つれづれ日記
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| 2002年07月02日(火) |
ノワールの姿に涙する |
午後8時頃、みちよさんとノワールの餌場で落ち合う。が、ノワールはいない。蒸し暑い今夜はゴキブリや蟻が跳梁跋扈していそうなので置き餌はせず、出直すことにする。
久々に「山手猫階段」用に缶詰を10個開け、プルトップの缶詰も3個用意する。9時半に出発してまずノワールの餌場へ。すると6号棟の階段の端っこにノワールが座っている。みちよさんもやって来た。餌場まで行かず(後から思うと既にその時、以前のように餌場までトットコ駆けてゆく力がなかったのかも)その場でノワールの顔の前に容器を置いてみる。興味を示さない。一般食の缶詰を少々みちよさんの手のひらに置く。ノワールはみちよさんの手から少しだけそのフードを食べた。
そんなことはこの4年間で初めてだ。容器に顔を入れるが食べられないようだ。ノワールの右目から涙がつーっと流れ出て容器の中に落ちる(私の母が臨終の時、意識不明だったにも拘わらず涙をポロリとこぼした34年前のことがふいに思い出された)。やはり食べられずにじーっとしている。みちよさんがティッシュで涙を拭こうとする。嫌がらないというので、私もそっと頬を撫でてみる。全然嫌がらない。ティッシュではなく指先で目やにを拭き取る。ネバネバしている。喉も撫でてみるが喉の辺りがへこんでいる。頭も身体も撫でてみる。背骨が浮き出てものすごく痩せている。つい10日くらい前まではしっかり食べていたのに。あのころでも急激に痩せてきてはいた。S内さんも「すごく痩せている」と言っていた。
2日前は頭を触ると飛び退いていたのに・・あまりの不憫さに涙もろいみちよさんはもう涙ポロポロだ。それを見て私も涙が止まらない。こびりついた目やにを取っても嫌がらない。みちよさんにノワールを見ててもらって、バスタオル、ウェットティッシュなどを取りに戻る。
バスタオルにノワールをくるんで抱き上げてみようと、まずノワールにバスタオルをかける。じっとしている。持ち上げようとすると数歩逃げた。後ろ足がもつれてヨタヨタしている。腰が抜けたようになっている。小学校脇の通路の真ん中に座り込んだ。そこで撫でながら、みちよさんと二人、どうしよう、どうしようと途方にくれる。無理やり捕まえることは可能にも思える。が、そんなことをすれば我々の信頼関係はきっとお終いだ。(後から考えると、この時がきっとノワール保護の最初で最後のチャンスだったに違いない)
さっきと違って撫でていても身体を硬くしている。タオルをかぶせて持ち上げようとしたからだ。このまま通路の真ん中でじーっとしていられても、どうしたらいいか分からない、困ったと我々が思い始めたことを察したかのようにノワールはヨロヨロと立ち上がり、歩き始めた。どこへ行くのかと思わず二人で後を追う。細い細い後ろ脚はもつれ歩みはゆっくりだ。時々我々を案内するかのように振り返る。真上から見ると本当に痩せたことがよく分かる。6号棟の階段を降り、テニスコートの方へ。
下り坂になっているからか、急にノワールの歩みが速くなる。一瞬でも元気を取り戻したのかと希望的観測を持つ。テニスコート向かい側の駐車場に入り、一旦、奥の方へ行きかけたが、我々が従いて来ていることに気付いたかのように戻って来て草むらに座り込む。おしっこでもしているのかと思ったが、しばらくすると立ち上がり、いたち川の方へ桜井橋を渡り、橋沿いのゴミ置き場に座り込む。
また立ち上がってカラス除けネットの中の生ゴミ(まだ前夜だというのにここではもうゴミを置いている人が何人もいる)に鼻をヒクヒクさせて尻尾を振っている。そんな可愛い姿も初めて見た。そしてその向かい側のアパート前に停まっているワゴン車の下にもぐりこみ香箱を作った。もう我々の方を向かずじーっとして目を閉じている。今夜は十分だからもう行け、とでもいうような姿だった。
後ろ髪を引かれつつも一晩中そこにいるわけにも行かない。追跡はもう止めて戻る。明日、また出て来てくれることを期待する。が、ゴミ置き場で鼻をヒクヒクさせていたということは、どうなんだろう。カニカマのようなものがいいのだろうか?口内炎を患っているようだし、そんなものを用意しても食べられないだろう。こうやって段々弱っていくのかと思うとみちよさんも私も涙が止まらなくなった。
ひどい皮膚病のノワールを撫でた手をよく洗わないと、そのまま「山手猫階段」へ行くわけには行かない。一旦家に戻ると、もう午後11時近い。すっかり意気消沈してしまったので今夜は「プリンス猫階段」も「山手猫階段」もパスすることにした。用意した缶詰類は冷蔵庫へ。
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