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2005年11月01日(火)
『対話の回路』(その二)

『対話の回路』(その二)(新曜社)
他の対談についての感想もメモ的に書いておきたい。

網野善彦との対談は、この対談が終わった直後に網野氏が危篤状態に陥るという意味で氏の最後の仕事になり、貴重なものになっている。しかし網野氏の言葉からはまだまだ仕事への意欲が消えていないのである。「しかしあの本で主張したかったのは、現実には『無縁』の世界に年齢階悌の秩序があったり「公界」も都市共同体になっているのですが、むしろ国家や天皇をこえる人間の結びつき方がそこに見えているのではないかということです。」「…そういう東の秩序(天皇の権威は薄いが領主制的秩序)と西の秩序(民衆自治と天皇の連合)の両方をまるごとひっくり返さないと天皇の問題は克服できないというのが私の目指すところといってよいでしょう。…だんだんそれが見えてきているような感じはしています。」うーむ、『無縁・公界・楽』と『日本論の視座』等一連の作品を読んでみたくなったぞ。

小熊英二の仕事のし方もある程度分かってきた。
彼の力は『読書力』なのである。村上龍との対談を準備するためにまずは20冊読んでみたらしい。その上で対談する木が出て初めて臨んでいる。そうすると最初は村上から対談依頼があったにもかかわらず、内容はすっかり村上龍の小切の分析という形になってしまった。村上も相当突っ込んだ質問にきちんと応えている。それはすなわち小熊の読みこみが深いからに他ならない。

小熊は村上から『小説家になりたいと思ったことはなかったのですか』と聞かれる。『(世界を揺るがすような言葉を)私は創れないから歴史的な資料から力のある言葉を探して書くしかないんだと思います。」 その気持ちよく分かる。けれども才能がいることも分かる。
(05.09.25)