にある。

この前の戦争で欧米人、ことにヨーロッパ人たちはほとほと戦争が嫌になった。勝った側も負けた側もヨーロッパは国土が荒廃し、そこから復興するには大変な努力を要したわけである。そこで二度と戦争が起こらないようにするにはどうしたらいいかと考えたとき「すべての元凶は国境にある」ということに彼らは気がついた。そもそも国境などというものがあるから、偏狭なナショナリズムがつくられるのだし、経済摩擦が生まれ、敵意が醸成されるのだ。そこで何とか国境を低くし、自由に物や人と金が動くようにしようという動きが生まれてきたわけである。

といっても、当時は東西対立があったから国境を低くすることはなかなか進まなかった。逆に東西の間では国境を高くせざるを得なかった。だがソ連がなくなり、冷戦が終ってしまえばもはや国境に極端にこだわる必要もない。そこで、ここ十年の間に世界経済は一気にボーダレス、グローバルになった。そして欧州大陸ではついに通貨統合までが行われるようになったわけである。

さてこうしてどんどん国境が低くなっていった結果、「ユダヤのルール」がものを言うようになってきたのである。ユダヤのルールはその迫害の歴史に由来する。ユダヤ人は二千数百年も自分たちの国家を持たず、ヨーロッパをはじめとして世界各国に分散して生活せざるを得なかった。どの国でもよそ者として扱われ迫害を受け、財産ばかりか命までを奪われることも珍しくなかったのである。ユダヤの迫害の種となったのは、中世においてはキリスト教であり、近代ではナショナリズムだった。ことに近代国家の時代になると、ユダヤ人はますます住みづらい状況になった。その極点がヒトラーであることはいうまでもない。

こうした環境に置かれたユダヤ人たちは、勢い国家に頼らない生き方をせざるを得なかった。ヒトラーの迫害に見るとおり、ユダヤ人たちは一般市民ばかりかその国の政府からも迫害を受けた。またユダヤ人にはキリスト教徒に禁じられていた金貸し業をやる人が多く中には王侯貴族に金を貸しているユダヤ人もいた。ところが王や領主は、いつその金を踏み倒すか知れたものではない。踏み倒されるならまだいいほうで場合によっては住む家を追い出されたり、殺されることもあった。

こうした長い苦労を経たためにユダヤ人たちは「一つの国にとどまるのはむしろ危険で、いろんなところに分散していたほうがかえって安全だ」と考えるようになった。その典型がロスチャイルド家である。ロスチャイルド家の創始者はそもそもドイツのヘッセンで成功した人だったが、彼は長男をドイツに留めただけで、残りも息子たちをロンドンやパリ、ウィーン、ナポリなどに送りリスクの分散を図った。そしてヨーロッパ中にネットワークを築くことで、ロスチャイルド家をさらに発展させたのである。

ロスチャイルドのやり方は、まさにグローバル化を200年前に行っていたわけだが、当時からこの戦略は大成功を収めた。ナポレオンのフランス軍とウェリントン将軍のイギリス軍が衝突したワーテルローの戦い(1815)において、ロスチャイルドは金を出して両軍の将校や兵士から情報を集め誰よりも早くその戦争の結果をつかみ、常勝将軍ナポレオンの敗北を知った。そのニュースはイギリス政府が結果知るよりも早く、ベルギーからイギリスのいるロスチャイルドにもたらされた。

ロスチャイルドはイギリスの勝利を知るや否や、まずイギリスの国債を売った。それにつられてイギリス人たちも不安売りしたため暴落した。その底値でロンドンのロスチャイルドはイギリス国債を買いまくった。そして勝利の広報が届き、相場が急騰すると今度はその国債を売り抜けて巨額の儲けを得たのである。


『日本の生き筋』 渡辺昇一


加藤  |MAIL