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2005年05月24日(火)
98映画ノートから「ピース・メーカー」

98.1.17. メルパ
「ピース・メーカー」
 ミミ・レダー監督 マイケルグリロ/ブランコ・ラスティング製作総指揮
ジョージー・クルーニー/二コール・キッドマン/マーセルユーレス 
ドリーム・ワークス第一回作品(SKG=スピルバーグ・カッツェンバーグ・ゲフィン) START(核削減条約)によって廃棄処分にされるロシアの核兵器が、テロ組織によって盗まれる。時間稼ぎのために、10発のうち一発の核兵器を爆発させるという冒頭。スピルバーグにしてこれである。私は最初から暗たんたる気分になった。この映画の評価はあとで述べるが、それにしてもアメリカ映画における核兵器の扱いを観ると私は憂鬱な気分になる。そもそもなぜ「時間稼ぎ」というほかにも置換えが可能ないい加減な理由によって、わざわざロシアの地で核爆発を描かないといけなかったのか。話の都合上、核の恐怖を影像で見せるにはそれしか手がなかったというのか。それならそれで爆心地にジョージー・クルーニーを下ろすような場面を描いてもよかった。生き残った人間がいかに悲惨な目にあっているか、もっとリアルに描いてみろといいたい。草原での爆発ということもあって、爆発直後、1500人の犠牲があった、と二コール・キッドマンが事務的に報告しただけで映画の中の関心は、ウィーン、ボスニア、ニューヨークへ向かっていく。
 アメリカ人は、核兵器といったときにその圧倒的な破壊力には恐怖を覚えるが、放射能については、頭では知っていても、全然怖がっていないことをいくつかの映画を見ると容易に知ることができる。一番私が頭にきた映画は『トゥルーライズ』(94年)。水爆を盗んだテロ組織を、政府のスパイが悪役としてやっつけるという単純な活劇であるが、なんと、ラストでついに水爆は爆発し、悪役は吹っ飛んだ、ヒーロー、ヒロインは助かった、ということでキノコ雲を背景にキスシーンで締める。「ちばんけんな!」という気がしましたが、なんとこれが大ヒットしていしまうわけです。監督のジェームスキャメロンは決して反動的な人ではない。その証拠に今公開中の彼の作品『タイタニック』はいい映画です。(ラストで不覚にも涙してしまいました…)『トゥルー…』を作った人たちは「そもそもこれは反核映画じゃないし、放射能のことなど考えなくてもいいじゃん」ぐらいの気持ちだったのかも知れない。しかし核放射能を恐ろしさを知っている私たちは、水爆が地上で爆発したあとはいかに悲惨な出来事が起こるかしっていて、とてもこの映画がハッピイエンドで終わったと思えないわけです。次に「バカな…」と思ったのは、『ブロークン・アロー』(96年)。ジョン・トラボルタが見事な悪役を演じた映画。彼が演じる米軍パイロットが演習用の核兵器を盗む物語だが、途中天然地下壕でその一発が爆発してしまう。この年は、フランスの核実験に対する反対運動が非常に盛り上がった年で、放射能の危険に対する言及も何度か映画内でされている。しかし、地下壕からヒーロー・ヒロインが脱出するのは、地下の川からなのである。しかもここは、国立自然公園の中なのである。いくら地下だといっても、相当の放射能汚染が広がるはずなのである。しかし脱出したヒーロー(クリスチャン・スレイター)は「放射能の危険はない」という。そして映画の関心は爆発から完全にはずれていきます。
「ピース・メーカー」作品自体はハリウッドらしく、派手に盛り上げて、最新情報をちりばめて、ハッピィエンドで終わる。可もなく不可もなし。

《現在の感想》
このときがドリームワークスの旗揚げだったのか。彼のもくろみは見事に成功する。ハリウッドだけが、映画の殿堂ではない。インディペンデンス映画だけが、ハリウッドに対抗するのではない、ということをちゃんと示した。

アメリカ国民の核兵器に対する態度は、その後日本人の常識になっていく。もうあきれて、「何をかいわんや」になっていく。しかし、本当はそれではだめなのだ。日本人はもっと声高に核の恐怖を言うべきだ。アメリカの映画を例にとって観ると、アメリカの核意識が非常に良く分かる。